マレーシアの治安は、数字でどう動いているのでしょうか。マレーシア統計局が公表している犯罪件数は、2016年の112,355件から2023年は52,444件へ、-53.3%でした。人口が増えているため、人口10万人あたりで見ると353.4件から149.3件へ-57.8%です。外出制限の影響を除くため2016年から2019年だけを見ても-25.7%で、コロナ前から減少が続いていました。
この調査のまとめ2016〜2023年
- 犯罪件数は2016年から2023年でほぼ半分になりました。2016年112,355件 → 2023年52,444件(-53.3%)。人口10万人あたりでは353.4件 → 149.3件(-57.8%)です。
- 外出制限だけが理由ではありません。コロナ前の2016年→2019年だけを取り出しても-25.7%で、すでに減少が続いていました。
- ただし直近は下げ止まっています。2022年50,813件 → 2023年52,444件で+3.2%と、わずかに増えました。
犯罪件数は2016年から2023年で-53.3%
このデータが数えているのは、「暴力犯罪」と「財産犯罪」の2分類・12の犯罪類型だけです。暴力犯罪は殺人・強姦・強盗(4類型)・傷害、財産犯罪は侵入盗・車両盗(3類型)・その他の窃盗です。商業犯罪・詐欺・サイバー犯罪・薬物犯罪などは含まれていません。犯罪全体の件数ではない点にご注意ください。
合計の件数は2016年の112,355件から2023年は52,444件になりました。この間にマレーシアの人口は約31.8百万人から約35.1百万人へ増えているので、人口10万人あたりで見ると減り方はさらに大きく、353.4件から149.3件(-57.8%)です。
← 横にスクロールできます →
| 年 | 合計 | うち暴力犯罪 | うち財産犯罪 | 10万人あたり |
|---|---|---|---|---|
| 2016年 | 112,355件 | 22,327件 | 90,028件 | 353.4 |
| 2017年 | 99,170件 | 21,366件 | 77,804件 | 306.5 |
| 2018年 | 88,662件 | 16,902件 | 71,760件 | 269.4 |
| 2019年 | 83,456件 | 16,489件 | 66,967件 | 249.6 |
| 2020年 | 65,623件 | 13,279件 | 52,344件 | 193.6 |
| 2021年 | 52,974件 | 11,495件 | 41,479件 | 154.5 |
| 2022年 | 50,813件 | 10,348件 | 40,465件 | 146.5 |
| 2023年 | 52,444件 | 10,453件 | 41,991件 | 149.3 |
出典:マレーシア王立警察(PDRM)・マレーシア統計局(DOSM)『OpenDOSM データカタログ』(2016〜2023年(本データセットの収録最新年は2023年。2026年9月19日確認))。人口10万人あたりは、世界銀行の全国人口を用いて当社が計算しました。
出典:マレーシア王立警察(PDRM)・マレーシア統計局(DOSM)『OpenDOSM データカタログ』(2016〜2023年(本データセットの収録最新年は2023年。2026年9月19日確認))/作図:ルシュエット
外出制限で減っただけ、ではありません
2020年から2021年にかけては、感染症対策の外出制限がありました。この時期に犯罪が減るのは自然なので、「制限が理由で減っただけではないか」という見方があり得ます。
そこで制限が始まる前だけを取り出すと、2016年の112,355件から2019年は83,456件で-25.7%でした。つまりコロナ前の時点ですでに4分の1以上減っていたことになります。
一方で、直近は下げ止まりが見えます。2022年の50,813件から2023年は52,444件へ+3.2%と、わずかながら増えました。減少がこのまま続くかどうかは、この数字だけでは判断できません。
州別では、クアラルンプールとケダが人口10万人あたりで多くなっています
州別に人口10万人あたりの件数を並べると、最も少ないのはクランタン州の107.3件、最も多いのはクアラルンプール連邦直轄区(プトラジャヤを含む)の214.4件でした。
ただし、この差が何によるものかは本記事では検証していません。分母は居住人口ですが、通勤や観光で昼間だけ人が増える地域、商業施設が集まる地域では、居住者以外が関わる事件も同じ分子に入ります。数字が大きいことをそのまま「危ない」と読むことはできません。
← 横にスクロールできます →
| 州・連邦直轄区 | 件数(2023年) | 人口 | 10万人あたり | 2016年比 |
|---|---|---|---|---|
| クランタン州 | 1,994件 | 1.86百万 | 107.3 | -56.2% |
| サバ州(ラブアンを含む) | 4,117件 | 3.69百万 | 111.5 | -23.3% |
| トレンガヌ州 | 1,370件 | 1.21百万 | 113.3 | -45.1% |
| パハン州 | 1,875件 | 1.64百万 | 114.1 | -50.4% |
| プルリス州 | 339件 | 0.29百万 | 115.8 | -48.2% |
| ジョホール州 | 5,330件 | 4.10百万 | 130.0 | -58.8% |
| ペラ州 | 3,572件 | 2.54百万 | 140.6 | -38.8% |
| マラッカ州 | 1,457件 | 1.03百万 | 141.8 | -60.2% |
| ヌグリスンビラン州 | 1,895件 | 1.22百万 | 154.8 | -57.6% |
| サラワク州 | 4,045件 | 2.51百万 | 161.2 | -40.7% |
| スランゴール州 | 13,739件 | 7.21百万 | 190.7 | -56.0% |
| ペナン州 | 3,604件 | 1.77百万 | 203.4 | -41.1% |
| ケダ州 | 4,567件 | 2.19百万 | 208.8 | -38.6% |
| クアラルンプール連邦直轄区(プトラジャヤを含む) | 4,540件 | 2.12百万 | 214.4 | -73.3% |
出典:マレーシア王立警察(PDRM)・マレーシア統計局(DOSM)『OpenDOSM データカタログ』(2016〜2023年(本データセットの収録最新年は2023年。2026年9月19日確認))。人口は同統計局の州別人口(2023年)。10万人あたりと増減は当社の計算です。★この犯罪統計では、公式の説明どおりプトラジャヤがクアラルンプールに、ラブアンがサバに合算されています(原文:data for W.P. Putrajaya and W.P. Labuan are subsumed under W.P. Kuala Lumpur and Sabah respectively)。そのため人口10万人あたりの計算では、分母の人口にもそれぞれを加えています。集計は14の単位になります。
出典:マレーシア王立警察(PDRM)・マレーシア統計局(DOSM)『OpenDOSM データカタログ』(2016〜2023年(本データセットの収録最新年は2023年。2026年9月19日確認))/作図:ルシュエット。棒が短いほど件数が少ない州です。
日本人が多いエリアの数字
日本人が多く住むのはクアラルンプール連邦直轄区(プトラジャヤを含む)とスランゴール州です。この2つは人口10万人あたりで見ると214.4件、190.7件と、全国のなかでは多いほうに入ります。
ただし減り方も大きく、クアラルンプール連邦直轄区(プトラジャヤを含む)は2016年比で-73.3%と、この14の州・連邦直轄区のなかで最も減りました。スランゴール州も-56.0%です。
もうひとつ押さえておきたいのは、この数字が「日本人が被害に遭う確率」を示すものではないことです。犯罪の起きやすさは同じ州のなかでも地区によって差があり、住む場所・通う学校・生活の仕方で変わります。エリアごとの特徴や具体的な防犯は、マレーシアの治安は実際どう?で扱っています。
統計の数字と、暮らしている実感は分けて考えていただくのが良いと思います。私たちがご案内するエリアでは、コンドミニアムにセキュリティがあり、学校への送迎も一般的です。一方で、車上荒らしやひったくりの話はゼロではありません。数字が減っていることは事実ですが、それは「気をつけなくてよい」という意味ではありません。
調査方法と、このデータの限界
データの出どころ
- 犯罪件数=マレーシア王立警察(PDRM)・マレーシア統計局(DOSM)『OpenDOSM データカタログ』の crime_district(2016〜2023年(本データセットの収録最新年は2023年。2026年9月19日確認))。ライセンスはCC BY 4.0です(確認日:2026年9月19日)。
- 州別人口=同統計局の population_state(2020〜2023年)。
- 全国人口=世界銀行 World Development Indicators(州別人口が2020年以降しかないため、全国の10万人あたりはこちらを使いました)。
- 人口10万人あたりの件数と増減率は、当社が公表値をもとに計算したものです。
読むときの注意
- 「有罪判決が確定した実犯罪件数」です。警察の通報記録システムを集計したものですが、収録されるのは通報された件数ではなく、有罪判決に至った件数です(OpenDOSMの説明に明記されています)。虚偽の届出が混ざらない一方で、通報されなかった犯罪も、捜査中・裁判中の事件も含まれません。DOSM自身も「実際の犯罪率は、この数字を上回りうる」と注意書きしています。
- 件数の減少を、そのまま治安の改善と読むことはできません。有罪判決の件数は、検挙率や司法手続きの進み方にも左右されるためです。
- 被害に遭う確率ではありません。人口で割った値であり、個人がどれだけ危険かを示すものではありません。
- 対象は2分類・12類型に限られます。暴力犯罪(殺人・強姦・強盗4類型・傷害)と財産犯罪(侵入盗・車両盗3類型・その他の窃盗)だけが対象で、商業犯罪・詐欺・サイバー犯罪・薬物犯罪などは含まれていません。この数字は犯罪全体の件数ではありません。
- 収録は2016〜2023年です。本データセットの収録最新年は2023年です(2026年9月19日に確認)。
- 人口10万人あたりの件数を、そのまま危険度として比べることはできません。分母は居住人口ですが、通勤・観光で昼間だけ人が増える地域や、商業施設が集まる地域では、居住者以外が関わる事件も同じ分子に入るためです。本記事はこの関係を検証していません。
- 州のなかでも地区によって差があります。州の平均値は、住む場所の判断材料としては粗すぎます。
出典一覧
← 横にスクロールできます →
| 調査・資料名(リンク先で原典を確認できます) | 実施機関(原データの提供元) | 年次(基準日) | 確認日 |
|---|---|---|---|
| 犯罪件数(地区別・犯罪種別)crime_district / 収録は「有罪判決が確定した実犯罪件数」 | マレーシア王立警察(PDRM)・マレーシア統計局(DOSM) | 2016〜2023年(本データセットの収録最新年は2023年。2026年9月19日確認) | 2026年9月19日 |
| 州別人口 OpenDOSM データカタログ | マレーシア統計局(DOSM) | 2020〜2023年 | 2026年9月19日 |
| World Development Indicators(全国人口 SP.POP.TOTL) | 世界銀行 | 2016〜2023年 | 2026年9月19日 |
データの引用・転載について
本記事の集計表・グラフは、出典表示のうえ引用・転載いただけます
当社が計算した人口10万人あたりの件数・増減率と、それをもとにした表・図は、ご連絡なしで引用・転載いただけます。引用の際は、下記のように出典とリンクを添えてください。
出典:ルシュエット「マレーシアの犯罪統計|2016年から2023年に半減、州別の状況【2026年版】」
https://luchouette.com/column/data-malaysia-hanzai-toukei/
※政府統計そのものの数値は、各機関の利用規約に従ってください。本記事が再配布を許諾するのは、当社が計算・作図した部分に限ります。出典元の資料にも同じ数値が載っている場合は、原資料をあわせてご確認ください。
※このデータは毎年更新します。引用の際は、記事の更新日をあわせてご確認ください。
よくある質問
マレーシアの治安は良くなっているのですか。
統計上の犯罪件数は減っています。2016年の112,355件から2023年は52,444件で-53.3%、人口10万人あたりでは353.4件から149.3件になりました。ただしこれは有罪判決が確定した件数で、通報されなかった犯罪や捜査・裁判が続いている事件は含まれません。被害に遭う確率を示すものでもありません。
外出制限があったから減っただけではないですか。
制限前の2016年から2019年だけを取り出しても-25.7%で、すでに減少していました。一方で直近は2022年から2023年で+3.2%と、わずかに増えています。
クアラルンプールは危ないのですか。
人口10万人あたりの件数では214.4件で、州・連邦直轄区のなかでは多いほうです。ただし昼間人口や商業集積の影響を受けるため、この数字だけで危険とは言えません。またクアラルンプール連邦直轄区(プトラジャヤを含む)は2016年比-73.3%と、最も減った地域でもあります。
どの州が最も件数が少ないですか。
人口10万人あたりではクランタン州の107.3件が最も少なく、次いでサバ州(ラブアンを含む)(111.5件)、トレンガヌ州(113.3件)でした(2023年)。
詐欺やサイバー犯罪の数字は入っていますか。
入っていません。このデータに含まれるのは暴力犯罪(殺人・強姦・強盗・傷害)と財産犯罪(侵入盗・車両盗・その他の窃盗)の12類型だけで、商業犯罪・詐欺・サイバー犯罪・薬物犯罪は対象外です。犯罪全体の件数ではありません。
このデータを自分の記事で使ってもいいですか。
当社が計算した人口10万人あたりの件数・増減率と、それをもとにした表・図は、出典表示(本記事へのリンク)を添えていただければ引用・転載いただけます。マレーシア統計局のデータはCC BY 4.0で公開されているため、出典を示せば再配布が可能です。