結論から言うと、外国人でもマレーシアの不動産は購入できます。連邦の指針では1ユニットRM1,000,000(約3,870万円)以上が下限です。ただし価格の条件を満たしても、取引には物件がある州の州当局による書面での同意が要り、ここに数か月かかります。さらに2026年1月1日から、外国人が住宅用不動産を買うときの印紙税が一律8%になりました。この記事では、買う・持つ・売るの3つの段階で何がいくらかかるのかを、公式資料の出どころつきで順番に整理します。最後に、お子さんの教育のために移住を考えているご家庭が買うべきか借りるべきかを判断できるところまで書きます。
結論:買えるのはRM100万から。ただし州の同意が要る
マレーシアは、外国人が自分の名義で不動産を所有できる国です。東南アジアには外国人の土地所有を認めない国もあるなかで、ここは大きな違いになります。
連邦レベルのルールは、経済省(旧・首相府経済計画ユニット)の「不動産取得ガイドライン(Garis Panduan Perolehan Hartanah)」にあります。公開されている版は2014年3月1日施行のもので、2011年版を置き換えたものです。ここに外国人が取得できない不動産が列挙されており、その筆頭が1ユニットRM1,000,000(RM1≒38.7円で約3,870万円)未満の物件です。マレーシア弁護士会が2024年に会員へ出した通知でも、同じRM100万が下限として案内されています。
逆に言えば、RM100万以上の住宅であれば経済省の承認そのものは不要で、判断は州当局に委ねられます。ガイドライン第2.3項がそう定めています。つまり実務上の関門は連邦ではなく州だ、という構造をまず押さえてください。
ご相談でよく誤解されているのが、「RM100万は全国共通の基準」という理解です。RM100万はあくまで連邦が定めた下限で、州はこれより高い基準を独自に設けることができます。物件の種類(コンドミニアムか土地付きか)や、同じ州内でも地域によって基準を分けている州もあります。
そして、その基準は州のウェブサイトで一覧になっているとは限らず、告示や通達の形で更新されます。日本語のまとめ記事どうしで金額が食い違っているのは、参照した時点と州が違うためです。金額はネットの記事ではなく、買いたい州の土地事務所(Pejabat Tanah dan Galian)か、その州で登記を扱っている弁護士に直接確認してください。
州でどれだけ違うのか(セランゴール州とジョホール州の例)
「州で違う」と言われてもイメージが湧きにくいので、実際に基準を公表している2州を並べます。日本人のご家庭が候補にしやすい、クアラルンプールを取り囲むセランゴール州と、シンガポールに隣接するジョホール州です。
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| 区分 | セランゴール州 | ジョホール州 |
|---|---|---|
| 住宅 | ゾーン1・2=RM200万 ゾーン3=RM100万 | 一律 RM100万 |
| 商業用 | RM300万 | RM100万 |
| 工業用 | RM300万 | RM100万 |
| 買える住宅の種類 | 区分所有のみ (一戸建ては不可) | 2階建て以上のテラス・ 戸建て・コンドなど |
| 地区による差 | あり(3ゾーン) | なし |
※セランゴール州は土地鉱物局長通達 第1号/2014年(2014年9月1日施行)。住宅の対象が区分所有(strata。ランデッド・ストラタを含む)に限られ、区分所有でない一戸建ては外国人の取得対象外とされています。農地・マレー保留地・公売による取得も対象外で、外国人への販売枠は非ブミプトラ向け割当ての10%以内。2020年・2021年に期間限定の緩和プログラムが出ており、現在の運用までは確認できていません。ジョホール州は土地鉱物局長通達 第2号/2014年(2014年5月1日施行)と、州土地鉱物局の現行の案内ページ。低コスト・低中コスト住宅、平屋・1階半のテラスハウス、3階未満のテラス型店舗、マレー保留地上の物件などは取得できないとされています。いずれも金額は変わり得ます。購入前に州の土地鉱物局または現地の弁護士へご確認ください。
ここで押さえていただきたいのは金額そのものより、連邦の下限であるRM100万では足りない州があるという事実です。クアラルンプールの隣というだけで、住宅の条件が倍になります。しかもセランゴールでは買える住宅の種類まで限定されていて、一戸建ては価格を積んでも買えません。
さらにややこしいことに、州が公表している基準は物件の種類ごとに分かれていて、連邦の下限と数字が一致しない州もあります。州ごとに独立して決まる仕組みなので、ある州の数字から他州を推測することはできません。
購入したいエリアが決まったら、まずその州の基準を確認する。これを最初のステップにしてください。
外国人が買えない4種類の不動産
経済省ガイドラインの第10項は、外国人が取得できないものを4つ挙げています。価格の条件をクリアしていても、この4つに当たると買えません。
| 買えないもの | 内容 |
|---|---|
| ①RM100万未満の物件 | 1ユニットあたりの価格が連邦の下限に届かないもの。州がより高い基準を定めている場合は、その額に届かないもの |
| ②低コスト・低中コスト住宅 | 州当局が低所得層向けと区分している住宅 |
| ③マレー保留地 | Tanah Rizab Melayu。マレー系のために留保された土地の上の不動産 |
| ④ブミプトラ枠の物件 | 開発プロジェクトでブミプトラ(マレー系・先住民)向けに割り当てられたユニット |
※経済省「不動産取得ガイドライン」第10項(2014年3月1日施行)にもとづく整理です。②〜④は物件情報の表面には出てこないことがあり、権利証(title)の条件欄や開発許可の条件を弁護士に確認してもらう部分になります。
ここで見落とされやすいのが、この規定でいう「外国人」の範囲です。ガイドラインの定義(外国利益=foreign interest)は、①非マレーシア国民、②マレーシアの永住権保持者、③外国法人、④これらが議決権の50%超を持つ現地法人を含みます。永住権を取っても、不動産取得のルール上は外国人のままだということです。
ややこしいのは、後述する印紙税8%のほうは永住権保持者が除かれる点です。同じ「外国人」という言葉でも、制度ごとに範囲が逆転します。ご自身がどちらに当たるかは、制度ごとに個別に確認してください。
州政府の同意(433B)=日本人が最も見落とす3〜6か月
結論として、外国人の不動産取引には物件がある州当局の書面による同意が必要で、これがスケジュール上の最大の変数になります。根拠は国家土地法(National Land Code)第433B条です。同法第433A条が「foreign interest」を定義し、433B条がその取得に州当局の承認を求めています。
クアラルンプール(連邦直轄領)では、登記の実務としてこの同意書(surat kebenaran)の添付が求められます。連邦直轄領土地鉱物局の登記ガイドラインに項目として明記されており、添付がなければ登記申請が却下される扱いです。日本の感覚で「代金を払えば名義が移る」と考えていると、ここで止まります。
申請から承認までの期間について、法律事務所の解説では典型的な案件で最低3か月、契約書上は6か月を見込むのが一般的とされています。ただしこれは実務上の目安であり、公的に保証された処理期間ではありません。州や案件の内容によって前後します。
ご家族の渡航スケジュールと購入を同時に走らせようとして、いちばん苦しくなるのがこの待ち時間です。学校の始業に合わせて動いているご家庭だと、「引き渡しが間に合わないので、結局いったん賃貸を借りた」という流れになることがあります。
購入を検討される場合は、州同意の期間を最初からスケジュール表に置いてください。そのうえで、その間の住まいをどうするかまで含めて考えると、費用の見立てが現実に近づきます。マレーシアの賃貸契約の記事も併せてご覧ください。
2026年1月から、住宅用の印紙税は外国人一律8%
ここが2026年に入って最も大きく変わった点です。結論を先に書くと、2026年1月1日以降に所有権移転証書(MOT=Memorandum of Transfer)が執行された住宅用不動産について、非国民および外国法人には一律8%の印紙税がかかります。マレーシアの永住権保持者はここから除かれ、国民と同じ累進税率です。
MOT(所有権移転証書)とは、売主から買主へ名義を移すために土地事務所へ提出する登記の書類です。印紙税はこの書類に対してかかります。
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| 物件価格の区分 | 国民・永住権保持者 | 外国人(住宅用) 2026年1月1日〜 | 外国人(商業・工業) |
|---|---|---|---|
| 最初のRM10万 | 1% | 一律 8% | 一律 4% |
| 次のRM40万 | 2% | ||
| 次のRM50万 | 3% | ||
| RM100万超の部分 | 4% | ||
| RM100万の物件なら | RM24,000(約93万円) | RM80,000(約310万円) | RM40,000(約155万円) |
制度の変遷を整理すると、次のようになります。もともと印紙税は国籍を問わず累進の1〜4%でした。2024年1月1日に外国法人・非国民(永住権保持者を除く)を対象とする一律4%の区分が新設され、2026年1月1日にそのうち住宅用が切り出されて8%になった、という順です。
「住宅用不動産」の定義も、あわせて法律に新設されました。専ら住居として使われる、一戸建て・コンドミニアム・アパート・フラット・サービスアパートメント・SOHOがこれにあたります。ただし内国歳入庁が配布する宣誓書のひな型にはサービスアパートメントやSOHOを含まない記載があり、法律の定義と食い違っているとの指摘が弁護士会から出ています。この種別の物件を検討される場合は、弁護士に取り扱いを確認してください。
ここで注意していただきたいのが判定の基準日です。実務の解説では「所有権移転証書(MOT)が執行された日」を基準に説明されています。ただし、2025年中に売買契約を結び、名義の移転が2026年にずれ込んだ場合の扱いについて、内国歳入庁の公式見解は確認できませんでした。またぐ時期の取引を検討されている場合は、必ず弁護士を通じて内国歳入庁に確認してください。
もうひとつは、予算発表時の報道と成立した条文で表現が食い違っている点です。2026年度予算の発表時には「価格に応じて4%〜8%」と報じられましたが、成立した規定では住宅用は一律8%です。古い報道を根拠に資金計画を立てないでください。
※印紙税の改定内容は複数の法律事務所の解説が一致していますが、官報原文までは確認できていません。実際の税額は取引の内容によって変わるため、必ず取引を依頼する弁護士(solicitor)に見積もりを取ってください。なお住宅ローンを組む場合、ローン契約書に借入額の0.5%の印紙税が別途かかります。また、初回購入者向けの印紙税免除(市場価格RM50万以下の住宅が対象。2027年12月31日までに契約したものが対象で、過去に住宅を所有したことがない方に限られます)はマレーシア国民に限定されており、外国人・永住権保持者・MM2H保持者は使えません。
※ここからは手続きに関わる方向けの補足です。印紙税は自己申告制(STSDS)へ移行が進んでいます。2026年1月1日から始まったのはフェーズ1で、対象は賃貸・リース、担保や融資に関する文書、一般の証書です。不動産の所有権移転が自己申告の対象になるのは2027年1月1日のフェーズ2からで、しかも不動産評価局の評価を伴わない移転に限られるとされています。「2026年から売買も自己申告」と書かれた記事がありますが、時期が1年ずれています。あわせて、従来の申告システム(STAMPS)は2025年12月31日で終了し、2026年1月1日からはMyTax上のe-Duti Setemに移行しています。
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買うときにかかるお金の全体像
物件価格以外にかかるお金は、大きく印紙税・弁護士費用・仲介手数料の3つです。RM1,000,000(約3,870万円)の住宅を、7割をローンで買う場合を例に並べます。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| MOTの印紙税(外国人・住宅用8%) | RM80,000(約310万円) |
| 弁護士費用(売買契約・移転登記) | RM11,250(約44万円)+実費 |
| ローン契約書の印紙税(借入RM70万×0.5%) | RM3,500(約14万円) |
| ローン書類の弁護士費用 | 借入額に応じて別途 |
| 物件価格以外の合計(目安) | 約RM95,000〜(約368万円〜) |
※弁護士費用は「弁護士報酬令2023(Solicitors' Remuneration Order 2023, P.U.(A) 207)」にもとづく計算です。最初のRM50万にあたる部分が1.25%(最低RM500)、そこから累計RM750万までの部分が1%と定められています(RM750万を超える部分は1%を上限に交渉)。中古(サブセール)の取引ではこの報酬表から最大25%まで値引きが認められていますが、デベロッパーからの新築購入は住宅開発法(HDA)に対応する別表の適用となり、値引きは認められていません。同一の取引で売主・買主の双方から報酬を受け取ることも禁止されています。RM1≒38.7円で換算した目安です。
仲介手数料は、不動産業者を監督する評価士・鑑定士・不動産業者委員会の規則で売買は取引額の最大3%(最低RM1,000)と定められています。RM100万ならRM30,000(約116万円)が上限です。
実務では売主が負担する取引が多いとされますが、どちらが払うかは法律で決まっていません。慣行として説明されているだけなので、誰の負担になっているかは必ず契約書の条項でご確認ください。
細かい税率や条文の名前を覚えていただく必要はありません。手続きは現地の弁護士が主導します。ご家庭としては「物件価格のほかに1割前後が乗る」という感覚だけ持っておいていただければ十分です。
住宅ローンは外国人でも組めるのか
結論として、国籍による融資比率(LTV)の上限は中央銀行の規制に存在しません。マレーシア中央銀行(BNM)が定めているのは「3件目以降の住宅ローンは最大70%」という規制のみで、外国人向けの上限は各銀行の判断です。実際、外国人の申し込みを受け付けると明記している銀行や、MM2H保持者向けに最大85%まで融資する商品を出している銀行があります。
一方で、ビザを持たない非居住者がどこまで借りられるかについては、主要行の公式サイトに条件の記載を見つけられませんでした。「外国人は50〜60%まで」といった数字がネット上に出回っていますが、出どころは不動産系のブログで、公的な裏づけがありません。借入前提で計画を立てる場合は、複数の銀行に直接、事前審査(pre-approval)を取ってください。
持ち続けるあいだのコスト
保有中に毎年かかるのは、土地税・査定税・管理費の3つです。日本の固定資産税と比べると、税の部分はかなり小さく収まります。
| 費目 | 内容と目安 |
|---|---|
| 土地税・区画税 (cukai tanah/cukai petak) | 州(KLは連邦直轄領土地鉱物局)に年1回納付。KLの住宅区画では区画税が1平方メートルあたりRM0.26、最低RM25という水準で、100㎡のコンドミニアムなら年RM26前後の桁 |
| 査定税(cukai pintu) | 市に年2回納付。年間の評価賃料に税率を掛ける方式で、クアラルンプール市庁(DBKL)の中心部区分では住宅4%・サービスアパートメント7%・商業10%。評価賃料が年RM13,200なら年RM528 |
| 管理費・シンキングファンド | 区分所有(strata)の物件で毎月発生。持分割合に応じて配分され、シンキングファンドは管理費の10%以上と区分所有管理法2013で定められている |
※土地税・区画税の単価は連邦直轄領の資料にもとづく水準で、調査時点が数年前のため現在の告示と異なる可能性があります。査定税は各市の告示によって率も評価賃料も変わります。実額は物件の所在地の市・土地事務所でご確認ください。管理費の単価は物件の設備(プール・ジム・警備体制など)で大きく変わり、公的に定まった相場はありません。
この3つのうち、実際の家計に効いてくるのは管理費です。税の部分は年間で数百リンギット規模に収まることが多い一方、管理費とシンキングファンドは毎月かかり、設備が充実した物件ほど高くなります。物件を比較するときは、価格だけでなく月々の管理費がいくらかを必ず並べて見てください。
買った家を貸す場合の税金
購入した物件を賃貸に出す場合、非居住者の賃料所得には一律30%の所得税がかかります。居住者に認められる各種の控除(reliefs)は適用されません。利回りを計算するときは、この30%を引いた後の数字で見てください。
サービス税(SST)については、不動産の賃貸・リースが2025年7月1日から課税対象になりましたが、住宅用の賃貸は課税対象から除外されています。コンドミニアムやサービスアパートメントを住居として貸す限り、家賃にSSTは乗りません。商業用として貸す場合は課税対象で、税率は2026年1月1日から6%(2025年内は8%)、課税事業者になる閾値は12か月でRM1,000,000です。なお関税局の英語版ガイドは2025年6月版のまま更新されておらず、税率8%・閾値RM50万と書かれたままです。数値を確認するときはマレー語版か官報をご覧ください。
なお短期の民泊については、連邦の統一法がありません。物件の管理規約・地方自治体の許可・権利証の条件の3層それぞれに拒否権があるため、収益を前提に計画を組むのは避けてください。詳しくはマレーシア移住で変わる税金の記事でも触れています。
売るときの税金(RPGT)は外国人だけ0%にならない
結論として、マレーシアでは外国人の不動産譲渡益税(RPGT)に0%の区分がありません。ここが購入判断でいちばん重い事実です。内国歳入庁(LHDN)が公表する税率表は次のとおりです。
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| 売却した時期 | 国民・永住権保持者 | 外国人・非永住者・外国法人 |
|---|---|---|
| 取得から3年目まで | 30% | 30% |
| 4年目 | 20% | 30% |
| 5年目 | 15% | 30% |
| 6年目以降 | 0% | 10% |
加えて、外国人が売主の場合は買主が代金の7%を留保し、譲渡日から60日以内に内国歳入庁へ納付する義務があります。納付が遅れると10%の加算があります。売却代金が満額そのまま手元に来るわけではない、という点を計画に織り込んでください。
免除については、譲渡益のうちRM10,000または課税利得の10%のいずれか高い方が控除され、これは国籍を問わず個人に適用されます。一方で一生に一度だけ使える自己居住用住宅の免除は、マレーシア国民または永住権保持者に限られます。外国人は使えません。
MM2Hと不動産購入の関係
結論として、現行のMM2H(Malaysia My Second Home)は、承認取得後の住宅購入がすべての区分で必須です。「不動産を買えばビザが取れる」のではなく、「ビザの条件として買わされる」という順序である点を、まず押さえてください。
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| 区分 | 最低購入額 | 定期預金(USD建て) | パス期間 |
|---|---|---|---|
| Silver | RM600,000以上(約2,320万円) | USD150,000 | 5年 |
| Gold | RM1,000,000以上(約3,870万円) | USD500,000 | 15年 |
| Platinum | RM2,000,000以上(約7,740万円) | USD1,000,000 | 20年 |
| SEZ/SFZ | ジョホール州フォレストシティ内で購入 | USD65,000(21〜49歳)/USD32,000(50歳以上) | 10年 |
※MM2H公式サイト(mm2h.gov.my)のカテゴリ別ページおよび比較表にもとづきます(2026年9月1日確認)。定期預金の額はUSD建てで定められています。実際の預け入れについては、各区分のUSD相当額をリンギットで行うことが公式発表で推奨されています。以前流通していた「SilverはRM100万、GoldはRM200万」といったリンギット建ての条件は現行のものではありません。参加費は別途、SilverがRM1,000、GoldがRM3,000、PlatinumがRM200,000、SEZがRM1,000。SEZ/SFZ区分の最低購入額はジョホール州の政策によるとされ、公式に金額は示されていません。MM2Hは条件の改定が続いている制度です。申請を検討する時点の最新条件を必ず公式でご確認ください。
購入のタイミングも区分で違います。Silver・Gold・Platinumはパスが発給されてから1年以内に購入する形ですが、SEZ/SFZ区分はパスの発給前に購入を済ませる必要があり、しかもフォレストシティの開発業者から直接買うことが条件とされています。第三者からの購入は認められていません。
不動産の観点でMM2Hを見るときに、必ず知っておいていただきたい条件が10年間の売却禁止です。承認後に購入した住宅は10年間売却できず、例外はより高額な物件への買い替えのみとされています。違反はパスの取り消し事由です。
お子さんの教育を目的にMM2Hを取る場合、この条件は重く効きます。お子さんが卒業して日本に帰ることになっても、10年を待たないと家を手放せないということだからです。
また、MM2H保持者も税法上は非国民かつ非永住者にあたるため、印紙税8%の対象になると読めます。MM2H向けの印紙税免除は公式には確認できていません。Silverの下限であるRM600,000でも、印紙税は約RM48,000(約186万円)という規模になります。免除の有無は申請前に弁護士へご確認ください。
MM2Hの滞在義務など不動産以外の条件は、マレーシアの長期滞在ビザの記事で整理しています。
フリーホールドとリースホールド、権利証の種類
マレーシアの不動産は、土地の権利のあり方でフリーホールド(freehold=永久所有)とリースホールド(leasehold=定期借地)に分かれます。物件広告に必ず書かれている項目なので、意味を押さえておいてください。
リースホールドは半島部で通常99年の期間が設定されています。期間が満了すると土地は州に戻り、更新は申請とプレミアム(更新料)の支払い、そして州の承認が必要で、自動ではありません。「更新できる」と書かれた解説がありますが、権利として保証されているわけではない点に注意してください。
実務上さらに効くのが融資です。残存期間が短くなった物件は銀行の融資が付きにくくなるとされており、目安として残り50年を切ると難しくなると言われます。自分が買うときだけでなく、将来売るときに買主が融資を組めるかにも関わります。
もうひとつの区分が権利証の種類です。土地付き住宅では土地と建物が本人名義になる個別権利証(individual title)、コンドミニアムのような集合住宅では区分権利証(strata title)になります。区分権利証の物件は管理組合(Management Corporation)が置かれ、前述の管理費とシンキングファンドが発生します。
※権利の内容と融資の実務は法律事務所の解説にもとづく整理で、公的機関の統一的な公表資料ではありません。個別の物件の権利証の内容は、必ず弁護士に権利証の写しを確認してもらってください。
購入の流れ(6ステップ)
中古(サブセール)の購入を前提に、実際の流れを整理します。外国人の場合はこの流れに州同意の期間が上乗せされるため、日程には余裕を持たせてください。
物件を決め、ブッキングフィーを払う
価格の2〜3%程度を手付の前段として支払い、物件を押さえます。この時点で弁護士を決めておくと後が早く進みます。
14〜21日以内に売買契約(SPA)に署名
署名時に価格の10%相当(ブッキングフィーを含む)を支払うのが一般的です。この契約書に、州同意が下りなかった場合の扱いを必ず書き込みます。
州当局へ同意を申請する
弁護士が物件所在地の州へ申請します。最低3か月、実務では6か月を見込むのが一般的とされます。ここが外国人固有の関門です。
ローンの手配と印紙税の納付
銀行の融資が下りたら、MOTとローン契約書に印紙税を納めます。住宅用なら外国人は8%です。
残代金の決済(90日以内)
契約から90日以内の決済が標準で、30日の延長が利息付きで認められる契約が一般的です。期限を過ぎると契約解除と手付没収の可能性があります。
MOTの登記・引き渡し
土地事務所へ所有権移転を登記して完了です。区分所有の物件では、管理組合への登録と管理費の引き継ぎも行います。
※デベロッパーから新築を買う場合は流れが変わります。住宅開発法(HDA)のもとで引き渡し期限が定められており、土地付き住宅は24か月、区分所有は36か月、引き渡し後の瑕疵担保期間は24か月、代金の5%が瑕疵補修のために留保されます。期間や契約条件は物件によって異なるため、契約書の該当条項を弁護士に確認してもらってください。
日本側で発生する義務
マレーシア側の手続きばかりに目が行きますが、日本の居住者であり続ける場合は日本側でも義務が発生します。ここは購入を扱う日本語記事でほとんど触れられていない部分です。
まず国外財産調書です。その年の12月31日時点で国外にある財産の合計額が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)は、翌年の6月30日までに調書を提出する義務があります。マレーシアの不動産はこの国外財産に含まれます。
次に国外中古建物の損益通算の制限です。令和3年分以後、国外にある中古建物について簡便法などで計算した減価償却費に相当する部分の損失は「生じなかったもの」とみなされ、国内の不動産所得と相殺することも、他の所得と損益通算することもできません。「海外不動産で節税」という説明は、この改正で前提が変わっています。
マレーシアで納めた税については、外国税額控除で日本の所得税から一定額を控除できる仕組みがあります。控除限度額はその年分の所得税額に、所得総額に占める国外所得の割合を掛けて計算します。
相続についても押さえておいてください。マレーシアに相続税はありませんが、日本の居住者や、10年以内に日本に住所があった日本国籍の方については、国外にある財産も日本の相続税の課税対象になります。「海外に資産を移せば日本の相続税がかからない」と考えるのは危険です。判定はご家族それぞれの居住歴と国籍で決まるため、自己判断せず、国際税務に詳しい税理士へご相談ください。
※いずれも国税庁のタックスアンサーにもとづく整理です。実際の申告と税額の計算はご家庭の状況で変わります。日本側の税務は必ず日本の税理士にご相談ください。
教育移住のご家庭は「買わない」判断も検討する
ここまで購入の条件を整理してきましたが、お子さんの教育を目的にマレーシアへ来られるご家庭には、賃貸のほうが条件に合うことが多いというのが私たちの実感です。理由を、確認できた事実だけで並べます。
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| 判断の軸 | 買う | 借りる |
|---|---|---|
| 滞在資格との関係 | 購入しても在留資格は生まれない | 学生パス+保護者の帯同で滞在可 |
| 入るまでの期間 | 州同意で3〜6か月の上乗せ | 数週間で入居できる |
| 入口の費用 | 印紙税8%+弁護士費用 | 家賃の3.5〜4.5か月分 |
| 出口 | 5年目まで譲渡益の30% | 契約満了で終了 |
| 住み替えのしやすさ | 売却が必要 | 学校の転校に合わせやすい |
| 長期で住む場合 | 家賃の支払いが止まる | 払い続ける |
いちばん大きいのは購入が在留資格を生まないという点です。教育移住の主流である学生パスと保護者の帯同パスでは、不動産の購入は要件になっていません。家を買っても、それだけで長く住めるようにはならないということです。
次に出口の重さです。外国人は保有5年目までの売却で譲渡益の30%が課税され、6年目以降も10%が残ります。お子さんの在学期間が5年前後なら、ちょうど税率がいちばん高い時期に売ることになります。
MM2Hを使う場合はさらに10年の売却禁止が加わります。お子さんの進路が変わったときに、住まいだけが動かせない状態になりかねません。
「せっかく行くなら買ったほうが得ではないか」というご相談は、実際によくいただきます。ただ、私たちがまずお聞きするのは損得ではなく、「何年住むご予定ですか」という一点です。ここが決まらないうちに購入を進めると、税制のいちばん不利な時期に売る形になりやすいためです。
制度の話とは別に、住まいの場所そのものでつまずくこともあります。クアラルンプール周辺は朝夕の渋滞が激しく、地図上の距離では通学時間が読めません。スクールバスにも運行ルートの範囲があり、範囲の外に住むと毎日の送迎がご家庭の負担になります。学校が決まる前に購入してしまうと、この2つを後から直せません。
制度の組み合わせとして怖いのは、「買い急ぎ」と「早い帰国」が重なるケースです。お子さんが学校に合わずに転校や帰国を選ぶことは実際に起こりますが、そのタイミングが購入から5年以内だと、売却益に30%の課税がかかる時期にぶつかります。MM2Hを使っていれば、そもそも10年は売れません。
目安としてお伝えしているのは、滞在が10年を超える見込みで、当面売却を考えず、ご家族の生活の拠点をマレーシアに移すご意思がある——この3つがそろうなら購入が選択肢に入る、という整理です。逆に「お子さんの在学期間だけ」であれば、賃貸のほうが条件に合います。まずはエリアと学校を決めて借り、暮らしてみてから購入を考えるご家庭も少なくありません。
「買うべきか、借りるべきか」を、ご家族の予定から逆算します
滞在年数・お子さんの学年・帰国の可能性を並べると、答えはかなり絞れます。クアラルンプール現地のスタッフが一緒に整理します。
学校選びとエリア選びの資料も無料でお送りします。
よくある質問
外国人でもマレーシアの不動産を購入できますか?
購入できます。マレーシアは外国人の不動産所有を認めている国で、経済省のガイドラインでは1ユニットRM1,000,000(RM1≒38.7円で約3,870万円)以上であれば外国人が取得できるとされています。ただし物件の価格を満たしていても、取引には物件がある州の州当局による書面での同意(国家土地法433B)が必要です。州によって下限価格の運用が異なる場合があるため、購入を検討する州の土地事務所または現地の弁護士に必ずご確認ください。
外国人が買えない不動産はありますか?
経済省のガイドライン第10項は、外国人が取得できないものとして4つを挙げています。1ユニットRM1,000,000未満の不動産、州当局が定める低コスト・低中コスト区分の住宅、マレー保留地(Malay Reserved Land)上の不動産、そして開発プロジェクトでブミプトラ枠に割り当てられた不動産です。なお、この規定でいう「外国人」にはマレーシアの永住権保持者も含まれます。
マレーシアで不動産を買うと印紙税はいくらかかりますか?
2026年1月1日以降、所有権移転証書(MOT)が執行された住宅用不動産については、非国民および外国法人に一律8%の印紙税が課されます(マレーシアの永住権保持者は除かれ、国民と同じ累進税率です)。RM1,000,000の住宅なら印紙税はRM80,000(約310万円)になります。商業用・工業用の物件は住宅用の区分から外れ、外国人は引き続き4%です。判定は売買契約の署名日ではなくMOTの執行日で行われるとされています。
売却するときの税金(RPGT)はどうなりますか?
マレーシアの内国歳入庁(LHDN)が公表する不動産譲渡益税(RPGT)の税率表では、非市民・非永住者・外国法人は保有期間5年目までの売却で譲渡益の30%、6年目以降の売却で10%とされています。国民や永住権者は6年目以降0%になりますが、外国人には0%の区分がありません。加えて買主は代金の7%を留保し、譲渡日から60日以内に納付する義務があります。また、一生に一度の自己居住用免除は国民・永住権者に限られ、外国人は使えません。
MM2Hを取るには不動産の購入が必要ですか?
現行のMM2H(Malaysia My Second Home)では、承認取得後の住宅購入がすべての区分で必須とされています。公式サイトが示す最低購入額はSilverがRM600,000以上、GoldがRM1,000,000以上、PlatinumがRM2,000,000以上で、SEZ/SFZ区分はジョホール州フォレストシティ内での購入が条件です。購入した住宅は10年間売却できず(より高額な物件への買い替えを除く)、違反はパスの取り消し事由とされています。条件は改定が続いているため、申請時点の最新情報をMM2H公式でご確認ください。
数年の教育移住でも家を買ったほうがよいですか?
お子さんの在学期間が決まっているご家庭では、賃貸のほうが条件に合うことが多くなります。理由は3つあります。第一に、学生パスと保護者の帯同パスで滞在する形では不動産の購入が要件になっていません。第二に、外国人は保有5年目までの売却でRPGTが30%かかり、出口が重くなります。第三に、2026年からの印紙税8%と弁護士費用、そして州同意の待ち時間が入口にかかります。滞在が10年を超える見込みで、当面売却を考えないご家庭であれば購入が選択肢に入ります。