ルシュエット|マレーシア留学・教育移住
マレーシア長期滞在ガイド

マレーシア長期滞在|ビザ・費用・暮らし方を期間別に現地スタッフが解説【2026年】

「マレーシアにしばらく住んでみたい」と思ったとき、最初につまずくのが“どのくらい居られるのか”という一点です。滞在できる日数が決まれば、必要な手続きも、住まいの借り方も、かかるお金も自動的に決まります。クアラルンプールの現地スタッフが、期間別に整理しました。

結論から言うと、マレーシアの長期滞在は「何日いられるか」で4つの段階に分かれます。日本国籍の方がビザなしで滞在できるのは最長3か月。それを超えて住むには、目的に合ったパス(在留資格)が必要です。そして滞在が長くなるほど、住まいの借り方・お金の出方・税金の扱いが段階的に変わります。この記事では「3か月まで」「3〜6か月」「1年以上」「5年以上」の4段階に分けて、それぞれで何が必要になるかを順に整理します。

マレーシアの長期滞在は「滞在できる日数」で4段階に分かれる

マレーシアには「長期滞在ビザ」という名前の単一の制度はありません。目的別のパス(在留資格)がいくつもあり、そのどれを選ぶかで滞在できる年数が決まるという構造です。そのため「何年住みたいか」から考えると迷子になりやすく、「何を目的に住むのか」から決めたほうが早く決まります。まず全体像を、滞在できる期間の順に並べて整理します。

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段階滞在期間の目安使う在留資格主なハードル向いている人
① 短期〜3か月査証免除(ビザなし)◎ ほぼ無し
(MDACの登録のみ)
まず暮らしを見てみたい
② お試し長期3〜6か月目的に応じたパス
(就学など)
○ 目的の証明が要る本決めの前に試したい
③ 生活1年〜数年学生パス+保護者パス/
就労パス/DE Rantau
△ 学校・雇用主・収入の条件子どもの教育・仕事が軸
④ 長期定住5年〜20年MM2H
(4カテゴリー)
△ 定期預金と不動産購入資産に余裕がある・リタイア層
◎ 負担が軽い○ 準備が必要△ 条件が重い
▲ マレーシア長期滞在の4段階。滞在できる期間が延びるほど、求められる条件も重くなります。ハードルの評価は編集部の目安で、実際の可否はご家族の状況と各制度の最新条件によって変わります(2026年8月時点の公表情報をもとにルシュエット作成)。

ポイントは、③と④は「どちらが上」という関係ではないことです。お子さんの教育が目的なら③のほうが現実的ですし、まとまった資産があってご自身がリタイア世代なら④が素直です。金額の大きさではなく、滞在の目的に一致しているかどうかで選ぶのが正しい順番になります。

現地からのリアル

ご相談で一番多い誤解が、「マレーシアの長期滞在ビザを取りたい」というご要望です。お気持ちはよく分かるのですが、実際には「お子さんが学校に通うから、その保護者として滞在する」「現地で雇用されるから就労パスを取る」というように、滞在の理由から逆算して決まります。ですので最初のご相談では、ビザの話よりも先に「何年くらいを想定していますか」「お子さんは何歳ですか」「収入はどこから得ますか」を伺うことが多いです。

もう一つ多いのが、「まず1年住んでみて、良かったら延ばしたい」というご相談です。この考え方自体はとても現実的なのですが、③のルートは学校の入学時期や雇用契約に紐づくため、思い立ってすぐ動けるものではありません。逆算して半年前から準備を始める方が結果的にスムーズです。

まず前提:ビザなしで滞在できるのは最長3か月

すべての出発点はここです。日本国籍の方は、観光や知人訪問といった社会訪問目的であれば、査証(ビザ)を取らずに最長3か月まで滞在できます。この枠内であれば、事前にビザ申請をする必要はありません。ただし注意点が3つあります。

① 報酬を得る活動は対象外

査証免除で認められているのは社会訪問であり、マレーシア国内で報酬を得る活動は含まれません。現地の会社に雇用されて働く場合は、この枠ではなく就労パスが必要になります。日本の会社からの給与をリモートで受け取りながら滞在する形については、扱いが状況によって異なるため、後述のDE Rantauなど適切な制度の確認をおすすめします。

あわせて覚えておきたいのが、短期の滞在であっても、宗教活動・調査研究活動・テレビや映画の撮影を目的とする場合は査証が必要とされていることです。「3か月以内なら何をしても自由」ではない点にご注意ください。

② 入国前にMDAC(デジタル・アライバル・カード)の登録が必要

マレーシアは入国者にオンラインでの事前登録を求めており、マレーシア・デジタル・アライバル・カード(MDAC)という仕組みが運用されています。渡航前に移民局のポータルから登録しておく必要があるため、空港に着いてから慌てないよう出発前に済ませておきましょう。登録の具体的な手順はマレーシアMDAC登録方法の記事で解説しています。

③ 3か月は「必ずもらえる日数」ではない

見落とされがちですが、実際に何日の滞在を認めるかは、入国時に入国管理官が判断します。パスポートに押されるスタンプの日数が3か月未満になることもあり得ます。復路の航空券やパスポートの残存期間など、基本的な条件は必ず整えたうえで入国してください。

現地からのリアル

ときどきご相談いただくのが、「3か月ごとに一度シンガポールやタイに出て、また入り直せば住み続けられますか」という質問です。この形はおすすめしていません。査証免除はあくまで短期の社会訪問に対して認められた枠であり、実態として住んでいる場合は目的と合わなくなります。入国審査は毎回行われるため、回数を重ねるほど滞在日数を短くされたり、質問が細かくなったりするリスクが上がります。

「1年以上住むつもりがある」と決まった時点で、正面から使えるパスに切り替えるほうが、結果的にご本人の負担もお子さんの学校選びも安定します。

3〜6か月:「まず試す」という現実的な選択肢

いきなり数年の滞在を決めるのではなく、まず数か月マレーシアで暮らしてから判断する——この進め方をとるご家庭が近年増えています。長期滞在の情報はネットにいくらでもありますが、実際に住んでみないと分からない部分が確実にあるからです。

短期で確かめられること

数か月の滞在で確かめられるのは、たとえば次のような「暮らしの手触り」です。年間を通じて蒸し暑い気候に体が慣れるか、スコールと渋滞が重なる時間帯の移動に耐えられるか、日常の食事が口に合うか、体調を崩したときにどの病院へ行くのか。どれも数字では表せませんが、長期滞在が続くかどうかを一番左右する部分です。

お子さんがいるご家庭では、これに学校の相性が加わります。学校見学だけでは分からない校風や英語のサポート体制を、短期留学やサマースクールで体験してから本決めされる方が多くいらっしゃいます。詳しくはマレーシアのサマースクールの記事母子留学の費用の記事もあわせてご覧ください。

住まいは「年契約しない」のがこの段階の要点

試住の期間に年契約のコンドミニアムを借りてしまうと、合わなかったときに解約の負担が生じます。この段階では、家具付きのサービスアパートメントや、月単位で借りられる物件を選ぶのが基本です。月あたりの単価は年契約より割高になりますが、保証金などの初期費用を負わずに済み、身軽に判断できます。

※3か月を超える滞在は査証免除の枠外になります。就学など、滞在の目的に合ったパスが必要になる点にご注意ください。どの制度が使えるかはご本人の年齢・目的・通う学校の種別によって変わります。

現地からのリアル

私たちの実感として、短期で一度住んでから本決めされたご家庭のほうが、その後の「学校の選び直し」「エリアの引っ越し」が明らかに少ないです。日本から資料だけで決めると、通学の所要時間や周辺の買い物環境といった、毎日効いてくる条件が抜け落ちやすいためだと感じています。

1年以上住むなら:3つの現実的なルート

1年を超えて暮らすと決めた場合、日本人のご家族やリモートワーカーが実際に検討することになるのは、主に次の3つのルートです(このほかにも投資や起業に紐づく制度はありますが、ご相談で選ばれるのはほとんどがこの3つです)。それぞれ「誰が申請するか」が違うのが分かりにくいポイントなので、そこを軸に整理します。

ルート①:子どもの学校を軸にする(学生パス+保護者のパス)

お子さんがマレーシアの学校に通うことを前提に、お子さんが学生パス(Student Pass)、保護者が付き添いのための長期社会訪問パスを取る形です。日本人のご家庭で最も多いパターンで、教育移住・母子留学と呼ばれるのがこのルートにあたります。申請の起点が学校になるため、学校が決まらないと手続きが始まらないのが特徴です。

このルートには、押さえておきたい制限が3つあります。第一に、保護者として認められるのは実の両親・法定後見人・養親・祖父母などの範囲とされています。第二に、付き添いの保護者はマレーシア国内での就労や事業が認められていません。第三に、語学学校や職業訓練機関の学生パスでは家族の帯同ができず、大学(高等教育)の場合は修士・博士課程の学生に限られるとされています。「親が語学学校に通いながら子どもを帯同する」という組み合わせは想定されていない、ということです。

なお学生パスは3歳以上のお子さんが対象とされており、就学前の年齢から利用できる制度です。ご相談では「小学校からでないと使えないのでは」と思われている方が多いのですが、幼稚園にあたる年齢から選択肢に入ります

※付き添える保護者の人数について、公式に上限が明示された情報は確認できていません。実務上はご夫婦そろって長期滞在される場合、配偶者の方はこのパスに頼らず、就労パスやDE Rantauなどご自身の在留資格を別に取る形を検討されるケースが多いです。人数や条件の運用は変わりうるため、志望校が決まった段階で学校と移民局にご確認ください。パスごとの詳細はマレーシア移住のビザの種類の記事で整理しています。

ルート②:働いて住む(Employment Pass)

現地の企業に雇用されて滞在する形です。重要なのは、Employment Pass(EP)は本人ではなく雇用主が申請するという点。つまり「ビザを取ってから仕事を探す」という順番は成立せず、就職が先になります。

そのうえで押さえておきたいのが、2026年6月1日から給与基準が引き上げられたことです。カテゴリーI=月給RM20,000以上、カテゴリーII=月給RM10,000〜19,999、カテゴリーIII=月給RM5,000〜9,999という区分に改定され、この基準は新規申請だけでなく更新申請にも適用されるとされています。日本語の情報にはまだ改定前の基準(カテゴリーI=RM10,000以上など)が残っていることがあるため、「マレーシアは月給RM3,000程度から就労パスが取れる」という古い前提で計画を立てないよう注意してください

なお業種によっては別の給与基準が設けられているとされ、改定前から滞在している方の取り扱いについても別途案内が示されるとされています。ご自身のケースが該当するかどうかは、雇用主または移民局の公式情報でご確認ください

ルート③:リモートワークで住む(DE Rantau Nomad Pass)

マレーシア国外の仕事をリモートで続けながら滞在するための制度です。もともとIT・デジタル分野の職種を対象に始まりましたが、2024年6月の発表で対象職種が拡大され、創業者・経営者・税務会計・法務・テクニカルライター・事業開発・広報といった職種も対象に含まれるようになりました。このとき、IT・デジタル分野以外の職種については年収USD60,000以上(月USD5,000)という所得要件が示されています。

職種の区分によって求められる収入水準が異なるため、ご自身がどの区分に当たるかは、申請前に公式情報でご確認ください。

※ビザ・パスの制度は変更が続く分野です。本記事の内容は2026年8月時点で公表されている情報にもとづく整理であり、申請を検討される時点の最新条件は、必ずマレーシア移民局・各制度の公式サイト、または専門家にご確認ください。ご家族の状況によってどのルートが現実的かは変わるため、私たちのご相談でも一緒に整理しています。

5年以上・腰を据えるなら:MM2Hの概要と3つの落とし穴

MM2H(Malaysia My Second Home)は、家族単位でまとまった年数を滞在するための長期滞在プログラムです。現行制度ではPlatinum/Gold/Silver/SEZ(経済特区枠)の4カテゴリーに分かれ、定期預金の預け入れと住宅の購入が要件の中心になっています。

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カテゴリーSilverGoldPlatinumSEZ枠
定期預金USD150,000USD500,000USD1,000,000USD65,000
(50歳以上はUSD32,000)
パスの有効期間5年15年20年10年
年齢の下限25歳25歳25歳21歳
(50歳以上の枠は50歳)
住宅購入の要件RM600,000以上RM1,000,000以上RM2,000,000以上ジョホール州
フォレストシティの物件
就労・事業△ 不可△ 不可◎ 可△ 不可
◎ できる△ できない
▲ MM2Hの4カテゴリー比較(2026年8月時点のMM2H公式公表情報より、ルシュエット作成)。このほかに申請料・参加費・更新料が別途かかります。カテゴリー別の手数料や滞在義務を含む詳細はビザの種類の記事にまとめています。

金額の大きさに目が行きがちですが、実際に相談を受けていて「知らなかった」と言われるのは、金額以外の3点です。

落とし穴①:Silver・Gold・SEZ枠では働けない

就労や事業が認められているのはPlatinumのみとされています。「MM2Hを取れば現地で働ける」という理解は誤りで、収入をマレーシア国内で得たい場合は、そもそもEmployment Passなど別のルートを検討することになります。

落とし穴②:住宅の購入義務と、購入後の売却制限

定期預金だけでなく、カテゴリーごとに定められた金額以上の住宅を購入することが要件に含まれます。さらに購入した物件には10年間の売却制限がかかるとされています(より高額な物件への買い替えは認められるとされています)。手元資金がそのまま不動産に固定されるため、資金計画では「預金+物件」で見る必要があります。

なおSEZ枠は、購入できる物件がジョホール州のフォレストシティに限定されている点に注意が必要です。定期預金の額は他のカテゴリーよりかなり抑えられている一方、住む場所がクアラルンプールではなくジョホール州になります。物件価格の下限はジョホール州の外国人向け不動産取得政策に従うとされており、金額そのものはMM2H側で一律に定められていません。

落とし穴③:50歳未満には年間の最低滞在日数がある

50歳未満のカテゴリーには年90日という最低滞在日数が設けられています。ここで重要なのが、この日数は主申請者と扶養家族の滞在で充当できるとされている点です。「母子がマレーシアで暮らし、父親は日本で働き続ける」という日本人家庭に多い形とは、実は相性のよい設計になっています。50歳以上のカテゴリーには滞在義務がありません。

※MM2Hは近年も条件の改定が続いている制度です。ここに記載した内容は2026年8月時点の公表情報であり、申請時点の条件は必ず公式サイトでご確認ください。

あなたのご家族はどの段階から始めるのが現実的か、一緒に整理します

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長期滞在のお金:期間が延びるほど「構造」が変わる

長期滞在の費用を考えるとき、「月いくら」だけで比べると判断を誤ります。滞在期間によって、そもそも費用の出方の構造が変わるからです。まずその違いを整理します。

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費用の出方1か月の滞在3か月の滞在1年以上の滞在
住まいの単価△ 高い
(ホテル・短期)
○ 中
(月極・家具付き)
◎ 低い
(年契約)
住まいの初期費用◎ ほぼ無し○ 少ない△ 家賃の約3.5か月分+印紙税
家具・家電◎ 不要◎ 不要○ 物件による
医療保険○ 旅行保険で対応○ 旅行保険または現地保険△ 現地の医療保険を検討
税金の扱い◎ 影響なし◎ 影響なし△ 居住者判定・日本側の手続き
◎ 負担が軽い○ ふつう△ 準備が必要
▲ 滞在期間別に見た費用構造の違い。短期は「単価は高いが身軽」、長期は「単価は下がるが初期費用と手続きが増える」という関係になります(ルシュエット作成)。

1年以上住む場合の月額の目安

クアラルンプールで、日本人のご家族に人気のあるエリア(モントキアラ周辺など)に住む場合の目安です。

費目目安(RM/月)日本円換算(RM1≒38.7円)
家賃(家族向けコンドミニアム・3ベッド)3,800〜5,800RM約15〜22万円
食費(ローカル中心+一部日本食)1,500〜3,000RM約6〜12万円
交通費(Grab中心・車なし想定)300〜800RM約1.2〜3.1万円
通信費(携帯+自宅ネット)150〜200RM約5,800〜7,700円
光熱費(電気・水道など)200〜350RM約7,700〜13,500円

※為替はRM1≒38.7円(2026年8月時点の参考レート/マレーシア中央銀行BNM)で換算した概算です。為替は変動します。家賃は間取り・築年・家具の有無・エリアで大きく変わり、1〜2ベッドの物件にすればここから下がります。お子さんがインター校に通う場合は、上表に学費が加わります。費目ごとの詳しい内訳はマレーシアの物価・生活費の記事、エリア別の家賃の違いはKLで住むエリアの選び方をご覧ください。

見落とされやすいのが「初期費用」

年契約でコンドミニアムを借りる場合、入居時に家賃の約3.5か月分+印紙税が必要になるのがクアラルンプール周辺の一般的な慣行です。内訳は保証金2か月分+前家賃1か月分+水道・電気のデポジット0.5か月分という組み立てが一般的で、このうち保証金とデポジットは退去時に返還される性質のもの、前家賃は初月の家賃そのものです。とはいえ契約時にまとめて出ていく金額であることに変わりはなく、月20万円の物件なら70万円前後を用意しておく計算になります。「月々は日本より安い」と考えていた方が、最初につまずきやすいポイントです。契約の実務はマレーシア移住の手続きの記事で詳しく解説しています。

現地からのリアル

費用のご相談で私たちがいつもお伝えしているのが、「毎月の生活費より、最初の3か月にいくら出ていくかで判断してください」ということです。渡航費・住まいの初期費用・家具家電・学校の入学金が同じ時期に重なるため、月額だけで見ていると資金繰りが苦しくなります。

逆に言えば、この山を越えたあとの月々の負担は想像より落ち着きます。お試し滞在から年契約へ切り替える段取りを最初に決めておくと、この山を分散できます。

暮らし方の実務:住まい・医療・お金

滞在が長くなると、旅行では発生しない実務が出てきます。長期滞在で必ず触れることになる3つを取り上げます。

住まい:3つの借り方を、滞在期間で使い分ける

マレーシアの住まいは、大きく①ホテルの長期滞在プラン ②サービスアパートメント・家具付きの月極 ③年契約のコンドミニアムの3段階で考えると整理しやすくなります。①→③の順に単価は下がり、代わりに初期費用と契約の拘束が増えます。

契約で最も注意していただきたいのが、マレーシアには日本の借地借家法にあたる法律がないという点です。保証金の額や返還の期限を定めた法令が存在しないため、契約書の文言がほぼすべてになります。保証金がいつ・どのような条件で返還されるのかは、必ず書面で確認してください。

医療と保険:長期になるほど「民間の備え」が前提になる

マレーシアの医療は、公立病院と私立病院の二層構造になっています。外国人が日常的に利用するのは主に私立病院で、設備やスタッフの対応には定評がある一方、費用は公立に比べて高くなります。短期の旅行であれば海外旅行保険で対応できますが、1年以上住むのであれば、現地で加入できる医療保険を含めて検討するのが現実的です

制度面でも、MM2Hではパスの更新時に医療保険の提出が求められるとされており、長期滞在と医療保険はセットで設計されていると考えたほうがよいでしょう。日本の公的医療保険(海外療養費)との関係を含めた整理は、税金・年金・保険の記事にまとめています。

お金:銀行口座は「どのパスを持っているか」で決まる

マレーシアで銀行口座を開けるかどうかは、滞在の長さそのものより、どの在留資格を持っているかに左右されます。観光目的の短期滞在では開設が難しく、長期滞在のパスを取得したあとに手続きするのが基本の流れです。必要書類やビザ別の可否はマレーシア銀行口座の開設方法の記事で解説しています。

お金まわりでもう一つ知っておきたいのが、2025年7月にマレーシアのSST(売上税・サービス税)の課税対象が拡大されたことです。賃貸・リース、建設、金融、私立医療、私立教育などのサービスが対象に加わりました。ただし個人が住む住居用の賃貸(コンドミニアムなど)はサービス税の対象外とされているため、住まいの家賃について心配する必要はありません。

一方で影響が出やすいのは学費と医療費のほうです。私立の就学前から中等教育までは、1人・1学年度あたりの対象料金の合計(授業料に入学金・施設費などを加えた1学年度の合計)がRM60,000を超える場合に6%が課税対象とされ、高等教育や語学センターについてはマレーシア国民以外が対象になるとされています。私立医療についても、マレーシア国民以外が課税対象です。日本人のご家庭は、この「マレーシア国民以外」に該当します。学校や病院の見積りが税込みか税別かで手取りの負担が変わるため、契約前に確認しておくと安心です。学費まわりの詳細はマレーシア移住の費用の記事で解説しています。

長期滞在で必ず当たる3つの「日数の壁」

マレーシアの長期滞在には、意識しておくべき日数の区切りが3つあります。この3つを知っているだけで、計画の精度が大きく上がります。

90日
(3か月)
査証免除で滞在できる上限/MM2H(50歳未満)の年間最低滞在日数 ビザなしで滞在できるのは最長3か月まで。一方でMM2Hの50歳未満のカテゴリーでは、逆に「年90日以上は滞在すること」が求められます。同じ90日でも、上限として効く場面と、下限として効く場面があります。
182日
マレーシアの税務上の居住者と判定される目安 マレーシアの所得税では、暦年で通算182日以上滞在した場合に居住者と判定されるのが基本です(このほかにも判定条件があります)。居住者かどうかで適用される税率が変わるため、滞在日数は年単位で把握しておく必要があります。
更新
時期
パスの有効期限と更新のタイミング 学生パスも就労パスもMM2Hも、有効期限があり更新が必要です。書類の準備や審査には時間がかかるため、期限の直前ではなく余裕をもって着手してください。更新のタイミングでお子さんの進級や契約更新が重なることも多く、逆算して動くのが安全です。

特に見落とされやすいのが182日です。「何月に渡航するか」で、その年に居住者と判定されるかどうかが変わります。年の後半に渡航すると、初年度は日数が足りずに非居住者扱いになる可能性があります。日本側の住民票・年金・健康保険の扱いとあわせて、税金・年金・保険の記事で整理していますので、渡航月を決める前に一度ご確認ください。

※税務の取り扱いはご家庭の収入の種類・資産の状況によって変わります。具体的な申告や節税の判断は、必ず税理士など専門家にご相談ください。

つまずきやすい5つのポイント

ご相談を受ける中で「もっと早く知りたかった」と言われることの多い5点を挙げます。

1. 「長期滞在ビザ」という名前の制度を探してしまう

冒頭でも触れたとおり、マレーシアの在留資格は目的別に分かれています。探すべきは「滞在の理由に合うパス」であり、期間から入ると情報が噛み合わなくなります。

2. 3か月ごとの出入国で住み続けようとする

短期の枠を繰り返し使う形は、滞在の実態と目的が合いません。1年以上住む予定が固まった時点で、正面から使えるパスへ切り替えるのが結果的に安全です。

3. 家賃の額だけで住まいを決める

初期費用が家賃の約3.5か月分かかること、通勤・通学の所要時間が毎日効いてくることを見落としがちです。「家賃×12+初期費用+移動時間」で比べてください

4. 医療保険を後回しにする

健康なうちは実感しづらい費目ですが、私立病院の医療費は日本の感覚とは異なります。渡航前に、滞在期間に見合った保険を確保しておくことをおすすめします。

5. 日本側の手続きを渡航後に考える

住民票(海外転出届)・年金・健康保険・銀行や証券口座の扱いは、渡航前に手を打っておかないと、あとから対応できないものが含まれます。渡航の3〜6か月前から着手するのが現実的です。

現地からのリアル

この5つのうち、実際に一番多くのご家庭が引っかかるのは3番目の「住まい」です。日本から物件情報を見ていると、家賃の安さで判断したくなるのですが、マレーシアは渋滞が激しく、片道の所要時間が朝夕で倍近く変わることも珍しくありません。学校まで一見近く見える物件でも、通学の時間帯に実際に走ってみると印象がまったく変わります。

私たちが下見に同行するときは、必ず「通学・通勤の時間帯に、その道を実際に通ってみる」ことをおすすめしています。地図上の距離より、この体感のほうが長期滞在の満足度を左右します。

長期滞在を決めるまでの進め方(5ステップ)

「何から手をつければいいのか」という方に向けて、実際のご相談の流れを5ステップで整理しました。

  1. 目的と期間を決める

    何のために住むのか(教育・仕事・リタイア後の生活)と、想定する年数を先に決めます。ここが決まればルートは自動的に絞られます。

  2. 短期で一度暮らしてみる

    査証免除の範囲で数週間〜3か月滞在し、気候・食事・移動・医療といった「住んでみないと分からない部分」を確かめます。

  3. ルート(パス)を選び、必要条件を確認する

    学校を軸にするのか、就労なのか、MM2Hなのか。それぞれ申請の起点と必要書類が違うため、最新条件を公式情報で確認します。

  4. 住まい・学校・保険を並行して手配する

    パスの申請と住まい探しは同時並行になります。初期費用がまとまって出ていく時期なので、資金計画とあわせて進めます。

  5. 渡航前後の手続きを片づける

    日本側の住民票・年金・保険と、現地の銀行口座・SIM・通学の段取り。順番を間違えると手戻りが出る部分なので、リスト化して進めます。

まずは、ご家族に合う滞在の形を整理しませんか?

期間・目的・お子さんの年齢から、どのルートが現実的かを現地スタッフが個別に整理します。
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よくある質問

マレーシアにビザなしで何日滞在できますか?

日本国籍の方は、観光や知人訪問といった社会訪問目的であれば査証(ビザ)なしで最長3か月まで滞在できます。ただし報酬を得る活動は対象外で、入国前にはマレーシア・デジタル・アライバル・カード(MDAC)の登録が必要です。滞在可能な日数は入国時に入国管理官が決めるため、必ず3か月が付与されるとは限りません。

3か月ごとに出入国を繰り返せば住み続けられますか?

おすすめできません。査証免除は社会訪問という目的に対して認められた短期滞在の枠で、実態として居住している場合は目的が合いません。入国審査は毎回行われ、滞在日数が短くされたり入国を認められなかったりする可能性があります。3か月を超えて住むなら、目的に合ったパス(在留資格)を取るのが前提です。

マレーシアで長期滞在するときの生活費は月いくらですか?

エリア・間取り・暮らし方で大きく変わります。クアラルンプールの日本人に人気のエリアで家族向けコンドミニアム(3ベッド)を借りる場合、家賃が月RM3,800〜5,800前後(約15〜22万円)、食費・交通費・通信費・光熱費を合わせて月RM2,150〜4,350前後(約8〜17万円)が一つの目安です。お子さんがインター校に通う場合は、これに学費が加わります。

マレーシアに長期滞在すると税金はどうなりますか?

マレーシアの所得税では、暦年で通算182日以上滞在すると税務上の居住者と判定されるのが基本です(このほかにも判定条件があります)。日本側は住民票を抜くかどうかで住民税・年金・健康保険の扱いが変わります。どちらの国でどう申告するかはご家庭の状況で変わるため、税理士など専門家への確認をおすすめします。

MM2Hは50歳以上でないと申請できませんか?

いいえ。MM2HのSilver・Gold・Platinumは25歳以上、経済特区(SEZ)枠は21歳以上が対象とされています。ただし50歳未満のカテゴリーには年間の最低滞在日数(年90日)が設けられており、この日数は主申請者と扶養家族の滞在で充当できるとされています。制度変更が続いている分野のため、申請を検討する時点の条件を必ず公式情報でご確認ください。

いきなり移住せず、数か月だけ試すことはできますか?

できます。査証免除の範囲(最長3か月)であれば、家具付きのサービスアパートメントなどに滞在して暮らしを試すことが可能です。年契約のコンドミニアムと違って保証金などの初期費用を負わずに済む一方、月あたりの単価は割高になります。お子さんがいるご家庭は、短期留学やサマースクールで学校を体験してから本決めされる方が多いです。

主な参照元(2026年8月時点)

  • マレーシア:観光芸術文化省 MM2Hプログラム公式サイト(カテゴリー一覧/Silver・Gold・Platinum・SEZ の要件)
  • マレーシア:移民局 IMI(マレーシア・デジタル・アライバル・カード/学生パス/長期社会訪問パス)
  • マレーシア:移民局 ESD「新しい外国人雇用方針(2026年6月1日施行)」および同FAQ(2026年1月14日 内務省発表)
  • マレーシア:デジタル省(DE Rantau Nomad Pass の対象職種拡大に関する発表・2024年6月7日)
  • マレーシア:Income Tax Act 1967 Section 7(居住者判定・暦年182日)/LHDN
  • マレーシア:財務省 MOF「SST適用範囲の拡大」(2025年7月1日)/関税局 RMCD 拡大に関するFAQ(住居用賃貸の非課税・教育/私立医療の課税範囲)
  • 日本:外務省 海外安全ホームページ「マレーシア 安全対策基礎データ」(査証免除・社会訪問3か月以内、宗教/調査研究/撮影目的は査証が必要)
  • 為替:Bank Negara Malaysia 公表レート(2026年8月時点、1リンギット=約38.7円)
本記事に記載した費用・制度・学校情報は、2026年8月時点に公開されている情報にもとづく目安です。為替はRM1≒38.7円で換算しています。制度や料金は改定されることがあるため、お申し込みの前に各公式サイト、または当社までご確認ください。