先に結論をお伝えします。マレーシアからのリモートワークで比較的クリアしやすいのは「時差」と「通信」です。日本との時差はわずか1時間で、しかもサマータイムがないため一年中変わりません。通信も都市部なら光回線が広く使えます。一方でつまずきやすいのは「どの滞在資格で働くのか」と「税金」のほうです。この記事では、この3条件+滞在資格を順番に整理します。
結論:楽なのは時差と通信、詰まるのは資格と税
マレーシアからのリモートワークを検討する方が事前に心配されるのは、たいてい「ネットは大丈夫か」「時差で会議に出られるか」の2点です。ところが実際に難しいのは、そこではありません。時差と通信は、条件を確認すればほぼ解決する項目です。反対に、「どの滞在資格でその仕事をするのか」と「日本とマレーシアのどちらに税金を納めるのか」は、あとから直しにくいため、渡航前に決めておく必要があります。
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| 検討項目 | 難易度 | 決めるタイミング | あとから変更 |
|---|---|---|---|
| 時差 | ◎ ほぼ問題なし | 確認するだけ | — |
| 通信環境 | ○ 住まい選びで解決 | 物件を決めるとき | △ 引越しが必要 |
| 税金 | △ 専門家の確認が必須 | 渡航前 | △ 遡って直せない |
| 滞在資格 | △ 要件が変わりやすい | 渡航前 | △ 観光からの切替不可 |
時差1時間|日本の勤務時間にそのまま乗れる
マレーシアの標準時はUTC+8、日本はUTC+9です。つまり日本のほうが1時間進んでいます。クアラルンプールが朝8時のとき、東京は朝9時。日本の始業に合わせるなら、現地では朝8時に机に向かえばよい計算です。
そしてもう一つ、見落とされがちですが実務上とても大きいのがマレーシアも日本もサマータイム(夏時間)を採用していないという点です。欧米の一部地域では年2回、時差が1時間ずれます。定例会議の時刻が春と秋に動くため、カレンダー管理が地味に煩雑になります。マレーシアと日本の間では、この「時差が動く」問題自体が起きません。
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| 相手先 | 日本との時差 | マレーシアからの働きやすさ |
|---|---|---|
| 日本 | 1時間(日本が先行・通年固定) | 日本の勤務時間にそのまま重なる |
| シンガポール・中国 | 同時刻(UTC+8) | 時差なし |
| ロンドン | 7〜8時間(夏時間で変動) | 夕方以降に会議が寄る |
| 米国 東部 | 12〜13時間(夏時間で変動) | 早朝か深夜に限られる |
| 米国 西部 | 15〜16時間(夏時間で変動) | 早朝か深夜に限られる |
※マレーシアからの時差。マレーシアはサマータイムを採用していないため、欧米側の夏時間の切り替えによって差が1時間動きます。
「1時間差」というのは、数字以上に生活の自由度を左右します。日本の朝会に出てから子どもを学校へ送り出せますし、日本の終業時刻が現地の夕方なので、平日の夜がふつうに家族の時間として残ります。欧米への移住だと、これが「日本と話す=深夜」になり、生活リズムそのものを組み替えることになります。
マレーシアが教育移住とリモートワークの両立先として選ばれやすいのは、この時差の小ささが大きな理由です。日本の勤務先を辞めずに家族で移るという選択肢が、現実的に取れるからです。
通信環境|光回線・SIM・コワーキングの実際の料金
結論として、クアラルンプールなど都市部の通信環境は、日本の仕事をリモートでこなすうえで大きな支障になりにくい水準です。ただし「速い回線が引ける物件かどうか」は建物ごとに違うため、住まい選びの段階で確認しておくのが安全です。
固定回線(光):月額RM69〜RM319
マレーシア最大手の通信事業者TM(Telekom Malaysia)が提供する光回線サービス「Unifi」では、公式サイト上で以下のプランが案内されています(2026年8月時点)。
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| プラン(下り/上り) | 月額 | 日本円の目安 |
|---|---|---|
| 30Mbps / 10Mbps | RM69 | 約2,700円 |
| 100Mbps / 50Mbps | RM89 | 約3,400円 |
| 300Mbps / 50Mbps | RM129 | 約5,000円 |
| 500Mbps / 100Mbps | RM149 | 約5,800円 |
| 1Gbps / 500Mbps | RM249 | 約9,600円 |
| 2Gbps / 1Gbps | RM319 | 約12,300円 |
※TM Unifi公式サイト掲載の月額(2026年8月時点、プロモーション価格を含む・SST別)。円換算は1リンギット=約38.7円で計算した概算です。提供可否・実効速度は建物や地域によって異なります。
プリペイドSIM:月額RM25〜RM55が中心帯
携帯通信はプリペイド(前払い)方式が主流です。マレーシアの通信規制当局MCMCの統計(2026年第1四半期)でも、携帯契約はプリペイドが約3,225万件、ポストペイド(後払い)が約1,687万件と、プリペイドが約2倍を占めています。契約に現地の銀行口座や長期の在留資格を求められにくいため、渡航直後でもすぐに使い始められるのが利点です。
主要各社の公式サイトでは、Hotlink(Maxis系)が月額RM30〜RM55、U Mobileが月額RM25〜RM50、Yesが月額RM20〜RM30程度のプランを案内しています(2026年8月時点)。おおむね月額RM25〜55(約1,000〜2,100円)が実用的な価格帯です。固定回線が不調なときのテザリング用に、SIMを1枚持っておく使い方が現実的です。
コワーキングスペース:月額RM400〜RM700が中心帯
自宅以外の作業場所を確保したい場合、クアラルンプール市内にはコワーキングスペースが多数あります。ここでいう「ホットデスク」とは、席を固定せず空いている席を使う、いちばん手軽な契約形態のことです。
大手のCommon Groundは公式サイトでホットデスクを1席あたり月額RM399〜と案内しており、同じく大手のWORQは拠点によって月額RM400〜RM700としています(2026年8月時点)。目安として月額RM400〜700(約1.5万〜2.7万円)を見ておけば、選択肢は十分にあります。
ただし、毎日終日こもるのでなければ、月極契約より1日単位のデイパスのほうが安く収まることがあります。お子さんの学校の時間帯だけ集中したい、週に数日だけ自宅を離れたい、という使い方であればこちらが現実的です。各社の公式サイトに掲載されているデイパスは、Sandboxが1日RM28、Komune Co-workingが1日RM39、Co-labsが1日RM39(7日券は1日あたりRM27・30日券は1日あたりRM20)、WORQが1日RM40〜RM70、Common GroundがRM50〜となっています(2026年8月時点)。週2〜3日の利用なら、月額プランより安くなる計算です。
通信でご相談が多いのは、速度そのものよりも「その物件で希望の回線が契約できるか」です。コンドミニアムによって導入されている回線事業者が違い、入居後に「引きたかった回線が来ていなかった」と分かることがあります。内見のときに、建物にどの事業者の回線が入っているかを確認しておくと安心です。
また、オンライン会議が業務の中心になる方ほど、固定回線+SIMの二重化をおすすめしています。月にRM30ほどの追加で、回線が落ちたときの保険になります。
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税金|「マレーシアは税ゼロ」の正しい意味
マレーシアでのリモートワークにかかる税金は、暦年で182日以上滞在して「居住者」と判定された場合に、国外源泉所得の免除措置(2036年12月31日まで延長)が適用されるという構造です。無条件の非課税ではなく、確定申告が必要で、日本側の居住者・非居住者判定もクリアする必要があります。「マレーシアに住めば税金がゼロになる」という説明は正確ではありません。条件を外れると、むしろ日本より高い税率になることもあります。
①「居住者かどうか」は暦年の滞在日数で決まる
マレーシアの所得税法(Income Tax Act 1967)Section 7では、居住者判定の基準の一つとして暦年中の滞在が通算182日以上であることが定められています。日本語の記事では「183日ルール」と書かれていることがありますが、マレーシアの条文上は182日以上です。判定基準は日数だけでなく、前後の年とつなげて判定する規定など複数あり、滞在の切り方によって結論が変わります。
② 非居住者になると一律30%・控除なし
マレーシア内国歳入庁(LHDN)は、非居住者の個人には一律30%の税率が適用され、各種の控除(reliefs)は受けられないと公表しています。居住者であれば所得に応じた累進税率(最低区分は0%)と控除が使えるため、「滞在日数が足りない状態」がいちばん不利になり得るという構造です。「短く区切って滞在すれば税金がかからない」という発想は、この点で危険です。
③ 国外源泉所得の免除は「無条件」でも「申告不要」でもない
マレーシアの居住者個人が国外を源泉とする所得をマレーシアで受け取った場合、所得税が免除される措置があります。日本の会社からの給与など国外源泉の所得が中心になるリモートワーカーにとって、ここが「マレーシアは税が軽い」と言われる根拠です。この免除は当初2026年12月31日までの措置でしたが、官報 P.U.(A) 451/2024(2024年12月24日公布)により、2036年12月31日まで延長されています。2026年度予算の財務省資料でも、現行制度として同じ期間が示されています。
ただし「無条件で非課税」ではありません。免除の根拠となる官報には、次の条件が定められています。
- その所得が、発生した国で所得税に相当する課税を受けていること(免除の前提条件です)
- マレーシア国内のパートナーシップ事業から生じた所得は対象外であること
- 免除の対象であっても、確定申告書の提出や証憑の保存義務は免除されないこと(官報に明記されています)
つまり「申告しなくてよい」ではなく「申告したうえで免除される」という制度です。適用の可否はご自身の所得の種類と受け取り方によって変わります。自己判断はせず、日本の所轄税務署・国際税務にくわしい税理士、またはマレーシアの公認税務代理人(Tax Agent)へ直接ご確認ください(当社は税務の個別具体的な判断は行っておりません)。
④ 日本側は「滞在日数」ではなく「生活の本拠」で決まる
国税庁は、海外の支店などへ1年以上の予定で転勤・出向した人は、出国の時から非居住者として取り扱うとしています。ここで見落とされやすいのが、この取扱いが「職業を伴う出国」を前提にしていることです。所得税法施行令第15条も、国内に住所を有しないと推定する要件を「国外において継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること」と定めています。
そのうえで、そもそも税法上の「住所」とは生活の本拠を指し、国税庁は住居・職業・資産の所在・親族の居住状況・国籍などの客観的事実で判定するものであって、滞在日数のみで判断するものではないと説明しています。つまり「1年以上いれば自動的に非居住者」ではありません。
ここは教育移住の方にとって特に重要です。判定要素に「親族の居住状況」が明示的に含まれているため、お母さんとお子さんだけが渡航し、お父さんが日本に残って生計を支える——といった形は、家族全員で移る場合とは判定の材料が変わってきます。このパターンについて国税庁に明文の記載は確認できませんでしたが、だからこそ自己判断ではなく個別確認が必要な領域です。渡航スケジュールを決める前に、税務署または税理士にご家族の形をそのまま伝えてご確認ください。
非居住者と扱われる場合、日本の所得税は国内源泉所得だけが課税対象となり、住民税は毎年1月1日時点で国内に住所があるかどうかで決まります。年金は国民年金の任意加入を選べる一方で、日本とマレーシアの間には社会保障協定が結ばれていないため、年金加入期間の通算などの仕組みは使えません。日本とマレーシアの間には租税条約(1999年発効、2010年に改正議定書が発効)があり、二重課税の調整の枠組み自体は存在します。
※税務の取り扱いは、雇用契約の形(会社員かフリーランスか)・生活の実態・所得の源泉によって結論が変わります。本記事は制度の概要をまとめたもので、個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。日本側の手続きはマレーシア移住の税金と年金で詳しく整理しています。
⑤ 会社員の方は、勤務先の合意を先に取る
制度の話とは別に、実務上の前提がひとつあります。日本の会社に雇用されたまま海外から働く場合、勤務先が「海外からのリモート勤務」を認めているかを先に確認してください。就業規則で勤務地が定められていることは珍しくなく、社会保険や給与の支払い方法についても会社側での整理が必要になります。
会社に相談する際、担当部署が検討することになるのが「恒久的施設(PE:Permanent Establishment)」という論点です。これは社員が海外で働くことによって、会社自体がその国に事業の拠点を持つとみなされ、現地で課税されるのではないかという問題で、日本・マレーシア租税条約でも第5条で恒久的施設が定義されています。なお、OECDが2025年に改訂したモデル租税条約のコメンタリーでは、個人がその企業のために働く総労働時間のうち自宅等での勤務が50%未満であれば、原則としてその場所は企業の事業所とはみなされないという考え方が示されています。ただしマレーシアはこの割合基準について留保を付しており、最終的な判断は会社の法務・税務部門と専門家によることになります。個人の判断だけで渡航を決めず、まずは勤務先にご相談ください。
滞在資格|観光ビザのままでは働けない
もっとも注意が必要なのがここです。「日本の会社の仕事だから、観光で滞在しながらやればいい」という考え方は通用しません。マレーシアの滞在許可は目的ごとに与えられるもので、リモートワークを想定した制度が別に用意されています。
DE Rantau Nomad Pass(デジタルノマド向け)
マレーシアのデジタル経済庁MDECが運営する、海外の雇用主・クライアントの仕事をマレーシアから行う人向けの滞在許可です。公式FAQ(v9・2026年8月6日付)で公表されている主な条件は次のとおりです。
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| 項目 | 内容(2026年8月時点) |
|---|---|
| 年収要件 | IT・デジタル系:年USD24,000以上/非IT系:年USD60,000以上 |
| 滞在期間 | 3〜12か月+12か月の更新(通算で最大24か月) |
| 申請料(MDEC分) | 本人 RM1,080/同伴者1名につき RM540(いずれもSST込み) |
| 審査期間 | おおむね6〜8週間 |
| 家族の帯同 | 配偶者・18歳未満の子・申請者の親などが対象。配偶者の就労は不可 |
| 対象地域 | マレーシア半島部およびラブアン連邦直轄領(サバ州・サラワク州は対象外) |
| 申請方法 | MDEC公式サイトからのオンライン申請のみ |
※MDEC公式FAQ(v9)に基づく2026年8月時点の内容です。年収要件・費用・運用は改定が続いているため、申請前に必ずMDEC公式サイトで最新版をご確認ください。
ここで壁になりやすいのが非IT系の年収要件USD60,000です。日本の一般的な会社員・フリーランスにとっては高い水準で、ここで断念される方が少なくありません。一方でIT・デジタル系はUSD24,000と、要件が大きく下がります。この「IT・デジタル系」には、エンジニアやデータ分析だけでなく、デジタルマーケティング・デジタルクリエイティブコンテンツ・コンテンツ開発といった職種も公式FAQの対象一覧に含まれています。ご自身の職務内容がどちらの区分に当たるかは、申請を諦める前に一度確認する価値があります。
【重要】保護者ビザ(ガーディアンビザ)でのリモートワークは、認められていないものとして考えるべき
結論を先にお伝えします。子どもの学生パスに付き添う保護者パスでの就労は、マレーシア移民局が公式に禁止しています。日本の会社のリモートワークであっても「問題ない」と自己判断で進めるべきではありません。
教育移住では、お子さんが学生パス(Student Pass)で滞在し、保護者が付き添い用のパスで帯同する形が多くなります。このパスの正式名称はLong Term Social Visit Pass(現地表記では付き添い者=Pengiring)で、日本語では「保護者ビザ」「ガーディアンビザ」と呼ばれることもあります。
マレーシア移民局は公式サイトで、この付き添い者について「就労および事業を行うことは認められない(Guardians are NOT ALLOWED to work, conduct business…)」と明記しています。学生パスの帯同家族(Dependent)についても、同じく就労は認められていません。
そのうえで正直にお伝えすると、「日本の会社に籍を置いたまま、マレーシアからリモートで働く行為」がこの禁止に含まれるかどうかを直接定めた公式の記載は、2026年8月時点で確認できませんでした。移民局の禁止文言は「work(就労)」とあるだけで、雇用主の所在地や給与の支払元では区別していません。
ただし「明文がないから大丈夫」と考えるのは危険です。マレーシアは、国外の雇用主のためにリモートで働く人向けにDE Rantau Nomad Passという別のパスをわざわざ用意しています。同パスの公式FAQも、これを「マレーシアで働く(work in Malaysia)」ための許可と位置づけ、雇用主がマレーシアで登記されていないことを要件としています。つまり制度の建て付けとしては、国外雇用主のためのリモートワークも「マレーシアでの就労」として扱われていると読むのが自然です。
パスの条件に違反した場合、マレーシアの入国管理規則(Immigration Regulations 1963 第39条(b))では罰金または禁錮が定められています。金額だけを見れば軽く見えますが、本当のリスクはそこではありません。移民局の公式情報では、違反者は「prohibited immigrant(入国が禁止される者)」に該当し、退去強制の対象となるとされています。さらに、パスが取り消されたあとも滞在を続けた場合には、より重い罰則(Immigration Act 1959/63 第6条(3)・第15条(4))の対象になります。
つまり親御さんの働き方ひとつで、お子さんの就学を含む滞在計画そのものが止まりかねないということです。ここは「グレーだから大丈夫だろう」で進めてよい領域ではありません。
収入を得るご予定がある方は、渡航前に必ず移民局または現地の認可を受けた専門家に、ご自身の勤務形態(雇用契約か業務委託か、給与の支払元はどこか)を具体的に伝えて確認してください。
では、親が働きながら子どもを通わせるにはどうするか
「保護者パスで働けないなら、どうすればいいのか」——ここで手が止まる方が多いところです。制度上、選択肢は次のように整理できます。
- 親自身がDE Rantau Nomad Passを取得する:この場合、お子さんは同伴家族として帯同できますが、就学するにはお子さん自身が学校経由で学生パスを別途取得する必要があるとMDEC公式FAQに明記されています(ホームスクーリングの場合は不要とされています)。なお、学生パスの申請は学校が窓口となるため、保護者の滞在資格によって受け入れの可否や手続きが変わることがあります。志望校に直接ご確認ください。
- 親が現地で就労する:マレーシアの企業に雇用され、Employment Passを取得する形です。
- 働く側と付き添う側を分ける:一方の親が日本で働き、もう一方が保護者パスで付き添う形です。
どれが現実的かは、ご家庭の収入源・職種・お子さんの年齢で変わります。ビザの種類ごとの違いはマレーシア移住のビザの種類、親の働き方の比較はマレーシア移住で親の仕事はどうするで詳しく整理しています。
1年目にかかる費用の目安
時差も通信も問題ないとして、実際いくらかかるのか。DE Rantau Nomad Passを取得し、親御さん単体がマレーシアで働く環境を整えるための費用を1年分積み上げると次のようになります。お子さんの学費・生活費・家賃は含みません。
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| 項目 | 金額の目安 | 日本円の目安 |
|---|---|---|
| DE Rantau 申請料(MDEC・本人) | RM1,080(初回のみ) | 約41,800円 |
| 移民局のパス費用 | RM360(1年分) | 約13,900円 |
| 光回線(RM129プランの場合) | RM1,548(年間) | 約59,900円 |
| プリペイドSIM(RM40の場合) | RM480(年間) | 約18,600円 |
| コワーキング(RM450の場合) | RM5,400(年間) | 約209,000円 |
| 保証金(MDEC・日本国籍/満了時に返金) | RM1,000(初回のみ) | 約38,700円 |
| 初年度の支出合計(コワーキングを使う場合) | 約RM9,868 | 約382,000円 |
| 初年度の支出合計(自宅のみで働く場合) | 約RM4,468 | 約173,000円 |
※上表は「単身1名」で試算した、働くための費用のみです。各社・各機関の公式サイト掲載額をもとにした概算(2026年8月時点、1リンギット=約38.7円で換算)。保証金はMDECがスポンサーとなる場合の日本国籍の方の金額で、パス満了時に返金されます。このほか同伴のご家族1名につきRM540の申請料、海外旅行保険料などが別途かかります。お子さんを帯同する場合は、これらに加えて学生パスの費用と学校の学費が必要です。渡航費・住居のデポジット・家賃・生活費も含んでいません。
見落とされやすい5つのポイント
制度の要件そのものより、その周辺で計画が止まることのほうが多くあります。公式に明記されているもののうち、事前に知っておきたい5点です。
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失敗しにくい進め方(4ステップ)
ご相談を受けていて感じるのは、いきなり長期のビザ取得から入ると、判断材料が足りないまま大きな決断をすることになるという点です。通信も時差も、暮らしてみないと自分の働き方に合うかは分かりません。次の順番をおすすめしています。
働き方の条件を洗い出す
雇用契約か業務委託か、会議は何時からか、通信が落ちたときに困る業務はあるか。ここが決まらないと、必要な滞在資格も回線も決まりません。
短期滞在で「実際に働いてみる」
数週間〜数か月の滞在で、現地の回線・作業環境・生活リズムを実際に試します。ここで合わないと分かれば、大きな損失なく引き返せます。
税務と滞在資格を専門家に確認する
日本側の非居住者判定とマレーシア側の居住者判定は、滞在日数の切り方で結論が変わります。渡航スケジュールを固める前に確認します。
住まい・回線・滞在資格を手配する
回線が引ける物件かを確認したうえで住まいを決め、必要な滞在資格を申請します。審査に数か月かかる前提で逆算します。
お子さんの学校を軸に考えている方の場合、ステップ2を「親子短期留学」として実行される方が多いです。お子さんが現地の学校を体験している間に、親御さんは実際に日本の仕事を回してみる。時差1時間だからこそ成立する試し方で、「行けるかどうか」がいちばん確実に分かります。
「夫が日本に残り、私と子どもだけで渡航する場合はどう考えればいいのか」「自分の職種はIT・デジタル系として申請できるのか」——こうした点は、ご家庭ごとに答えが変わります。一般論では決まらない部分こそ、現地の最新の実務に照らして整理する価値があります。
まずは「試してみる」から始めませんか?
短期滞在で働き方を試し、そのうえで長期を判断する——という進め方をご案内しています。
お子さんの学校見学とあわせたご相談も可能です。
よくある質問
マレーシアと日本の時差は何時間ですか?サマータイムはありますか?
日本のほうが1時間進んでいます。クアラルンプールが12時のとき、東京は13時です。マレーシアも日本もサマータイム(夏時間)を採用していないため、この1時間差は一年を通して変わりません。日本の朝礼や定例会議にそのまま参加できる時差です。
マレーシアのインターネットは日本の仕事に耐えられますか?
クアラルンプールなど都市部では光回線が広く利用でき、通信大手TMのUnifiでは月額RM69の30Mbpsプランから月額RM319の2Gbpsプランまで公式に提供されています(2026年8月時点)。プリペイドSIMも主要各社が月額RM25〜55程度で提供しており、固定回線が止まったときのバックアップとして併用する方が多い環境です。ただし建物の設備や契約可否は物件ごとに異なるため、住まいを決める前に回線の種類を確認することをおすすめします。
マレーシアに住めば税金はゼロになりますか?
「ゼロ」と言い切れるものではありません。マレーシアの税務上の居住者になるかどうかは暦年の滞在日数(Income Tax Act 1967 Section 7では182日以上)などで判定され、非居住者と扱われる場合は一律30%・各種控除なしで課税されます。居住者が国外を源泉とする所得を受け取った場合には所得税の免除措置があり、官報P.U.(A) 451/2024により2036年12月31日まで延長されていますが、これは無条件の非課税ではありません。発生した国で所得税に相当する課税を受けていることが条件とされ、免除の対象であっても確定申告書の提出と証憑の保存は必要です。ご自身の税額は、日本側の居住者・非居住者判定とあわせて必ず税務署や税理士など専門家にご確認ください。
子どもの学生パスに付き添う保護者パスのまま、日本の仕事をリモートで続けられますか?
マレーシア移民局は公式サイトで、学校段階の学生パスに付き添う保護者(Long Term Social Visit Pass/現地表記Pengiring)について、就労および事業を行うことは認められないと明記しています。ただし「日本の会社に籍を置いたままマレーシアからリモートで働く行為」がこの禁止に含まれるかを直接定めた公式の記載は、2026年8月時点では確認できていません。一方でマレーシアは、国外の雇用主のためにリモートで働く人向けにDE Rantau Nomad Passという別のパスを用意しているため、明文がないことをもって問題ないと判断するのは危険です。収入を得るご予定がある方は、渡航前に必ず移民局または現地の認可を受けた専門家に、ご自身の勤務形態を具体的に伝えて確認してください。
DE Rantau Nomad Passの年収要件はいくらですか?
MDECの公式FAQ(v9・2026年8月6日付)では、IT・デジタル系の職種が年収USD24,000以上、非IT系の職種が年収USD60,000以上とされています。申請料はMDEC分が本人RM1,080・同伴者1名あたりRM540(いずれもSST込み)で、2025年5月1日以降の申請は却下・取下げを含めて返金されません。要件は改定が続いているため、申請前にMDEC公式サイトで最新版のFAQをご確認ください。
主な参照元(2026年8月時点)
- マレーシア:MDEC「DE Rantau Pass FAQ(v9・2026年8月6日付)」(年収要件USD24,000/USD60,000・申請料RM1,080およびRM540・パス期間3〜12か月+更新12か月・審査6〜8週間・帯同家族の範囲と配偶者の就労不可・対象地域は半島部およびラブアン・銀行口座・観光パスからの切替不可・2026年8月1日以降の異議申立廃止・2025年5月1日以降の申請料返金不可・パスポート残存14か月超・保証金)
- マレーシア:移民局 IMI「Student Pass」(付き添い者=Long Term Social Visit Pass/Pengiring の対象範囲・必要書類・「Guardians are NOT ALLOWED to work, conduct business」の明記/帯同家族〈Dependent〉の就労禁止)
- マレーシア:移民局 IMI「Enforcement」(Immigration Regulations 1963 第39条(b)=パス条件違反の罰則/Immigration Act 1959/63 第6条(3)・第15条(4)=パス失効後の残留に対する罰則)
- マレーシア:Income Tax Act 1967 Section 7 および LHDN(内国歳入庁)居住者判定ページ(暦年182日以上の居住者判定)
- マレーシア:LHDN「個人所得税の概要」(非居住者は一律30%・控除の適用なし/国外源泉でマレーシアで受領した所得の免税)
- マレーシア:官報 P.U.(A) 234/2022「Income Tax (Exemption) (No.5) Order 2022」(2022年7月19日公布=免除期間・源泉国での課税を条件とすること・マレーシア国内パートナーシップ事業由来の所得の除外・申告書提出義務は免除されない旨)および P.U.(A) 451/2024(2024年12月24日公布=免除期間を2036年12月31日まで延長)
- マレーシア:財務省 Budget 2026 税制措置資料(個人の国外源泉所得の免除期間を2022年1月1日〜2036年12月31日として明記)
- マレーシア:MCMC(通信・マルチメディア委員会)「Communications & Multimedia Facts and Figures 1Q 2026」(プリペイド3,225.2万件・ポストペイド1,687.0万件)
- マレーシア:TM Unifi 公式サイト(光回線の月額RM69〜RM319)/Hotlink・U Mobile・Yes 各公式サイト(プリペイドの月額プラン)
- マレーシア:Common Ground 公式サイト(ホットデスク RM399〜/デイパス RM50〜)/WORQ 公式サイト(ホットデスク 拠点別 RM400〜RM700/デイパス RM40・RM60・RM70)/Komune Co-working 公式サイト(デイパス RM39)/Co-labs Coworking 公式サイト(1日 RM39・7日券 RM195・30日券 RM600)/Sandbox 公式サイト(デイパス RM28)
- 日本:国税庁 タックスアンサーNo.2517・No.1920(海外の支店等へ1年以上の予定で転勤・出向した場合の非居住者としての取扱い)/No.2875(住所=生活の本拠・住所の推定)/No.2012(住居・職業・資産の所在・親族の居住状況等の客観的事実で判定し、滞在日数のみでは判断しない)/No.2010(非居住者の課税範囲)
- 日本:所得税法第2条第1項第3号・第5号(居住者/非居住者の定義)、所得税法施行令第15条第1項第1号(国外に継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること)、所得税基本通達2-1(住所=生活の本拠・客観的事実による判定)
- 日本:総務省「個人住民税」(賦課期日=1月1日時点の住所により課税)
- 日本:日本年金機構(海外居住者の国民年金任意加入/社会保障協定の発効国一覧=マレーシアは含まれない)
- 日本:財務省「租税条約等の一覧」および日マレーシア租税協定本文 第5条(恒久的施設の定義。条約は1999年発効/2010年 改正議定書発効)
- 国際:OECD モデル租税条約 2025年改訂(第5条コメンタリー para 44.8=12か月間の総労働時間の50%未満の在宅勤務は原則として企業の事業所とみなさない/同 Positions on Article 5 におけるマレーシアの留保)
- 時差:IANA タイムゾーンデータベース(Asia/Kuala_Lumpur=UTC+8・夏時間なし/Asia/Tokyo=UTC+9・夏時間なし)
- 為替:1リンギット=約38.7円で換算(2026年8月時点)