結論から言うと、マレーシア教育移住での親の働き方は4つのパターンに絞られます。①父親が日本に残る単身赴任型、②日本や海外の仕事をリモートで続ける帯同リモート型、③マレーシアの会社に雇われる現地就労型、④マレーシアで会社をつくる現地起業型。なぜ4つに絞られるのかというと、お子さんの学生パスに付き添う保護者は、マレーシアで働くことが認められていないからです。つまり「収入をどこから得るか」を先に決めないと、ビザも学校も家計も決まりません。この記事では4パターンを、必要なパス・日本の社会保険の扱い・お金の出方の3点で比べていきます。
親の働き方は4パターンに絞られる(比較表)
親の働き方を考えるとき、最初に押さえたいのは「誰が、どこの国から収入を得るか」という一点です。ここが決まると、必要なパス(滞在資格)も、日本の社会保険の扱いも、家計の形も自動的に決まっていきます。逆にここが曖昧なまま学校だけ先に決めてしまうと、あとで学費の支払い方や滞在資格の設計をやり直すことになります。
まずは4パターンを俯瞰してください。ご家庭の状況によって現実的な選択肢は1〜2つに絞られるはずです。
← 横にスクロールできます →
| 比較項目 | ①単身赴任型 | ②帯同リモート型 | ③現地就労型 | ④現地起業型 |
|---|---|---|---|---|
| 収入の出どころ | 日本の勤務先 | 海外(日本)の雇用主・取引先 | マレーシアの雇用主 | 自分のマレーシア法人 |
| 親が使う主なパス | 母=保護者パス 父=日本在住のまま | DE Rantau Nomad Pass | Employment Pass(EP) | 法人設立+EP |
| マレーシアで働けるか | △ 母は不可 | ○ 海外の仕事のみ | ◎ 可 | ◎ 可 |
| 日本の健康保険・厚生年金 | ◎ 在籍を続けるなら継続 | ○ 会社の判断次第 | △ 退職=切り替え | △ 退職=切り替え |
| 家族が一緒に暮らせるか | △ 父とは別居 | ◎ 同居できる | ◎ 同居できる | ◎ 同居できる |
| 始めるハードル | ◎ 低い | ○ 年収要件あり | △ 求人・給与要件 | △ 資金と手続き |
| 向いているご家庭 | 日本の職を離れられない | 職種がリモート可 | 現地転職・駐在の打診がある | 事業を移す・長期で腰を据える |
ご相談のなかで一番多いのは、「学校は決まりそうだけれど、夫の仕事だけ結論が出ない」という状態でご連絡をいただくケースです。逆に言えば、ここが決まらないまま止まっているご家庭がとても多いということでもあります。
そして意外に思われるのが、この4パターンは「どれが正解」という話ではなく、期間で組み替えられるという点です。最初の1〜2年は単身赴任型で始めて、お子さんの学校が落ち着いてから帯同の形に切り替えるご家庭もあります。最初から一生分を決めなくてよい、というのは知っておいていただきたいことです。
前提:子どもに付き添う親は、マレーシアで働けない
4パターンの前に、必ず押さえておきたい制度上の前提があります。お子さんが学生パスで通学し、親が付き添うために取得する保護者用のソーシャル・ビジット・パスでは、マレーシア国内で就労できません。マレーシア入国管理局は、このパスの保有者について就労・事業・政治活動・講演などを行ってはならないと明記しています。
ここでいう「パス」とは、入国後にマレーシアに滞在する資格そのものを指します(ビザは入国のための査証、パスは滞在許可という関係です)。つまり保護者パスは「お子さんの学びに付き添うための滞在許可」であり、収入を得る手段ではありません。母子で移住されるご家庭にとって、これは資金計画の土台に関わる論点です。
もうひとつ、お子さん本人のアルバイトについても誤解が多いところです。学生本人の就労が認められているのは大学・私立高等教育機関に在籍する学生に限り、週20時間までで、語学学校や訓練機関のカテゴリーでは認められていません。インターナショナルスクールに通うお子さんの就労は想定されていないとお考えください。
保護者として認められる範囲は、入国管理局のページに示されています。実の親・法定後見人・養親・祖父母、そして7歳未満の兄弟姉妹が挙げられています。一方で「両親が2人ともこのパスを取得できるのか、1名だけなのか」は公式ページに明記がありません。日本語の記事では「両親とも取得できる」と書かれているものもありますが、公式の裏づけは確認できませんでした。父母のどちらも現地に滞在する前提で計画を立てる場合は、この点を学校と入国管理局に個別に確認してください。
※ビザ・パスの種類ごとの要件はマレーシア移住のビザの種類の記事で詳しく整理しています。制度変更が多い分野のため、実際に申請される際は入国管理局などの公式情報を必ずご確認ください。
保護者パスで来られた方が現地でつまずきやすいのは、「働けない」という制約が想像より広いことです。日本の感覚だと、在宅の副業や単発の請負くらいなら大丈夫に思えます。ですが、マレーシアに住みながら収入を得る活動は、このパスでは想定されていません。
「日本の会社から日本円で振り込まれるなら大丈夫」という説明をインターネットで見かけることもありますが、これは自己判断で結論を出してよい論点ではありません。滞在資格の活動範囲という問題だけでなく、マレーシアに182日以上滞在すれば税務上の居住者と判定されうるため、税金の申告がどちらの国で必要になるかという論点にもつながります。働き方を変える予定がある場合は、渡航前に専門家へ確認しておくことを強くおすすめしています。渡航してから気づくと、選べる手が一気に減ってしまう部分です。
パターン①単身赴任型(相談で一番多い形)
父親が日本の勤務先に残り、母親とお子さんがマレーシアで暮らす形です。4パターンのなかで最も始めるハードルが低く、ご相談でも一番多い形です。理由は制度面と家計面の両方にあります。
最大の利点は「在籍を続けられれば、日本の社会保険が継続すること」
会社を辞めずに在籍を続ける場合、健康保険・厚生年金は、適用事業所に勤務するかぎり国内に住所があるかどうかを問わず加入が続くとされています。ただし継続するかどうかは、勤務先との雇用関係がどう扱われるか(在籍出張なのか、現地法人への転籍なのか等)によって変わります。ご自身のケースで続くのかは、勤務先の担当部署と加入している保険者に必ず確認してください。この場合は海外療養費——海外で受けた治療費の一部が日本の健康保険から払い戻される制度——も利用できるとされています(給付額は日本国内で同じ治療をした場合の額が基準です)。ここが、会社を辞めて移住する場合との決定的な違いです。ただし実際に支給されるかは個別の判断になりますので、加入している健康保険の保険者に事前にご確認ください。
一方で、介護保険は国内に住所がある人が対象のため、適用除外の届出が必要になります。会社の担当部署に「家族が海外に住む形になる」と早めに伝えておくと、手続きの抜けが起きにくくなります。
MM2Hの滞在義務は「家族の滞在」で満たせるとされている
意外に知られていないのが、この形はMM2H(マレーシア・マイ・セカンドホーム)とも設計上は両立しうるという点です。MM2Hは預金額に応じてPlatinum・Gold・Silver・経済特区(SEZ/SFZ)枠の4カテゴリーに分かれていますが、滞在義務はカテゴリーではなく年齢で決まります。公式ガイドラインでは50歳未満の参加者に年間90日(累計)の滞在が求められ、そのうえで25〜49歳の参加者については「マレーシアでの滞在日数は主申請者および/または扶養家族が満たすことができる」と各カテゴリーのページに明記されています。つまり「母子がマレーシアで暮らし、父親は日本で働き続ける」という日本人ファミリーに多い形と、噛み合いうる設計になっているのです。なお50歳以上の参加者には滞在義務がありません。
※ただしMM2Hは就労できるカテゴリーが限られます。公式サイトのカテゴリー別ページで就労(Career Opportunities)が「Permissible」とされているのは最上位のPlatinum(定期預金USD100万・不動産RM200万以上/パス20年)のみで、Gold・Silver・経済特区(SEZ)枠はいずれも「Not allowed」と明記されています。事業・投資活動も同様です。「MM2Hを取れば働ける」という説明を見かけることがありますが、カテゴリーによって結論が変わる点にご注意ください。要件・カテゴリー構成の改定が続いている制度でもあるため、検討時点の公式情報を必ずご確認ください。
覚悟しておきたい「別居のコスト」
制度面で成立しやすい一方、この形の負担はお金と家族関係の両方に出ます。住居費が日本とマレーシアで二重になり、往復の航空券も継続的にかかります。そして数字に表れないほうが、実際には重くなりがちです。母親のワンオペ育児が長期化し、父親は子どもの成長に立ち会う機会が減ります。
だからこそ、始める前に「年に何回、どのタイミングで会うか」を先に決めておくことをおすすめしています。学校の長期休暇に合わせて家族が日本へ帰るのか、父親が来るのか。ここを曖昧にしたまま始めると、1年目の後半に不安が出やすくなります。
単身赴任型で始めたご家庭を見ていて感じるのは、うまくいくかどうかを分けるのは距離ではなく「会う頻度が予定として決まっているか」だということです。日本とクアラルンプールは直行便で約7時間、時差は1時間だけです。日本の夜9時はマレーシアの夜8時なので、夕食後に毎日ビデオ通話をする、という運用がしやすい距離感ではあります。
逆に、「落ち着いたら行くね」で始まったご家庭ほど、来訪がずれ込みやすい印象があります。学校のカレンダーは年度の初めに公表されますので、長期休暇の日程を見ながら往復の予定を先に入れてしまうのが現実的です。
ご家庭の状況で、どのパターンが現実的か一緒に整理します
「夫の仕事をどうするか」で止まっているご相談は、とても多くいただきます。
お子さんの年齢・勤務先の状況・想定する年数から、現実的な形を現地スタッフが整理します。
パターン②帯同リモート型(DE Rantau)
日本や海外の仕事をリモートで続けながら、家族と一緒にマレーシアで暮らす形です。制度としては、政府機関MDEC(マレーシア・デジタル・エコノミー・コーポレーション)が運用するDE Rantau Nomad Passが、この働き方に対応する枠として公表されています。
年収要件は、公式FAQでIT・デジタル職(Tech)は年収USD24,000以上、それ以外の職種(Non-Tech)は年収USD60,000以上とされています。対象はIT・デジタル分野だけでなく、経営者・マーケティング・財務・人事・コンサルタントなどの非デジタル職も公式に対象です(そのぶん年収要件が高くなります)。前提として、雇用主や取引先がマレーシアに登記されていない海外の企業であることが定義に明記されています。
見落とされやすい4つの制約
「デジタルノマドビザで移住できる」と紹介されることが多い制度ですが、公式FAQを読むと教育移住との相性という点では制約がはっきりしています。検討する前に、次の4点は必ず押さえてください。
①
②
③
④
制度の可否と、勤務先の可否は別問題
ここが実務でいちばん見落とされます。マレーシアの制度が認めていても、勤務先が海外からの勤務を認めているかどうかは、まったく別の話です。就業規則で居住地を国内に限っている会社は珍しくありませんし、給与の支払い方・社会保険の扱い・労務管理の所在地といった論点も出てきます。
そのため、この形を検討される場合は会社への相談を最初のステップに置いてください。制度の要件を調べるより先に、勤務先が可能と言うかどうかで結論が変わります。
お子さんの就学とは「二重の手続き」になりやすい
もうひとつの注意点です。DE Rantauの帯同枠でご家族が入国できたとしても、学校側が入学手続きの要件としてお子さん本人の学生パスを求める場合があります。その場合は「親はDE Rantau、子は独立した学生パス」を取得して維持する二重の手続きになり、更新の時期も必要書類も別々に発生します(親がDE Rantauの場合、親の側は保護者パスではないため、就労の扱いも保護者パスとは別です)。帯同のパスだけでそのまま就学できるかは、入国管理局と各学校の運用によって分かれる部分です。この組み合わせを前提に動く前に、志望校へ「帯同のパスで就学できるか、学生パスが別途必要か」を出願前に必ず確認してください。
パターン③現地就労型(Employment Pass)
マレーシアの会社に雇われて働く形です。使うのはEmployment Pass(EP)で、月給の水準によって3つの区分に分かれています。EPを取得すると、扶養家族用のパス(Dependant Pass)で配偶者と18歳未満のお子さんを帯同できるのが、教育移住との相性という点では大きな利点です(帯同したご家族の就労は認められていません)。ただし帯同できるかどうかは区分によって扱いが異なります。改定前の基準では最下位のカテゴリーIIIで帯同が認められていなかったため、ご自身の見込み給与がどの区分に入るのかとあわせて、必ず公式情報でご確認ください。
ここは2026年に大きく変わった部分です。移民局ESDの発表によると、2026年6月1日から新しい月給基準が施行されています。日本語の記事では旧基準(カテゴリーI=月給RM10,000以上)のまま書かれているものが多いため、古い情報で判断しないようご注意ください。
← 横にスクロールできます →
| 区分 | 最低月給(2026年6月1日から) | パスの最長期間 |
|---|---|---|
| カテゴリー I | RM20,000 以上 | 最長10年 |
| カテゴリー II | RM10,000〜19,999 | 最長10年(後継者育成計画が必要) |
| カテゴリー III | RM5,000〜9,999 | 最長5年(後継者育成計画が必要) |
※出典=マレーシア移民局ESDの公表(2026年6月1日施行のEP給与方針)。新規申請・更新申請の両方に適用されるとされています。区分は改定される可能性があるため、申請時点の公式情報でご確認ください。
ただし現実的なハードルは制度そのものより「求人があるか」にあります。マレーシアには日系企業が多く進出しており日本語人材の求人もありますが、職種は限られます。そして日本国内と同じ給与水準を前提にしないほうが安全です。生活費が日本より抑えられるぶんを見込んでも、額面だけを比べると下がるケースがあるため、家計は現地の水準で組み直す前提で考えてください。
なお、勤務先が日本の会社で、その会社の指示でマレーシアに赴任する「駐在」の形であれば、住居費や学費の補助が出ることもあります。ご家庭にとっては最も負担が軽い形になりますので、勤務先に海外拠点がある場合は、社内公募や赴任の可能性を確認する価値があります。
パターン④現地起業型(会社設立+就労ビザ)
マレーシアで会社(Sdn Bhd=日本の株式会社に相当する現地法人)を設立し、その会社から就労ビザを取得して住む形です。雇われる先を探さなくてよいのがこのルートの利点で、日本で事業をされている方や、フリーランスとして独立している方が検討されることがあります。
一方で、法人設立の費用と時間、会計・税務の継続的な負担、そして就労ビザの発給は法人があれば自動的に通るものではないという点を押さえておく必要があります。事業計画・資本金・雇用の状況などが審査されるため、「会社をつくれば住める」という理解で進めるのは危険です。
加えて2026年6月1日から外国人雇用に関する方針が改定されており、要件・運用は動いている分野です。この形を本気で検討される場合は、現地の会計事務所・ビザの専門家に個別に相談することが前提になります。
ご相談を受けていて感じるのは、「起業して住む」を最初の選択肢に置くと、たいてい遠回りになるということです。順番としては、まず単身赴任型か帯同リモート型で実際に住んでみて、お子さんの学校とご家族の生活が落ち着いてから事業の形を考える方が、判断材料が揃います。
実際に、最初の数年は日本の仕事を続けながら暮らし、生活とネットワークができてから現地で事業を始められた方もいらっしゃいます。移住と起業を同時に立ち上げると、どちらの問題で苦しいのかが切り分けられなくなります。
日本の社会保険と税金は「3つの分かれ目」で決まる
親の働き方を決めると、次に効いてくるのが日本側の手続きです。複雑に見えますが、実際に結論を左右するのは3つの分かれ目だけです。
①
②
③
単身赴任型で必ず押さえたい「妻は扶養控除ではない」
単身赴任型でもっとも多い誤解が、「海外に住む妻も、子どもと同じ扶養控除に入る」という思い込みです。日本の税金では、お子さんは「扶養控除」、配偶者(妻・夫)は「配偶者控除」とまったく別の制度で扱われます。混同したまま年末調整に臨むと、受けられる控除を取り逃がしたり、逆に要件を満たしていないのに申告してしまうことになります。
お子さんについては「扶養控除」です。日本の非居住者になっても、要件を満たせば日本に残る側で扶養控除を受けられます。ただし令和5年分以降、30歳以上70歳未満の非居住者である親族は、「留学により国内に住所および居所を有しなくなった人」「障害者である人」「その年に生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人」のいずれかに該当する場合に限られます。16歳以上30歳未満または70歳以上の親族は、この限定の対象外です——つまり通常の年齢のお子さんであれば、この30〜70歳の制限には当たりません。
一方、配偶者(妻・夫)は扶養控除の対象ではありません。税法上の「扶養親族」の定義から配偶者は除かれており、配偶者については配偶者控除・配偶者特別控除という別の制度で判断します。そしてこの配偶者の制度には、上記の30〜70歳の年齢による限定は適用されません。「妻が30歳を超えているから控除は使えない」という誤解が生まれやすい部分ですので、ここは切り分けて考えてください。
いずれの場合も、親族関係書類・送金関係書類の提出または提示が必要です。「38万円以上の送金」の書類が要るのは、上記の扶養控除で③のケース(30歳以上70歳未満を送金額で判定する場合)です。控除額や所得の要件は税制改正で変わるため、ご家庭の状況での結論は税理士または所轄の税務署でご確認ください。
児童手当は「原則対象外」だが、留学の例外がある
見落とされやすいのが児童手当です。児童手当法は対象となる児童を「日本国内に住所を有するもの」または「留学その他の内閣府令で定める理由により日本国内に住所を有しないもの」と定めており、こども家庭庁もお子さんが海外に住んでいる場合、その子の分の手当は原則として支給されないと案内しています。
ただし留学の例外が定められており、次の3点をいずれも満たす場合は対象になりうるとされています。①日本国内に住所を有しなくなった日の前日まで、引き続き3年を超えて国内に住所を有していたこと ②教育を受けることを目的とし、父母などと同居していないこと ③転出した日から3年以内であること。教育移住はこの例外に当たりうるケースです。
ただし②の「父母などと同居していない」という要件があるため、母子で一緒に渡航する形(母子留学)でこの例外が使えるかは、慎重な確認が必要です。また父母がそろって海外に転出した場合、受給者は国内に住む「父母指定者」となり、海外にいる父母自身は受け取れない仕組みになっています。ご家庭の形で結論が変わりますので、転出届を出す前に、お住まいの自治体の担当窓口へ必ずご確認ください。
なお、日本とマレーシアのあいだには社会保障協定が結ばれていません(協定発効国にマレーシアは含まれていません)。現地で社会保険に加入することになった場合も、日本の年金と期間を通算したり、二重負担を免除したりする仕組みは使えません。現地就労型・現地起業型を選ぶ場合は、ここも判断材料に入れてください。
※税金・年金の詳細はマレーシア移住の税金と年金、住民票・保険・免許などの手続きの順番はマレーシア移住の実務手続きにまとめています。ご家庭の状況で結論が変わる分野ですので、実際の判断は税理士・年金事務所・市区町村など、それぞれの窓口でご確認ください。
二重生活のお金:何が二重になり、何は一本化できるか
単身赴任型を選ぶとき、家計で最初に見ておきたいのは「何が二重になるか」です。金額そのものはご家庭で大きく変わりますが、二重になる項目・一本化できる項目の切り分けは共通しています。
← 横にスクロールできます →
| 費用の項目 | 単身赴任型だとどうなるか | 考え方 |
|---|---|---|
| 住居費 | 二重になる | 日本側を賃貸なら、広さを落とす・社宅を使うなどで圧縮できるか。持ち家のローンは残る前提で試算する |
| 光熱・通信費 | 二重になる | 日本側は最低契約に落とせることが多い。現地の通信費は日本より抑えやすい |
| 食費・日用品 | 分かれるだけ | 合計では大きく増えない。ローカルの食材・外食は日本より安い一方、日本食材は同等かやや高め |
| 往復の航空券 | 新たに発生する | 年に何回会うかを先に決めて、回数×人数で固定費として組み込む。長期休暇の時期は運賃が上がる |
| 学費 | 一本化できる | マレーシア側のみ。学校のグレードで差が大きい費目 |
| 医療・保険 | 設計次第 | 日本の会社に在籍を続けるなら海外療養費が使える。それでも現地の医療保険は別に用意する |
※参考として、日本人のご家庭に人気のモントキアラで3ベッドルームのコンドミニアムを借りる場合、家賃は月RM3,800〜5,800(約14.7万〜22.4万円)が目安です。為替はRM1≒38.7円で換算しています。エリアを一つずらす、築年数を許容するなどで下げられる費目でもあります。エリア別の相場はクアラルンプールのエリア比較、費用の全体像はマレーシア移住の費用をご覧ください。
つまずきやすい5つのポイント
ご相談を受けていて、あとから「先に知りたかった」と言われることが多い5点です。
1. 学校を決めてから、親の仕事を考え始める
順番が逆になりやすい部分です。学費の支払い能力と滞在資格は、親の働き方で決まります。学校見学と並行して働き方の検討を始めてください。
2. 「保護者パスでも在宅なら働ける」と思い込む
入国管理局は保護者について就労・事業を行ってはならないと明記しています。働き方を変える予定があるなら、渡航前に専門家へ確認してください。
3. 勤務先への相談を後回しにする
帯同リモート型は、制度の可否より勤務先の可否で決まります。就業規則・給与の支払い方・社会保険の扱いは、会社に聞かないと分かりません。
4. 退職してから社会保険を調べる
在籍を続けるかどうかは、健康保険・厚生年金・海外療養費のすべてに関わる分岐です。辞めると選び直せません。退職前に整理してください。
5. 「会う頻度」を決めずに始める
航空券は家計の固定費であり、家族関係の維持費でもあります。学校のカレンダーが出た時点で、年間の往復を予定として入れてしまうのが安全です。
親の仕事を決めるまでの進め方(5ステップ)
「何から手をつければいいのか」という方へ、実際のご相談の流れを5ステップに整理しました。
想定する年数と、収入の出どころを仮決めする
何年住むつもりか、その間の収入は日本側か現地かを仮に決めます。ここが決まると4パターンのうち1〜2つに絞られます。正確でなくてよく、仮でかまいません。
勤務先に確認する(帯同リモート・駐在の可能性)
海外からの勤務が認められるか、海外拠点への赴任の可能性があるか。ここで可能と言われれば、家計の前提が大きく変わります。制度を調べる前に確認してください。
パスの候補を絞り、最新の要件を公式で確認する
保護者パス・DE Rantau・EP・MM2Hのうち、どれが現実的か。年収や資産の要件は改定が続くため、必ず申請時点の公式情報で確認します。
日本側の手続きを決める(在籍・住民票・保険)
会社に籍を残すか、住民票を抜くか、保険をどうするか。この3点は相互に関係するため、まとめて整理したうえで順番を決めます。
学校の出願と並行して、家計とスケジュールを固める
学費の支払い方、往復の予定、初期費用の出るタイミング。学校のカレンダーが出たら、年間の予定として先に入れてしまいます。
まずは、ご家族に合う働き方の形を整理しませんか?
お子さんの年齢・勤務先の状況・想定する年数をお聞かせいただければ、
現実的な選択肢と、確認すべき順番を現地スタッフが整理してお伝えします。
勤務先へ相談するタイミングや、日本側の保険・税の切り替えスケジュールの整理もご一緒にできます。
よくある質問
子どもの学生パスに付き添う親は、マレーシアで働けますか?
働けません。マレーシア入国管理局は、学生パス保有者に付き添う保護者について、就労・事業・政治活動・講演などを行ってはならないと明記しています。日本国内で完結する在宅の請負や副業についても、マレーシアに住みながら収入を得る形になるため、自己判断で始める前に必ず専門家へご確認ください。収入をどこから得るかは、渡航前に決めておく論点です。
夫が日本に残る単身赴任の形でも、マレーシアの長期滞在ビザは取れますか?
形によって取れます。お子さんが学生パスを取り、母親が保護者用のソーシャル・ビジット・パスで付き添う形は、父親が日本に残っていても成立します。MM2Hを使う場合も、50歳未満の参加者に求められる年間90日(累計)の滞在について、25〜49歳の参加者は公式サイトで主申請者および/または扶養家族が満たせるとされています。つまり父親が日本で働き続け、家族が現地で暮らす形とも設計上は両立しうる制度です。ただしMM2Hで就労できるのは最上位のPlatinumのみで、Gold・Silver・SEZ枠は就労も事業も認められていません。条件の改定が続く分野のため、申請時点の最新要件を必ず公式でご確認ください。
日本の会社に在籍したまま家族で移住すると、健康保険や年金はどうなりますか?
日本の適用事業所に勤務し続けるかぎり、健康保険・厚生年金は国内に住所があるかどうかを問わず加入が続くとされています。この場合は海外療養費も利用できます(給付額は日本国内で同じ治療をした場合の額が基準です)。一方、介護保険は国内に住所がある人が対象のため、適用除外の届出が必要になります。会社を辞めて移住する場合は扱いがまったく異なるため、退職前に整理しておくことをおすすめします。
日本の会社の仕事をマレーシアからリモートで続けられますか?
制度としては、政府機関MDECが運用するDE Rantau Nomad Passが海外の雇用主・クライアントの仕事をマレーシアから続ける人向けの枠として公表されています。年収要件はIT・デジタル職で年収USD24,000以上、それ以外の職種で年収USD60,000以上とされています。ただしこのパスは公式FAQで当初3〜12か月・更新12か月とされており、合計2年ほどが上限の設計です。長期の就学とは期間の前提が合わない点、帯同した配偶者は働けない点にご注意ください。また制度が認めていても、勤務先が海外からの勤務を認めているかは別問題です。就業規則・労働契約・社会保険の扱いを会社と先に確認してください。
家族が海外に住むと、日本の扶養控除は使えなくなりますか?
お子さんと配偶者で扱う制度が違います。お子さんについては扶養控除で、要件を満たせば日本に残る側で受けられます。ただし令和5年分以降、30歳以上70歳未満の非居住者である親族については、留学により国内に住所および居所を有しなくなった人・障害者である人・その年に生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人のいずれかに限られます(16歳以上30歳未満または70歳以上はこの限定の対象外です)。一方、配偶者は扶養控除の対象ではなく、配偶者控除・配偶者特別控除という別の制度で判断し、この30〜70歳の限定は適用されません。いずれも親族関係書類・送金関係書類の提出または提示が必要です。ご家庭の状況で結論が変わるため、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
親の仕事が決まらないと、学校の出願は進められませんか?
学校見学や出願の相談は、働き方が決まる前でも進められます。ただし「学校が決まってから親の仕事を考える」という順番はおすすめしません。保護者パスは学校が出す書類が前提になるため学校が決まらないと申請に進めない一方で、学費を払い続けられるか・どのパスで滞在するかは親の働き方で決まります。どちらかを先に固めるのではなく、学校探しと並行して働き方の方向性を早めに固めるのが現実的です。
主な参照元(2026年8月時点)
- マレーシア:移民局 IMI「Student Pass」(学生パス/保護者〈Guardians〉として認められる範囲/就労・事業の禁止/申請料)
- マレーシア:移民局 ESD および内務省 FAQ「REVISED EMPLOYMENT PASS SALARY POLICY(2026年6月1日施行)」(カテゴリーI〜IIIの最低月給・パス期間/Dependant Pass)
- マレーシア:観光芸術文化省 MM2H公式サイト(申請ガイドライン/Platinum・Gold・Silver・SEZ の各カテゴリーページ=預金額・就労可否・50歳未満の年間90日滞在義務・25〜49歳は主申請者および/または扶養家族の滞在で充当可)
- マレーシア:MDEC「DE Rantau Pass FAQ(V8)」(Tech=年収USD24,000以上/Non-Tech=USD60,000以上・対象職種・海外雇用主要件・パス3〜12か月+更新12か月・帯同家族の範囲と配偶者の就労不可・対象地域・銀行口座)
- マレーシア:Income Tax Act 1967 Section 7(居住者判定・暦年182日)/LHDN(非居住者の税率)
- 日本:国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等の適用について」/タックスアンサーNo.1180(扶養親族の定義から配偶者は除かれる=配偶者控除は別制度・親族関係書類・送金関係書類)
- 日本:こども家庭庁「児童手当制度のご案内」およびQ&A/児童手当法第3条・同施行規則(海外居住は原則対象外/留学の例外3要件/父母指定者)
- 日本:日本年金機構(社会保障協定の発効国一覧=マレーシアは含まれない/国民年金の任意加入)
- 日本:厚生労働省・各保険者(海外療養費/適用事業所に勤務する被保険者の資格の継続/介護保険の適用除外)
- 為替:Bank Negara Malaysia 公表レート(2026年8月時点、1リンギット=約38.7円)