結論から言うと、DE Rantauは「預金を積まずに、最長2年マレーシアに住める」数少ない選択肢です。一方で、配偶者は現地で働けず、帯同するお子さんは扶養パスのままでは学校に通えません。そして「税金がかからない」という説明は公式資料と一致していません。この記事では、年収要件・費用・申請の流れといった基本に加えて、日本語の記事でほとんど触れられていないこの3点まで踏み込んで整理します。
DE Rantauとは?3分でわかる全体像
DE Rantau Nomad Pass(デ・ラントー・ノマドパス)は、マレーシア政府のデジタル経済推進機関であるMDEC(Malaysia Digital Economy Corporation)が運営する、リモートワーカー向けの滞在許可です。「デジタルノマドビザ」と紹介されることが多い制度がこれにあたります。
制度上の位置づけを正確に言うと、DE RantauはProfessional Visit Pass(プロフェッショナル・ビジット・パス)という区分の一種です。これは「マレーシア国外の雇用主・取引先のために、マレーシア国内から専門的な業務を行う人」に出されるパスで、マレーシア企業に就職するための就労ビザ(Employment Pass)とは別物です。この違いが、後述する銀行口座や家族の就労の話につながってきます。
まず全体像を押さえてください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度の種類 | Professional Visit Pass の一種(就労ビザではない) |
| 滞在できる期間 | 初回3〜12か月 + 12か月の更新1回=最長24か月 |
| 年収要件 | IT・デジタル分野=年USD24,000以上/それ以外の分野=年USD60,000以上 |
| 資産・預金の要件 | なし(MM2Hのような定期預金は不要) |
| 対象年齢 | 主申請者は18歳以上 |
| 家族帯同 | 可(配偶者・18歳未満の子・障害のある子・本人の親) |
| 滞在できる地域 | 半島マレーシア+ラブアンのみ(サバ州・サラワク州へは行けるが、入境は観光扱い) |
| 出入国 | マルチプルエントリー(何度でも出入国可) |
| 申請方法 | MDEC公式サイトからのオンライン申請のみ |
※本記事の数値はMDEC公式サイトおよび公式FAQ(2026年8月時点で公開されている版)にもとづきます。DE Rantauは2024年に対象分野が広がり、2025年・2026年にも運用ルールの変更が入っている制度です。申請前に必ずMDEC公式(mdec.my/derantau)で最新の条件をご確認ください。
ここで先に注意していただきたいのが、DE Rantauで滞在できるのは半島マレーシアとラブアンだけという点です。マレーシアはボルネオ島側のサバ州・サラワク州が独自の入国管理権限を持っているためで、この2州へ行くこと自体はできますが、入境の扱いは観光客と同じになります。コタキナバルやクチンに腰を据えて暮らすことを考えている場合、DE Rantauではその希望を叶えられません。
ご相談でいちばん多い誤解が、「デジタルノマドビザを取れば、マレーシアのどこにでも住めて、家族もそのまま生活できる」というイメージです。実際には対象地域が限られていて、家族の就労や就学には別のルールがかぶさってきます。制度の名前が軽やかなぶん、実務は思ったより細かい、というのが率直なところです。
逆に言えば、クアラルンプールやペナンに住み、日本の仕事を続けながら暮らすという使い方であれば、預金を積む必要がないぶん、他の選択肢よりずっと現実的です。
対象になる人・ならない人(年収要件)
DE Rantauの入口は年収です。職種によって基準額が2段階に分かれていることが、この制度でいちばん誤解されやすいポイントです。
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| 比較項目 | IT・デジタル分野 | それ以外の分野 |
|---|---|---|
| 年収の下限 | ◎ 年 USD24,000 | △ 年 USD60,000 |
| 月あたりの目安 | USD2,000 | USD5,000 |
| 枠ができた時期 | 制度開始時から | 2024年6月に追加 |
| 想定される職種 | ソフトウェア開発・UI/UXデザイン・データサイエンス・デジタルマーケティング等 | 上記以外の職種(対象かどうかはMDECの最新の職種リストで判断される) |
もうひとつ、日本人の方が見落としがちなのが働き方の条件です。DE Rantauは大きく「リモートワーカー(どこかの会社に雇われている人)」と「フリーランサー(自分で契約を取っている人)」の2つに分かれ、それぞれ求められるものが違います。
リモートワーカーの場合
雇用契約書が必要で、そこにリモート勤務であることが明記されている必要があります。そして雇用主がマレーシアで登記された会社でないことが条件です。日本の会社に籍を置いたままマレーシアで働く、という形はここに当てはまります。
フリーランサーの場合
クライアントとの契約書、直近数か月分の請求書と入金の記録が必要です。ここで日本語記事の多くが取りこぼしているのですが、MDEC公式の書類要件では、フリーランサーの契約相手を「海外またはマレーシアのクライアント」と記載しています。つまり「マレーシア国内から一切収入を得てはいけない」という説明は、公式の書き方とは一致していません。ただし現地企業に雇われて働くこと(就労ビザの領域)は、DE Rantauではできません。
なお、いずれの場合も契約は申請日より前から続いていることが求められます。「マレーシアに行くことが決まったので急いで業務委託契約を結んだ」という状態だと、書類上の要件を満たせない可能性があります。渡航を考え始めた段階から逆算して準備するのが安全です。
「給与が円建てだから対象外なのでは」というご質問をよくいただきます。結論から言うと、円建てでも申請の対象になり得ます。公式の書類要件が「米ドル、または同等の通貨で記載された給与」となっているためです。
ただし、注意すべき点が2つあります。ひとつは、円をどのレートでいつ換算するのかが公式に説明されていないこと。もうひとつは、基準額が米ドルで決まっている以上、円安が進むとドル換算の年収が基準を割り込む可能性があることです。円建てで受け取っている方ほど、為替がご自身の申請にどう効くかは事前に確認しておいてください。
実務でもっと大事なのは、契約書・給与明細・銀行明細の3つが、名前も金額もきちんと揃っているかです。ここが食い違っていると、通貨の問題以前に止まります。
かかる費用の一覧
DE Rantauは預金を積む必要がないぶん、初期費用は他の長期滞在制度に比べてかなり軽く済みます。公表されている費用は次のとおりです。
| 費目 | 金額(リンギット) | 円の目安 |
|---|---|---|
| 申請料(主申請者) | RM1,080(サービス税8%込) | 約41,800円 |
| 申請料(扶養家族1名あたり) | RM540(サービス税8%込) | 約20,900円 |
| イミグレーションのパス代(3か月) | RM90 | 約3,500円 |
| イミグレーションのパス代(1年) | RM360 | 約13,900円 |
| 保証金(MDECがスポンサーとなる場合・日本国籍) | RM1,000(パス満了後、所定の手続きで返還) | 約38,700円 |
※為替 RM1≒38.7円で換算した概算です。このほかに、書類の英訳・公証、医療保険、渡航費、住居の契約費用などが実費でかかります。国籍によってはマルチプルエントリービザの費用が別途必要になる場合があります。金額は改定されることがあるため、申請時にMDEC公式でご確認ください。
※保証金は制度上は返還されるものですが、自動的に戻ってくるわけではなく、パス満了後に所定の返還手続きが必要です。手元に戻るまで時間がかかることも想定して、資金計画では「当面は出ていくお金」として見ておくほうが安全です。
ここで必ず知っておいていただきたいのが、申請料は返金されないという点です。2025年5月1日以降に受け付けられた申請については、審査で却下された場合も、自分から取り下げた場合も、全額が返ってこない扱いになりました。それ以前は一部が返金される仕組みがあったため、古い記事を読んで「落ちても大半は戻る」と思い込んでいると、認識がずれます。
また、申請料としてよく見かける「RM1,000/RM500」という金額は、サービス税が加わる前の素の額です。公示されている金額はサービス税込みで、サービス税が6%だった時期はRM1,060/RM530、8%になった現在はRM1,080/RM540です。古い記事の金額をそのまま予算に入れていると、わずかですが足りなくなります。
申請の流れと必要書類(5ステップ)
申請はすべてMDECのオンラインポータルで完結します。全体の流れは次のとおりです。
書類をそろえる
パスポート(申請時点で残存期間が14か月を超えていること)、雇用契約書または業務委託契約書、直近3か月分の給与明細または請求書、それと一致する銀行明細、そして無犯罪証明書。書類は英語、または認証を受けた翻訳が必要で、書類どうしで氏名と金額が一致している必要があります。
オンラインで申請する
MDEC公式サイトから申請し、申請料を支払います。この時点で費用は返金されなくなります。
審査を待つ(6〜8週間が公式の目安)
不備のない申請を受け付けてから6〜8週間が公式に案内されている期間です。書類の追加を求められると、その分だけ後ろにずれます。
承認レターを受け取る
承認レターには有効期限があり、発行日から6か月・延長はできません。この期間内に次のステップを終えられないと、最初から申請し直しになります。
エンドースメント(パスの貼付手続き)を行う
パスポートにパスを反映させる手続きです。ここでイミグレーションのパス代を支払います。この手続きの申請を出してから、おおむね1週間で電子パスが発行されます。
審査期間は「公式の目安」と「実際」を分けて考える
6〜8週間は、あくまで「不備のない申請を受け付けてから」の公式の目安です。実際に取得した方の体験談では、もっとかかったという声もあります。書類の追加を求められれば、その都度あいだが空きます。渡航日から逆算するときは、公式の目安をそのまま当てにせず、余裕をもったスケジュールで組むことをおすすめします。更新の審査にも同じくらいの期間がかかるとされています。
忘れやすい2つの必須書類:医療保険と無犯罪証明書
収入や契約に関する書類ばかりに意識が向きがちですが、医療保険の加入証明と無犯罪証明書(Letter of Good Conduct)は、どちらも必須書類として公式に指定されています。ただし、この2つは公式の「よくある質問」ではなく、必要書類を一覧にした公式資料のほうに記載されています。FAQだけを読んで準備すると、まるごと抜け落ちてしまうので注意してください。
それぞれ、押さえておきたい点が分かれます。医療保険は、マレーシアで有効なもので、帯同する家族も対象に含める必要があります。提出のタイミングは申請時ではなく、承認後からパスの貼付前まででよいとされ、最低3か月の有効期間が求められます。最低補償額の指定は公表されていません。無犯罪証明書は、出身国または現在住んでいる国の当局が発行したものが必要です。日本の場合は警察で発行の手続きをすることになり、時間がかかる書類なので、申請を決めた時点で最初に動き出しておくのが安全です。
※必要書類の一覧は改定されます。ここに挙げたのは公表されている内容の要点であり、実際に準備を始める前にMDEC公式の最新の必要書類一覧をご確認ください。
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家族帯同のルールと、子どもの就学という落とし穴
ここがこの記事でいちばんお伝えしたい章です。DE Rantauは家族を連れて行けますが、「連れて行ける」ことと「家族が現地で普通に暮らせる」ことは別だからです。
帯同できる家族の範囲
帯同できるのは、配偶者(事実婚のパートナーを含む)、18歳未満のお子さん(養子・連れ子を含む)、障害のあるお子さん(年齢の制限なし)、そして申請者本人の親です。ここで注意したいのが、対象になるのは本人の親だけで、配偶者の親は含まれないという点です。
落とし穴①:配偶者はマレーシアで働けない
公式のよくある質問には「このパスで配偶者はマレーシアで働けますか?」という問いに対して、はっきり「いいえ」と書かれています。マレーシアで職に就いて収入を得ることはできない、ということです。
共働きのご家庭で気になるのは、「配偶者が日本の会社の仕事をリモートで続けるのはどうなのか」だと思います。この点について公式資料は明確に触れていません。判断が分かれ得るところなので、配偶者も働き続ける前提であれば、それぞれが自分のDE Rantauを取得できないかを検討するほうが、話としてはすっきりします。どちらもIT・デジタル分野で年USD24,000以上の収入があるご夫婦なら、現実的な選択肢です。
いずれにせよ、ご夫婦のどちらか一方だけがパスを持つ形にする場合は、もう一方はマレーシアで新たに職を得られない前提で家計を設計してください。ここは渡航後に取り返しがつきにくい部分なので、早めに詰めておくことをおすすめします。
落とし穴②:帯同した子どもは、そのままでは学校に通えない
これが最も見落とされている点です。公式資料は、DE Rantau保持者のお子さんがマレーシアで学校に通う場合は、学校を通じてスチューデントパス(Student Pass)を申請するようにと案内しています。あわせて「ホームスクーリングの場合はスチューデントパスは不要」とも書かれています。つまり、帯同用の扶養パスを持っているだけでは学校には通えず、就学のための手続きが別に必要になるということです。
つまり、お子さん連れでDE Rantauを取る場合、実務としては「親のDE Rantau」と「子のスチューデントパス」という2本立ての手続きになります。スチューデントパスは学校がスポンサーとなって申請するものなので、学校側が留学生の受け入れ手続きに慣れているかどうかで、進み方も所要時間も変わります。
そのため、学校を決めるときには教育の中身だけでなく、「この学校はスチューデントパスの手続きをしてくれるか」「親の在留資格がDE Rantauでも問題なく進められるか」を、出願前に必ず確認してください。親のビザが下りてから学校側の事情で止まってしまうと、渡航そのものが後ろにずれてしまいます。
「親のビザが下りたから、子どもも当然通える」と思って渡航の準備を進めていた——というご相談は実際にあります。手続きの順番でいうと、多くの場合は学校の入学手続きとパスの申請が並行して動くので、親のビザだけを先に片づけてから学校を探し始めると、結果的に時間を余分に使ってしまいます。
私たちがご相談を受けるときは、お子さんの学校を先に決めて、そこから逆算して親の滞在方法を選ぶという順番をおすすめしています。教育を目的にした移住であれば、優先順位はどうしても学校が先に来るからです。
税金はゼロではない
「マレーシアは海外からの収入に税金がかからないから、デジタルノマドには天国」——こうした説明をよく見かけます。ただ、MDECの公式資料はそのようには書いていません。ここはお金に直結する話なので、公式の書きぶりを丁寧に見ておきます。
まず「居住者かどうか」で税率が変わる
マレーシアの所得税は、1年間(暦年)にマレーシアに何日いたかで扱いが大きく分かれます。基準は182日です。所得税法1967(Income Tax Act 1967)の第7条(1)(a)が「その年に合計182日以上マレーシアにいること」と定めており、マレーシア内国歳入庁(LHDN)の居住者判定のページにも同じ日数が掲載されています。
※日本語の記事では「183日」と書かれていることがよくありますが、マレーシアの基準は182日です。183日は他の国の基準と混同されたものと思われます。1日の差で居住者・非居住者が入れ替わり、税率が大きく変わる部分なので、滞在日数を管理するときはここを取り違えないようにしてください。なお、182日を満たさなくても居住者と判定される条件(前後の年との連続性、過去4年のうち3年の滞在実績など)が別に定められています。
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| 区分 | 居住者 | 非居住者 |
|---|---|---|
| 判定のめやす | 年間182日以上の滞在(他の条件でも該当し得ます) | 年間182日未満の滞在 |
| 税率 | ◎ 0〜30%の累進 | △ 一律 30% |
| 各種控除 | ◎ 適用あり | △ 適用なし |
注目していただきたいのは、非居住者のほうが税率が高いという点です。「短く滞在すれば税金が軽くなる」わけではありません。滞在期間を半端に区切ると、控除も使えず一律30%という扱いになり得ます。
「国外の会社からの報酬」も無条件では非課税にならない
MDECの公式FAQは、国外の雇用主からリモートで報酬を受け取るケースについて、マレーシア滞在が60日以下なら非課税、61日以上になると課税の対象になり得るという趣旨の説明をしています。「マレーシアに住みながら海外の会社の仕事をしているから非課税」という単純な整理にはなっていない、ということです。
また、マレーシアで得た収入があるフリーランサーの場合は、居住者になる前の期間について源泉徴収の扱いが発生し得るとされています。
「国外源泉所得の免税」にも条件がある
マレーシアには、居住者が国外から受け取った所得を免税とする措置があります。この措置はもともと2026年末までの時限措置でしたが、2024年12月に官報で公示された改正により、2036年12月31日まで10年間延長されました。「2026年で終わる」と書いている記事は、この延長の前に書かれたものです。
ただし、この免税には「その所得が、源泉となった国で所得税に相当する税を課されていること」という条件が付いています。どの国でも課税されていない収入は、この免税の対象から外れる可能性がある、という建て付けです。「どこにも税金を払わなくていい状態」を想定した制度ではない、と理解しておくのが安全です。さらに、免税になる場合でも申告の義務そのものは残ります。
※税務は個々の契約形態・滞在日数・日本との租税条約の適用によって結論が変わる領域です。加えて、日本側で住民票を残すか抜くかによって、日本での納税義務も変わってきます。本記事は制度の枠組みを整理したものであり、個別の税額や申告方法を判断できるものではありません。実際の手続きは、必ずマレーシア内国歳入庁(LHDN)または日本・マレーシア双方の税務に詳しい専門家にご確認ください。
申請前に知っておきたい5つの注意点
DE Rantauは要件がはっきりしていて申請しやすい制度ですが、渡航スケジュールや生活の立ち上げを大きく狂わせかねない注意点がいくつかあります。実務で「知らなかった」と言われることが多いポイントを、5つに絞りました。
1. 却下されても不服申し立てができない
以前は却下に対して再審査を求める仕組みがありましたが、2026年8月1日以降は不服申し立ての受付が廃止され、再申請のみという運用になっています。申請料は戻らないため、1回目でしっかり通すことの重要性が上がっています。書類の不備や、契約書の内容が要件を満たしていないといった理由で落ちないよう、提出前の確認を丁寧に行ってください。
2. 観光や留学の滞在からは切り替えられない
ここは混同されやすいので、「申請できるか」と「そのまま切り替えられるか」を分けて考えてください。マレーシア国内にいる間にオンラインで申請すること自体は可能です。しかし、いま持っている観光パスをDE Rantauへ切り替えることはできません。スチューデントパスからの切り替えも同じく認められていません。
つまり「観光で滞在しながら申請して、そのまま住み続ける」という進め方は制度として想定されていません。「まず留学して、気に入ったらそのままリモートワークに移行する」という流れも、制度上はつながっていません。実際の手続きの進め方は個々の状況で変わるため、マレーシアに滞在したまま申請を考えている場合は、渡航前にMDEC公式または専門家に進め方を確認しておくのが安全です。
3. 銀行口座が開けないことが多い
これは生活に直結する話です。MDECの公式資料自体が、マレーシアの多くの銀行はProfessional Visit Passでの口座開設に応じていないという趣旨の注意喚起をしています。制度の運営側が先回りして書いているという時点で、期待しすぎないほうがいい部分だとお考えください。
ただし、取り扱いは銀行ごとに異なり、対応が変わることもあります。「絶対に開けない」わけではありませんが、口座が開ける前提で家計の段取りを組むのは危険です。給与の受け取り、家賃の支払い、公共料金の引き落としをどうするか、渡航前に代替手段まで含めて決めておいてください。
4. 承認レターの期限は6か月・延長不可
審査に通ってからも、6か月以内にパスの貼付手続きを終えないと承認が失効し、申請料を払って最初からやり直しになります。仕事の区切りや家族の予定で渡航が延びそうな場合は、申請のタイミング自体を後ろにずらすほうが安全です。
5. 2年の先をどうするかを最初に考えておく
DE Rantauは更新しても最長24か月です。延々と住み続けられる制度ではありません。お子さんの就学を伴う移住のように「数年単位」で考えている場合は、2年後にどの在留資格へ移るのか——お子さんのスチューデントパスと保護者向けのパスに切り替えるのか、MM2Hのような長期滞在制度を目指すのか——を、渡航前の段階でおおまかに描いておくことをおすすめします。
MM2H・学生パスとの使い分け
マレーシアに長く住む方法はDE Rantauだけではありません。「親がどう働くか」と「どのくらいの期間住むか」の2軸で見ると、選択肢は整理できます。
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| 比較項目 | DE Rantau | MM2H(Silver) | 子のスチューデントパス+保護者のパス |
|---|---|---|---|
| まとまった資金 | ◎ 不要 | △ 定期預金USD150,000+不動産購入 | ○ 学費・生活費の支払い能力の証明 |
| 収入の要件 | △ 年USD24,000〜60,000 | ◎ 所得要件の記載なし | ○ 財政能力の証明が必要 |
| 滞在できる期間 | △ 最長2年 | ◎ 5年(更新あり) | ○ 在学中 |
| 親の働き方 | ◎ 国外の仕事を続けられる | △ 就労は原則想定されない | △ 保護者は就労不可 |
| 子どもの就学 | △ 別途スチューデントパスが必要 | ○ 別途手続きが必要 | ◎ これ自体が就学のための制度 |
| 向いている人 | 日本の仕事を続けたい・まず2年試したい | 資産があり長く腰を据えたい | 子どもの教育が第一目的 |
お子さんの教育を主な目的にしているのであれば、基本形は「子のスチューデントパス+保護者のパス」です。DE Rantauは、そこに「親が国外の仕事を続けられる」という要素を足したいときに検討する制度、と考えるとわかりやすいと思います。実際には、この2つを組み合わせて設計するご家庭もあります。
また、DE Rantauの審査には6〜8週間かかり、その間は動けない時間ができます。この待ち時間に短期留学や下見でマレーシアを実際に体験しておくと、学校選びの精度が上がり、渡航後のギャップも小さくなります。
DE Rantauの条件を満たしていても、お子さんの学校側でスチューデントパスの手続きが進められるかどうかは、また別の確認が必要です。ルシュエットでは、親御さんの在留資格の状況に合わせた学校選びから、渡航後の生活の立ち上げまで、現地で一貫してサポートしています。
「うちの場合はどの形がいいか」を整理します
お仕事の状況・お子さんの年齢・希望の滞在期間をうかがって、現実的な進め方を一緒に考えます。
学校選びから住まいまで、現地スタッフが伴走します。
よくある質問
DE Rantauの年収要件はいくらですか?
IT・デジタル分野は年USD24,000以上、それ以外の分野は年USD60,000以上が公表されている基準です。それ以外の分野の枠は2024年6月に追加されたもので、それ以前の情報を載せている記事では触れられていないことがあります。給与が円建てでも問題はなく、公式の書類要件は「米ドル、または同等の通貨で記載された給与」とされています。ただし換算のレートや基準日までは公表されていないため、最新の要件は申請時にMDEC公式でご確認ください。
DE Rantauで家族を連れて行けますか?子どもは学校に通えますか?
配偶者(事実婚のパートナーを含む)、18歳未満のお子さん、障害のあるお子さん、そして申請者本人の親を帯同できます。配偶者の親は対象外です。ただし注意点が2つあります。ひとつは配偶者がマレーシアで働けないこと。もうひとつは、帯同用の扶養パスだけではお子さんは学校に通えず、通学する場合は学校を通じて別途スチューデントパスを申請する必要があることです。ここは見落とされやすいところなので、渡航前に学校側と手続きの段取りを確認してください。
DE Rantauを取れば税金はかからないのですか?
「税金ゼロ」という説明を見かけますが、MDECの公式FAQはそう書いていません。国外の会社からリモートで報酬を受け取る場合でも、マレーシア滞在が60日以下なら非課税、61日以上になると課税対象になり得るとされています。税率は年間の滞在日数によって決まる居住者・非居住者の区分で変わります。税務の判断は個々の契約形態や租税条約によって変わるため、必ずマレーシア内国歳入庁(LHDN)または税務専門家にご確認ください。
DE Rantauはどのくらいの期間滞在できますか?延長はできますか?
初回は3か月から12か月の範囲で発給され、その後12か月の更新が1回できます。あわせて最長で24か月です。更新の審査にも新規と同じく6〜8週間程度かかるとされているため、期限が近づいてから動くのではなく、余裕をもって準備するのが安全です。2年を超えて滞在を続けたい場合は、別の在留資格に切り替える前提で計画を立てることになります。
観光でマレーシアに滞在中にDE Rantauへ切り替えられますか?
観光パスからDE Rantauへの切り替えはできません。スチューデントパスからの切り替えも同様に認められていません。留学で滞在したあと、そのまま現地に残ってリモートワークに移行するという流れは制度上つながっていないため、進路を考えるときは早い段階で在留資格の道筋を確認しておくことをおすすめします。