福利厚生としての海外語学研修とは、社員が自発的に受ける学びに、会社が費用と休暇を出す制度のことです。導入の分かれ目は「業務として送るのか、社員の自発的な学びとして送るのか」の一点にあります。ここが決まらないまま進めると、給与課税・労働時間・規程の3つが後からまとめて崩れます。この記事は、その分岐から順に整理しました。
先に結論(3行)
- 制度は業務型か自発型かを先に選ぶ。税務・労働時間・規程がまとめて変わります
- 自発型で安全側に寄せるなら全社員に開いた公募制にし、金銭が介在する要素を入れない
- 研修費用への助成は海外だと原則対象外。ただし休暇制度の導入には公的な支援の枠がある
最初の分岐は「業務」か「自発的な学び」か
海外研修の制度設計は、「業務として命じて送る」か「社員が自発的に受ける学びを会社が支援する」かで、その後の論点がまるごと入れ替わります。福利厚生として入れたい担当者の方は、後者を想定していることが多いはずです。
ところが実務では、ここに厄介なねじれがあります。会社負担分を給与課税されずに済ませるには「業務遂行上の必要」を説明する必要がある一方、そう位置づけるほど研修時間が労働時間として扱われる方向に近づくからです。
労働時間の側の根拠は明確です。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、労働時間に該当する例として「参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講」を挙げています。つまり両方の"いいとこ取り"はできません。
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| 論点 | 業務型(研修派遣) | 自発型(福利厚生) |
|---|---|---|
| 位置づけ | 業務命令・出張または研修派遣 | 応募制。会社は費用と休暇を支援 |
| 会社負担分の課税 | ◎ 職務に直接必要で適正なら非課税の方向 | △ 職務との関係を説明できないと給与課税の方向 |
| 研修時間 | △ 労働時間に該当 | ◎ 自由参加なら労働時間に該当しない |
| 賃金 | 通常どおり支払う | 休暇の設計しだい(有給・無給を選べる) |
| 対象者 | 会社が指名できる | △ 機会の均等が判断材料になる |
| 向いている狙い | 特定業務の内製化・海外拠点の立ち上げ | 採用広報・定着・学び直しの支援 |
実務では「公募で募り、選ばれた人は業務として行く」混合型も多く使われます。否定はされませんが、混ぜた場合は税務も労務も業務型のルールで見られると考えるのが安全です。
なお、業務命令として社員を送る場合の制度設計は論点が別に分かれます。詳しくは社員の海外派遣・語学研修の設計で整理していますので、そちらをご覧ください。
国税庁の資料で確認できる、課税・非課税の線引き
先に押さえるべきは勘定科目ではなく、参加した社員に給与として課税されるかどうかです。会社の経費処理が通っても、本人の手取りが減れば制度は続きません。判断の手がかりは、国税庁の資料に具体的に書かれています。
原則を定めているのは所得税基本通達36-29の2
この通達は、使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員または使用人に職務に直接必要な技術・知識を習得させるための研修会、講習会等の出席費用等を支給する場合、これらの費用として適正なものに限り課税しなくて差し支えないとしています。タックスアンサーNo.2601も同じ趣旨です。
読み取れる条件は3つです。業務遂行上の必要があること、職務に直接必要であること、金額が費用として適正であること。「福利厚生だから非課税」という条件は、ここには書かれていません。
海外の場合に必ず読むべきNo.2603
タックスアンサーNo.2603「従業員レクリエーション旅行や研修旅行」には、この記事の読者にとって最も重要な一文があります。原則として会社の業務を行うために直接必要とはならない研修旅行の例として、「観光渡航の許可をもらい海外で行う研修旅行」が明記されているのです。
同じページには、費用に直接必要な部分と直接必要でない部分がある場合、直接必要でない部分は参加者の給与として課税されるとも書かれています。全額が一律に扱われるわけではない、という点も押さえてください。
この一文が効いてくるのは、渡航の形と研修の中身が食い違ったときです。観光の枠で入国して現地の語学学校に通う、という組み立ては手続きが軽く見えますが、日本側の税務でもマレーシア側の在留資格でも、同じ方向から疑問符がつきます(在留資格の話は後述します)。
逆に言えば、受入校・コース名・週あたりの授業時間・出席記録が最初から揃っている研修は、どちらの説明もしやすくなります。書類は現地で後から作るより、企画段階で決めておくほうが早いです。
費目ごとの整理も必要になる
国税庁の質疑応答事例「講習会の出席費用の負担」は、使用人本人が負担すべき費用を会社が負担した場合には給与等として課税する必要があるとしています。研修費と、本人の私的な支出の線引きが問われるということです。
旅費や日当については、所得税基本通達9-3が判定の物差しを示しています。支給額の基準が役員および使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれているか、同業種・同規模の他社の支給額に照らして相当か、の2点です。海外だからと日当を厚くすると、この2点で説明が難しくなります。
※税務の取扱いは、研修の内容・費目・支給方法によって結論が変わります。本記事は一次資料の所在を示すもので、個別の判断は必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。
やり方のほうで給与課税になる4つの型
研修の中身が妥当でも、制度の組み方だけで課税側に振れる型があります。福利厚生として設計するときに踏みやすいので、先に4つ挙げます。
| やり方 | 公的資料に書かれている扱い |
|---|---|
| 参加しない人に代わりの金銭を渡す | 所得税基本通達36-30により課税対象。No.2603は、参加者と不参加者の全員に、その金銭の額に相当する給与の支給があったものとされると説明しています |
| 現金と選べる形にする | No.2603は「金銭との選択が可能な旅行」を対象外の例に挙げています |
| 役員だけを対象にする | 所得税基本通達36-30が課税となる場合として明記しています |
| カフェテリアプランの旅行補助として入れる | 質疑応答事例は、ポイントを利用する従業員に限り供与されるものは個人が負担すべき費用の補填と認められ、給与等として課税対象になるとしています |
※いずれも国税庁の通達・タックスアンサー・質疑応答事例の記載にもとづく整理です。個別の制度設計の可否は税理士にご確認ください。
4つ目は特に注意が必要です。選択型福利厚生(カフェテリアプラン)に海外研修メニューを足す発想は自然ですが、ポイントを使った人にだけ提供される形は、給与課税の方向で判断されうるという整理が公表されています。
同じ質疑応答事例は、ポイントを現金に換えられるなど換金性のあるカフェテリアプランは、その全てについて課税対象となるとも述べています。換金できる設計は、研修以外のメニューまで巻き込みます。
ここから逆算すると、福利厚生型で安全側に寄せる設計は「金銭を介在させない」「役員限定にしない」「使わなかった人に埋め合わせをしない」の3点に集約されます。制度の魅力を高めようとして現金的な要素を足すほど、税務上は不利に働きます。
「この形なら大丈夫か」の最終判断は税理士の領域ですが、そもそも現地でどんな形の研修が組めるのか——受入校のコース、週あたりの授業時間、証明書の出し方——は、選択肢を知らないと設計しようがありません。クアラルンプールに拠点を置く私たちが、現地で確認できる範囲からご相談に応じています。
「一部の社員だけ」をどう扱うか
福利厚生型でいちばん多い懸念が、希望者や選抜者だけが行くのは不公平ではないかという点です。結論として、希望者限定が直ちに課税になるわけではありませんが、機会の均等は判断材料として公的資料に出てきます。
ひとつは、先ほどのカフェテリアプランの質疑応答事例です。福利厚生費として課税されない経済的利益とするためには、役員・従業員にとって均等なものでなければならないと述べ、地位や報酬額に比例してポイントを付与する場合は全てが課税対象になるとしています。
もうひとつは、研修費用そのものを扱った平成元年3月10日の個別通達(直法6-5、直所3-6)です。ここには条件が3つ挙げられています。
個別通達に挙げられている3つの条件
- 研修は、使用者の業務遂行上必要なものであること、または従業員の職務の遂行と密接に関連するものであること
- 研修の受講および事業主の負担につき、各従業員の間に差が設けられていないこと
- 非課税とされる金額は、当該研修を受講するために要する費用として適正なものであること
※この通達は、自己啓発助成給付金の交付を受ける事業主から支給される研修費用について照会に回答したものです。あらゆる研修費に同じ条件がそのまま及ぶと読むのは踏み込みすぎになるため、設計の考え方として参照するのが適切です。
2番目の条件は、福利厚生型と相性が良い一方で、運用が雑だと崩れます。応募資格を全社員に開き、選抜基準を文書にし、選ばれなかった人にも次の機会がある——ここまで揃えて、はじめて「差が設けられていない」と説明できます。
現実には、育児・介護・現場勤務などで渡航そのものが難しい社員がいます。海外メニューだけを置くと、その人たちには実質的に開かれていません。国内やオンラインの学習支援を同じ制度の中に並べておくと、公平性の説明も、社内の納得感も得やすくなります。
休暇制度の設計と、そこに効く2つの公的制度
福利厚生型の本体は、費用補助よりも「どうやって仕事を離れるか」です。ここを年次有給休暇の消化に任せると、制度としては何も作っていないのと同じになります。取り得る形は4つです。
| 休暇の形 | 特徴と、使いどころ |
|---|---|
| 年次有給休暇を充てる | 制度を作らずに始められる反面、本人の年休を消費します。1週間程度の短期向け |
| 有給の教育訓練休暇を新設 | 年休とは別枠の特別休暇。会社の負担は増えますが、後述の助成の対象になり得ます |
| 無給の長期教育訓練休暇を新設 | 賃金負担なしで長期を可能にする形。本人の生活費が課題になりますが、後述の給付金が関わります |
| 勤務扱い(出張・研修派遣) | 業務型に寄る形。賃金は通常どおり支払い、労働時間として管理します |
制度の導入そのものに助成が出る枠がある
ここが見落とされがちな点です。研修費用への助成と、休暇制度の導入への助成は別物で、後者は海外研修を想定した制度でも入口が残ります。厚生労働省の人材開発支援助成金には「教育訓練休暇等付与コース」があり、令和8年度の支給要領では次のように定められています。
| 制度 | 要件と助成額(令和8年度・支給要領) |
|---|---|
| ①教育訓練休暇制度 | 有給の教育訓練休暇を新たに導入し、導入日から3年間に、被保険者数100人以上の企業は5人以上、100人未満の企業は1人以上に、それぞれ5日以上付与して実際に取得させること。制度導入・実施助成は30万円、賃金要件・資格等手当要件を満たすと36万円 |
| ②長期教育訓練休暇制度 | 合計30日以上の休暇で、10日以上連続した取得が必要。経費助成20万円(要件充足時24万円)に加え、賃金助成は1人1日あたり6,000円(同7,200円)で、最大1人あたり150日分 |
要領上の「教育訓練休暇」は、自発的に教育訓練等を受ける労働者に対して与えられる有給休暇(年次有給休暇を除く)と定義されています。自発型の福利厚生と、制度の考え方がそのまま重なります。
※この助成は制度の導入・実施に対するもので、訓練の実施場所についての要件は要領のこの箇所には書かれていません。ただし海外での訓練を前提にした場合の適用可否まで読み取れるものではないため、検討する場合は必ず管轄の労働局へ事前に確認してください。既に無給の教育訓練休暇制度を導入済みの事業主は対象外とされる点にも注意が必要です。
無給の長期休暇には、社員側に給付金の入口がある
2025年10月1日、雇用保険に教育訓練休暇給付金が創設されました。厚生労働省のパンフレットは、①休暇開始前2年間に被保険者期間が12か月以上あり、かつ②雇用保険の加入期間が通算5年以上ある一般被保険者が、就業規則等に基づく連続30日以上の無給の教育訓練休暇を取得した場合に支給されるとしています。給付日数は加入期間に応じて90日・120日・150日です。
福利厚生型にとって大きいのは、対象となる教育訓練の例として、同じパンフレットに「語学留学、海外大学院での修士号の取得」が挙げられている点です。会社が賃金を負担しなくても、社員の長期の学びを支える道があるということになります。
ただし前提が2つあります。ひとつは業務命令による休暇は対象外で、本人が自発的に取得を希望するものであること。1章の分岐がここでも効きます。もうひとつは無給の休暇が対象で、有給休暇を取得した日は支給されないことです。
※個々の教育訓練が対象になるかは、事前にハローワークで確認できるとされています。要件・給付率・給付日数は必ず最新の厚生労働省の案内でご確認ください。なお受給すると休暇開始日より前の被保険者期間はリセットされるため、社員に案内する際はその点も伝えてください。
研修費用そのものへの助成は、海外だと原則対象外
一方で、渡航費や授業料への助成は期待しないでください。人材開発支援助成金の支給要領は、支給対象外となる訓練として「海外、洋上で実施するもの(洋上セミナー、海外研修 等)」を挙げています。例外は海外の大学院で実施される訓練で、語学学校での一般的な語学研修は該当しません。制度は年度ごとに改定されるため、最新の支給要領を必ずご確認ください。
助成金を前提にした予算は組まず、通れば上乗せという順番で考えてください。制度ごとの可否は海外研修に使える助成金・補助金で整理しています。
規程に書く7項目
規程は、二人目の利用者が出た時点で必ず必要になります。一人目は個別対応でも回りますが、二人目から「前の人はどうだったか」の照会が始まるからです。最低限、次の7項目を先に決めてください。
| 項目 | 決めておく内容 |
|---|---|
| ① 制度の目的 | 業務型か自発型か。ここが1章の分岐に対応し、以下すべての前提になります |
| ② 応募資格 | 勤続年数・雇用区分。全社員に開いているかを説明できる形にします |
| ③ 選抜の方法 | 選考基準と決定者。落選者への通知と、次年度の再応募の可否まで書きます |
| ④ 期間と回数 | 1回あたりの日数、年間の利用枠、同一人物の再利用の可否 |
| ⑤ 費用の負担区分 | 授業料・渡航費・滞在費・保険料・私的な費用を費目ごとに区切ります |
| ⑥ 就業上の扱い | 休暇か勤務か。有給か無給か。渡航日と移動日をどちらに数えるかまで |
| ⑦ 渡航中の安全確保 | 海外旅行保険の加入と負担者、緊急連絡体制、渡航先での連絡手段 |
⑥は、実務でいちばん揉めます。海外の語学コースは平日の日中に授業が入るため、休暇か勤務かで賃金・社会保険・労働時間の扱いがまとめて変わります。無給とする場合は、休暇中の社会保険料の本人負担分をどう徴収するかも決めておいてください。行き先を探す前に、人事・労務側で確定させてください。
労災保険の扱いも⑥に連動します。厚生労働省の「特別加入制度のしおり(海外派遣者用)」は、海外出張であれば特別の手続きなく国内の事業場の労災保険から給付を受けられる一方、海外派遣の場合は特別加入の手続きをしていなければ給付を受けられないとしています。
同資料は海外出張の例として「技術習得などのために海外に赴く場合」を挙げていますが、どちらに当たるかは勤務の実態によって総合的に判断されるとされています。自発型で休暇として送る場合は前提が変わるため、労働基準監督署への事前確認をおすすめします。
なお、費用を負担する代わりに一定期間の勤務継続を求める返還条項は、労働基準法第16条との関係で慎重な設計が必要です。この論点は社員の海外派遣・語学研修の設計で裁判例の判断要素まで整理しています。
期間と在留資格(マレーシアの例)
期間は予算ではなく在留資格から決めてください。マレーシアの場合、就学期間の3か月が分岐点になります。
入国そのものについては、外務省の海外安全ホームページが、日本とマレーシアの間には査証免除の取決めがあり、観光や知人訪問を目的とした滞在期間が3か月を超えず、報酬等の収入を目的とした活動に従事する者を除いて査証取得は免除されるとしています。旅券の残存期間は6か月以上が必要です。
ただし、免除の説明が「観光や知人訪問」を前提に書かれている点に注意してください。同ページは、短期の滞在でも調査研究活動などは査証が必要としています。査証が不要であることと、語学学校に通ってよいことは別の話です。
就学については、EMGS(マレーシア教育省が管轄する留学生の窓口)の公式サイトの案内が、3か月を超える課程にはStudent Passが必要としています。同サイトの別の案内では、3〜6か月のコースには入国管理局がStudent Passを発給し、3か月未満はSocial Visit Passの期間の範囲で受講する、という整理も示されています。
一方で、入国管理局の短期社会訪問パスの目的一覧には、会議・カンファレンス、商談、工場視察、セミナーへの参加などが並びますが、語学コースの受講は含まれていません。同局のStudent Passのページでは、教育省の認可を受けた語学センターへの入学がStudent Passの対象カテゴリとして挙げられています。
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| 研修の形 | 公式資料での扱い | 実務上の進め方 |
|---|---|---|
| セミナー参加・企業視察・商談を含む研修 | ◎ 短期社会訪問パスの目的として明記あり | 日程表と訪問先を説明できるよう準備 |
| 3か月以下の語学コース受講 | △ 目的一覧に就学の明記なし。週数の基準も公表なし | 受入校に、同条件の受け入れ実績と当局への確認結果を書面で求める。取れなければ期間にかかわらずStudent Passの申請を検討する |
| 3か月を超える語学コース受講 | ◎ Student Passが必要(EMGS案内) | 渡航日から逆算した準備。参加者の確定を前倒しする |
手続き面では2つ、日程に直接効くものがあります。ひとつはMDAC(マレーシア・デジタル入国カード)で、入国管理局は到着前3日以内の提出を案内しています。もうひとつは在留届で、旅券法第16条により、外国に住所または居所を定めて3か月以上滞在する場合は届出が義務です。
※在留資格の運用は変わります。実際に許可される期間は入国時に付与されるパスの記載で決まるため、渡航のたびに受入校と最新の公式情報でご確認ください。滞在可能期間について、外務省は「3か月」、在マレーシア日本国大使館の案内は「90日」と表記が異なります。日程を組むときは短いほうの90日を基準にするのが安全です。
費用の考え方と、年間の枠の作り方
費用は「1人あたりいくら」ではなく、費目ごとに誰が負担するかから組み立ててください。規程の⑤がそのまま見積の構造になります。
授業料の実勢は、学校の公式サイトで確認できます。クアラルンプールの語学学校を例にとると、ある学校のパートタイム英語コースは1レベル(20時間・3か月)でRM520〜580、別の学校の一般英語コースは週10時間で月RM1,250から、集中コースは週20時間で月RM2,000からと公表されています。RM1≒38.7円(2026年8月時点の目安)で換算すると、集中コースの授業料は月あたり7万円台後半という水準です。
ここに登録料・教材費が別途かかります。上記の学校では登録料RM50〜300、教材費RM70〜900といった金額が公表されています。金額そのものより、授業料だけを比べても総額はわからないという構造を押さえてください。
見積で最初にずれるのは「時間数」です。週10時間のコースと週20時間のコースでは、同じ1か月でも中身が倍違います。金額を並べる前に、週あたりの授業時間で揃えて比べると、学校ごとの高い・安いが正しく見えます。
もうひとつが宿泊です。学校のパッケージには寮や空港送迎を含むものがあり、授業料のみの学校と同じ表で比べると判断を誤ります。前提が違うものを並べないでください。
税金も見落とされます。マレーシアでは2025年7月1日以降、教育法1996に基づき登録された語学センターが非国民に提供する教育関連サービスがサービス税(SST)の課税対象となり、授業料にサービス税6%が加算されます。サービス税の標準税率は8%ですが、教育サービスは6%が適用される区分です。私立学校のように年間金額のしきい値で判定される区分と違い、語学センターにはしきい値がありません。見積が税別か税込かを必ず確認してください。学校の選び方はマレーシア語学学校の選び方で詳しく整理しています。
年間の枠は、初年度を小さく作るのが結果的に早道です。1名を1回送って、規程の穴を洗い出してから人数を増やす。いきなり複数名を同時に送ると、選抜基準・費用区分・就業上の扱いの曖昧さが一斉に表面化します。
予算の説明では、費用単体ではなく制度の目的と並べて示してください。自発型なら、測るのは語学スコアの伸びより、応募者数・定着率・採用面での反応です。業務型なら帰任後に担う業務そのものが指標になります。目的と指標がずれていると、2年目の予算が通りません。
導入までの5ステップと、つまずきやすい4点
順番を間違えると手戻りが出ます。行き先探しは3番目です。
型を決める
業務型か自発型かを決めます。ここが決まらないと、規程も税務の説明も書けません。
就業上の扱いと休暇を確定する
休暇か勤務か、有給か無給かを人事・労務側で確定します。助成や給付金の検討もこの段階です。
行き先とコースの候補を出す
週あたりの授業時間とコース名まで具体化します。ここで初めて金額が比較できる形になります。
在留資格を受入校と当局に確認する
この期間・このコースでどの資格で入国すべきかを確認し、回答を書面で受け取って決裁資料に添付します。
規程を作り、1名で試す
7項目を条文化し、初年度は少人数で運用します。出席記録と費用の内訳は必ず残してください。
つまずきやすい4点
- 渡航の形と研修の中身が食い違う——観光の枠で入って語学学校に通う組み立ては、税務でも在留資格でも説明が弱くなります
- 制度に現金的な要素を足してしまう——不参加者への金銭、現金との選択、換金できるポイントは、いずれも課税の方向に働きます
- 助成金を予算に織り込む——海外で実施する訓練の費用は原則として支給対象外です
- 参加者の確定が渡航直前になる——3か月を超える設計では、手続きのリードタイムが先に尽きます
現地で実際に組める形から、ご相談を承ります
受入校のコースと週あたりの授業時間、証明書の出し方、在留資格の確認先——
制度を書く前に必要な現地の情報を、クアラルンプールの拠点から整理してお伝えします。
よくある質問
海外の語学研修の費用は、福利厚生費として処理できますか?
勘定科目より先に、給与として課税されるかどうかが問題になります。国税庁のタックスアンサーNo.2601は、職務に直接必要な技術や知識を習得させるための研修会・講習会等の出席費用は、その費用として適正なものに限り給与として課税しなくてよいとしています。一方でNo.2603は、原則として業務に直接必要とはならない研修旅行の例に「観光渡航の許可をもらい海外で行う研修旅行」を挙げています。つまり海外の場合は、渡航の形と研修の中身が職務との関係を説明できるかで結論が変わります。個別の判断は顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。
希望者だけが参加する制度にすると、給与課税されますか?
希望者だけの参加が直ちに課税になるわけではありませんが、機会の均等は判断材料になります。国税庁の質疑応答事例「カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合」は、福利厚生費として課税されない経済的利益とするためには役員・従業員にとって均等なものでなければならないとしています。また平成元年3月10日の個別通達では、研修の受講および事業主の負担につき各従業員の間に差が設けられていないことが条件の一つに挙げられています。応募資格を全社員に開き、選抜基準を文書にしておくのが実務上の出発点です。
海外の語学研修に助成金は使えますか?
訓練費用そのものへの助成は、原則として対象外です。人材開発支援助成金の支給要領は、支給対象外となる訓練として「海外、洋上で実施するもの(洋上セミナー、海外研修 等)」を挙げています。例外として海外の大学院で実施される訓練が人への投資促進コースの対象になりますが、語学学校での研修は該当しません。一方で、教育訓練休暇等付与コースは訓練費用ではなく休暇制度の導入自体に対する助成です。適用の可否は必ず管轄の労働局へ事前にご確認ください。
マレーシアでの語学研修は、どのくらいの期間で組むのが現実的ですか?
在留資格の面では3か月が分岐点になります。EMGS(マレーシア教育省が管轄する留学生窓口)は、3〜6か月のコースには入国管理局がStudent Passを発給し、3か月未満は発給されたSocial Visit Passの期間の範囲で受講すると案内しています。ただしこれはモビリティ枠についての案内で、一般の語学コースにそのまま当てはまるとは限りません。また入国管理局の短期社会訪問パスの目的一覧に就学は含まれていないため、期間にかかわらず受入校と当局への事前確認が必要です。
研修の時間は労働時間として扱う必要がありますか?
参加が業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講時間は労働時間に該当します。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に明記されています。自由参加であれば該当しませんが、同ガイドラインは、自主的な研修と報告されていても実際には使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間は労働時間として扱わなければならないとしています。形式ではなく実態で判断されるため、不参加による不利益がないかを確認してください。
主な参照元
- 国税庁 所得税基本通達36-29の2(職務に直接必要な技術等を習得させるための費用)/36-30(使用者が負担するレクリエーションの費用)
- 国税庁 タックスアンサー No.2601 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき
- 国税庁 タックスアンサー No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行
- 国税庁 質疑応答事例「講習会の出席費用の負担」「カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合」「カフェテリアプランによる旅行費用等の補助を受けた場合」
- 国税庁 個別通達 平成元年3月10日 直法6-5、直所3-6(事業主が従業員等の研修に要する費用を負担した場合における課税上の取扱いについて)
- 国税庁 所得税基本通達9-3(非課税とされる旅費の範囲)
- 厚生労働省 人材開発支援助成金 支給要領(教育訓練休暇等付与コース・共通要領)
- 厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」/雇用保険法第60条の3
- 厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
- 厚生労働省 特別加入制度のしおり(海外派遣者用)
- 外務省 海外安全ホームページ「マレーシア 安全対策基礎データ」/在マレーシア日本国大使館 入国案内
- 外務省 オンライン在留届(ORRnet)/旅券法第16条(e-Gov法令検索)
- マレーシア入国管理局(imi.gov.my)Student Pass/Short Term Social Visit Pass/MDAC
- EMGS(educationmalaysia.gov.my)Student Pass に関する案内
- マレーシア関税局(mysst.customs.gov.my)サービス税に関する公式ガイド
- クアラルンプール市内の語学学校の公式料金ページ(2026年9月時点)