社会人のマレーシア語学留学は、①90日以内のビザ免除(Social Visit Pass)/②学生パス(Student Pass)/③DE Rantau(ノマドパス)の3つの在留ルートから、滞在期間と仕事の続け方に応じて選びます。学校を選ぶ前にこのルートを確定させることが、手戻りを防ぐ最重要ステップです。この3つは現地で働けるか・家族を連れて行けるか・学校に通えるかが別々に決まるため、混ぜて考えると計画が崩れます。まずここを切り分けます。
社会人が選ぶ3つの在留ルート(比較表)
社会人がマレーシアで語学学校に通う場合、在留資格は大きく3ルートに分かれます。結論を先に言うと、1〜3か月の短期なら①、半年〜1年なら②、仕事を続けることが最優先なら③という当てはめになります。用語を先に1行ずつ整理しておきます。
- Social Visit Pass(社会訪問パス)=観光・知人訪問など短期滞在のための入国許可。日本国籍の方は事前のビザ申請が免除されています。
- Student Pass(学生パス)=学校に通うために滞在するための在留資格。学校を通じて申請します。
- EMGS=Education Malaysia Global Services。マレーシア教育省の下で、大学・私立高等教育機関・語学センターの留学生の在留手続きを一元的に処理する機関です。
- MDAC=Malaysia Digital Arrival Card。入国前に提出するオンラインの入国申告で、費用はかかりません。
- DE Rantau(デ・ラントー)=マレーシア政府(MDEC)が用意した、国外の仕事をリモートで続ける人向けの滞在制度。発給されるのは Professional Visit Pass です。
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| 比較項目 | ①ビザ免除の短期 (90日以内) | ②学生パス | ③DE Rantau |
|---|---|---|---|
| 向いている人 | 有給・短期休職で1〜3か月 | 半年〜1年しっかり通う | 仕事を続けることが最優先 |
| 在留資格 | Social Visit Pass(免除) | Student Pass | Professional Visit Pass |
| 滞在できる期間 | 90日以内 | コース期間に応じて | 最長24か月 |
| 学校に通えるか | 3か月以内の短期は可 (学校にご確認ください) | ◎ 本来の目的 ただしフルタイム課程に限る | 公式に記述を確認できず |
| 現地で働けるか | × 就労は不可 | ×(語学センター区分は 就労許可の対象外) | △ 国外の雇用主・ クライアントの仕事のみ |
| 家族の帯同 | 各自が同じ資格で入国 | ×(語学センター区分は 帯同不可) | ○ 配偶者・18歳未満の子 ・本人の親 |
| 公的な費用 | ビザ代なし (MDACは無料) | Student Pass RM60 +EMGS RM500 (語学センター・6か月以下) | 申請者 RM1,080 +入管パス代 |
①90日以内のビザ免除で行く短期
日本国籍の方は、社会訪問目的であれば90日以内の滞在にビザの事前取得が不要とされています(在東京マレーシア大使館のビザ案内・2025年10月1日更新版)。加えて、到着日の3日前以内にMDACの提出が求められます。公式サイトでの提出は無料なので、手数料を取る代行サイトには注意してください。まとまった有給や1〜3か月の短期休職で行く場合は、このルートが最も手続きが軽いです。MDACの提出手順はマレーシアのデジタルアライバルカードの記事で個別に整理しています。
期間の線引きについては、公式の目安が示されています。マレーシア教育省傘下のEMGSは、「3か月を超える期間の就学には学生パス(Student Pass)が必要」と案内しています。つまり3か月以内の短期コースであれば、多くの語学学校がビザ免除での入国での受講を受け入れているのが実情です。
ただし断定は避けてください。入国管理局が定める短期滞在パス(Short Term Social Visit Pass)の許可目的リストに「就学」は明記されておらず、最終的な判断は入国審査官に委ねられる部分が残ります。申し込む前に、必ず在籍予定の学校に「このコースはビザ免除での入国で受講できるか」を文面で確認してください。
②学生パスを取って半年〜1年通う
半年以上を英語に充てるなら学生パスのルートになります。ここで先に押さえるべき前提が1つあります。EMGSは「留学生が登録できるのはフルタイムのコースに限られる」と案内しています(一部の交流プログラムを除く)。つまり、夜間や土曜の週1回といったパートタイムコースで学生パスを取る、という組み立てはできません。学生パスのルートを選ぶなら、平日の日中に通うフルタイムの集中コースが前提になります。なお「週何時間以上でフルタイムとみなすか」という具体的な時間数は、入管・EMGSの公開情報からは確認できませんでした。コースがフルタイム扱いになるかは学校に確認してください。
費用面では、入管が公表している手数料はStudent Pass がRM60で、これにEMGSの処理費用(新規申請の処理費、eVAL、健康診断、iKadなど)が加わります。ここで社会人が取り違えやすいのが、EMGSの処理費は「機関の種類」で分かれているという点です。公表されている料金表では、語学センターは新規RM500・更新RM140(6か月以下の単一区分)で、大学などの高等教育機関の6か月以下RM800/6〜12か月RM1,600とは別建てになっています。いずれもサービス税が別途かかり、金額は改定されるため、申請時点の公式料金表で確認してください。
もう一点、社会人が見落としやすいのが保険です。入管が示す学生パスの必要書類には、マレーシアで認められた、12か月以上の期間をカバーする保険証券が挙げられています。滞在期間が1年に満たない場合の保険の扱いは学校やEMGSの案内するプランによって変わるため、必要な保険期間と保険料は申請前に学校へ確認してください。短期のつもりでも保険が滞在期間より長い契約になることがあり、費用計算に影響します。
そしてもう1つ、家族と一緒に渡航したい方が必ず先に知っておくべき制約があります。語学センター区分の学生パスでは、扶養家族を帯同できません。「自分は語学学校に通い、配偶者や子どもを一緒に連れて行く」という設計は、この区分では成立しないということです。お子さんを連れて渡航したい場合は、お子さん自身が学校から学生パスを取得し、親はその保護者としてのパスで滞在するという、逆向きの組み立てになります。家族での渡航を前提にするなら、別のルートを最初から組む必要があります。長期滞在の選択肢はマレーシアの長期滞在方法を整理した記事で扱っています。
③DE Rantau(ノマドパス)
これは語学留学の制度ではありません。国外の雇用主・クライアントの仕事をリモートで続ける人向けの滞在制度で、発給されるのは Professional Visit Pass です。公表されている主な条件は次のとおりです。
- 滞在期間=3〜12か月。1回の更新で最長24か月
- 年収要件=MDECが区分する「テック人材」は年USD24,000、「非テック人材」は年USD60,000(対象となる職種の定義はMDECが定めているため、自分の職種が該当するかは公式の職種区分で確認が必要)
- 費用=申請者RM1,080(返金不可)、扶養家族1名につきRM540。別途、入管のパス代が3か月RM90/1年RM360
- 帯同できるのは配偶者(事実婚を含む)・18歳未満の子・障害のある子・本人の親。配偶者の就労は認められません
- 対象地域は半島マレーシアとラブアンのみ
- 公式FAQに「多くの銀行は Professional Visit Pass での口座開設を受け付けない」と明記されています
※公式FAQは、帯同する子どもが就学する場合は学校を通じて学生パスを申請するよう案内していますが、パス保有者本人が語学学校に通えるかについては記載がありません。このパスはあくまで「国外の仕事をリモートで続けること」を目的とした在留資格なので、滞在の目的と実際の活動が食い違わないようにしておくことが前提になります。「働きながら夜間や週末のクラスに通う」という設計を検討する場合は、MDECと学校の両方に事前確認が必要です。DE Rantauの詳細な要件はマレーシアの滞在ビザの種類を整理した記事でも扱っています。
ご相談の場でいちばん多いすり合わせが、この「ルートの取り違え」です。「リモートで働きながら語学学校に通いたい」というご希望に対して、DE Rantauは就労のための制度、学生パスは就学のための制度で、どちらも相手側の活動を自動で許可するものではありません。やりたいことが2つあるなら、資格も2つ分の確認が必要になる——ここを最初に共有すると、その後の学校選びの判断が一気に速くなります。
もうひとつ、期間の刻み方でつまずく方が多いです。「とりあえず半年」で考えていた方が、費用と手続きを並べたうえで「まず3か月で行って、続けたければ現地で延長を相談する」に切り替える、という組み替えは実際によくあります。
「留学しながら現地で働く」は成立するか
結論として、語学留学を「現地で稼ぎながら」という前提で組むのは避けたほうが確実です。ここが競合記事でほとんど触れられていない、社会人にとって一番効く情報です。
マレーシア入国管理局の学生パスの案内では、学生の区分ごとに扱いが分かれています。語学センター・訓練/技能センター・認定センターの区分で学生パスを取得した人は、扶養家族を帯同できず、パートタイム就労の許可の対象にも含まれていません。一方、公立大学・私立高等教育機関の学生には、就学期間中に週20時間まで、飲食店・ガソリンスタンド・ミニマーケット・ホテル・大学やカレッジの構内といった限られた場所で就労が認められる仕組みがあります。ただしフロント業務や学生募集エージェントとしての就労は禁止されており、いずれも学校経由での申請と入管の許可が前提です。
つまり、「マレーシアの大学生のアルバイト事情」をそのまま語学留学に当てはめると、前提が違ってしまいます。日本語で読める記事の多くは「学生ビザではバイト不可」と一行で終わっていますが、実際には学校の種別で規定そのものが違うという構造です。語学センターに通う社会人の場合、現地収入をゼロで計算しておくのが安全な設計になります。
※就労の可否は運用と改定の影響を受けやすい分野です。本記事は公開情報の整理であり、最終的な判断は在籍予定の学校とマレーシア入国管理局・EMGSで確認してください。
「自分の職種でDE Rantauの要件に当てはまるのか」「この学校はビザ免除での受講を受け入れているのか」——こうしたネット上の一般論では判断できない、現地の最新の運用については、ルシュエットのクアラルンプール現地スタッフが学校の担当者に直接確認しながら個別にお答えしています。ルート選びだけでも先に整理しておくと、学校探しの手戻りが減ります。
リモートワークと両立する場合の考え方
先に事実関係を明確にしておきます。「日本の会社に所属したまま、マレーシア滞在中にリモートで業務を続けること」について、入管やEMGSの公開情報に明文の規定を確認できませんでした。したがって、この記事で「問題ありません」と書くことはできません。実際に検討する場合は、在籍予定の学校と入管への個別確認、そして勤務先の就業規則(海外からの勤務を認めているか)の確認が前提になります。
そのうえで、両立を検討する社会人にとってマレーシアが現実的な理由が1つあります。日本との時差が1時間(日本より1時間遅い)という点です。これは「観光的な近さ」ではなく実務上の意味を持ちます。日本の9〜18時は現地の8〜17時にあたり、語学学校の午前クラスに出てから日本の午後の会議に入る、という組み方が無理なく成立します。欧米圏の語学留学では、日本の勤務時間が現地の深夜にかかるため、この設計自体が難しくなります。
コース選びの実務としては、平日の日中を丸ごと使う集中コースではなく、平日夜や土曜に設定されたパートタイムコースから検討すると両立しやすくなります。前章のとおり学生パスはフルタイム課程が前提なので、仕事を続けながら通う場合は、ビザ免除の範囲(3か月以内)かDE Rantauでの滞在が現実的な組み合わせになります。実際にクアラルンプールの語学学校では、平日夜や週末に設定されたパートタイムコースと、平日午前を使う集中コースが並列で用意されており、勤務時間に合わせて選べる構成になっています。
リモート両立を検討するときに、渡航前に確認する5項目
- 勤務先の就業規則に、海外からの勤務を認める規定があるか(規定がなく個別許可になるケースが多い)
- 在籍予定の学校に、そのコースが社会訪問パスの範囲か学生パスが必要かを文面で確認
- 入管・EMGSに、滞在中に国外の業務を継続することの扱いを確認
- 税と社会保険の扱い(居住者判定・住民票・健康保険)を勤務先と自治体・税理士に確認
- 通信環境——会議が多い仕事は、住まいの回線品質を内見時に必ず実測する
※税・社会保険の扱いは滞在期間と個人の状況で変わり、一般化できません。本記事では判断を示さず、専門家への確認をおすすめしています。
休職して行くときのお金(教育訓練休暇給付金)
社会人の語学留学で最大の壁は、「無給の期間をどう食いつなぐか」です。ここに使える可能性がある公的な仕組みが1つあります。2025年10月に創設された雇用保険の「教育訓練休暇給付金」です。
そして、語学留学を考えている社会人にとって重要なのはここです。厚生労働省のパンフレットは、対象となる教育訓練の一つとして「職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得等)」を挙げており、「語学習得のための海外留学なども対象になります」と明記しています。受講費用そのものを補助する「教育訓練給付金」(厚生労働大臣の指定講座が対象)とは別の制度で、こちらは無給休暇中の生活費を支える給付です。両者は名前が似ているため混同されがちですが、指定講座リストに載っていない海外の語学学校でも、休暇給付金のほうは対象になり得ます。
※「海外の語学学校ならどこでも一律に対象になる」という意味ではありません。対象かどうかは個別の判断になり、厚生労働省の案内では事前にハローワークで確認できるとされています。休職や退職を決める前に、学校の資料を持って管轄のハローワークに確認してください。
厚生労働省が公表している主な要件と給付日数は次のとおりです。
| 項目 | 公表されている内容 |
|---|---|
| 制度の開始 | 2025年10月 |
| 対象となる教育訓練 | 大学・大学院・専修学校等が提供する教育訓練/教育訓練給付金の指定講座を持つ法人等の教育訓練/職業安定局長が定めるもの(語学留学、海外大学院での修士号取得等) |
| 休暇の要件 | 業務命令によらず、就業規則などに基づく連続30日以上の無給の教育訓練休暇 |
| 加入期間の要件 | 雇用保険の加入期間が5年以上 |
| 被保険者期間 | 休暇開始前2年間に被保険者期間が12か月以上 |
| 給付日数 | 加入5年以上10年未満=90日/10年以上20年未満=120日/20年以上=150日 |
| 1日あたりの給付額 | 雇用保険の基本手当の日額に相当する額(賃金日額のおおむね50〜80%)。日額の上限は年齢区分ごとに定められており、30歳未満7,450円/30〜44歳8,270円/45〜59歳9,110円(2026年8月1日時点) |
| 注意点 | 受給すると、休暇開始前の被保険者期間が、失業給付(基本手当)の受給資格を判断する期間から除かれる |
※厚生労働省の公表資料に基づく整理です。給付額は賃金や年齢によって決まり、個別の受給可否・金額はハローワークの判断になります。金額の試算や適用の可否は、必ずハローワークと勤務先にご確認ください。
表の「注意点」は、社会人にとって実質的な意味を持つので補足します。この給付金を受け取ると、休暇開始前の雇用保険の被保険者期間が、その後に失業給付(基本手当)の受給資格を判断する際の期間から除かれます。つまり、留学後にそのまま離職を考えている場合、基本手当の要件を満たせなくなることがあります。「留学して、戻って、辞める」という段取りを想定しているなら、この順番は先に確認しておくべき論点です。
※加入期間は転職をまたいで通算できる場合がありますが(離職期間が1年以内で、その間に失業給付を受けていない場合など)、過去に失業給付・教育訓練休暇給付金・育児休業給付を受けている場合は、それ以前の期間を通算できません。加入年数が要件に届くかどうかは、ご自身の受給歴によって変わります。
この制度を語学留学の観点で読み替えると、実務上のポイントは1つに絞られます。「勤務先の就業規則に、教育訓練休暇の制度があるか」です。要件が「就業規則などに基づく休暇」となっているため、制度そのものが社内にない会社では、この給付を使う入口が立ちません。上司に相談する前に人事へ確認しておく価値がある項目です。
もう1点、手続き上の実務として、支給の認定申告では教育訓練を受講していることを証明する書類(受講証明書など)が求められます。専用の証明書様式には教育訓練実施者の名称・所在地を記入する欄があるため、渡航先の語学学校に受講証明を発行してもらえるかを、申し込み前に確認しておくと手戻りがありません。なお、個々の留学が対象になるかどうかは事前にハローワークで確認できるとされています。
なお「自己啓発休職」「留学休職」といった呼び名で語られる制度についても調べましたが、公的に一般化された枠組みは確認できませんでした。実態としては企業ごとの制度であり、勤務先に制度があるかどうかが分かれ目になります。休職中の社会保険・雇用保険の取り扱いについても、断定できる公的情報を確認できなかったため、この記事では踏み込みません。
3か月留学の費用の目安
結論として、3か月・単身・クアラルンプールで、ビザ免除の範囲でパートタイムのコースに通うなら、渡航費まで含めて約55〜75万円が目安になります。ただし授業料はルートによって前提が変わるため、滞在にかかる費用と授業料を分けて見るのが正確です。
まず、ルートに関係なく共通してかかる「滞在の費用」です。
| 項目 | 3か月の目安 |
|---|---|
| 家賃(1ベッドルーム・郊外〜都心) | 約17〜30万円 |
| 生活費(食費・光熱費・通信・交通など) | 約28万円 |
| 航空券(往復) | 約6〜12万円 |
| 小計 | 約51〜70万円 |
ここに、選んだルートに応じて授業料と在留手続きの費用が乗ります。
| ルート | 授業料と手続き費用 |
|---|---|
| ①ビザ免除(90日以内) 夜間・土曜のパートタイムコースに通う | 授業料 約2.5〜3.2万円(1レベル分) 在留手続きの費用なし 総額の目安:約55〜75万円 |
| ②学生パス 平日日中のフルタイム集中コースに通う | 授業料は学校へお問い合わせください(公式サイトで公開していない学校が多い) 在留手続き 約4〜5万円(保険料別) 総額=上記の滞在費+集中コースの授業料 |
※為替 RM1≒38.7円で換算した概算です。家賃・生活費はクアラルンプールの生活費データベース(Numbeo・2026年8月時点)の1ベッドルーム都心RM2,600/郊外RM1,495、家賃を除く単身の月額RM2,468をもとにした計算です。二次情報のため実勢とは差が出ます。フルタイムの集中コースの授業料を公式サイトで公開していない学校が多いため、②の総額はここでは出していません(推測の金額は載せない方針です)。集中コースはパートタイムより授業時間が大幅に増えるぶん、授業料も相応に上がります。見積りは学校から直接取り寄せてください。
授業料は「安いが、条件を読む」項目
クアラルンプールの語学学校の例を挙げると、公式サイトに料金を公開している学校ではパートタイムコース(平日夜または土曜・全20時間分・約3か月)がレベルあたりRM530〜580、登録料RM50、教材費RM70〜150という水準が示されています。日本円ではレベルあたり約2〜2.2万円です。欧米圏の語学学校と比べると、授業料そのものは大きく下がります。
※これは学校が公開しているパートタイムコースの料金で、前述のとおり学生パスの申請対象になるのはフルタイムのコースです。また、時期によって留学生の受け入れ自体を停止している学校もあります。志望校が今どのコースで留学生を受け入れているかは、必ず最新の状況を学校に確認してください。
ただし2点、社会人が見落としやすい条件があります。1つはSST(サービス税)です。SSTはマレーシアの売上・サービス税で、教育サービスは2025年7月1日から課税対象になりました。税率は6%で、語学センターが非国民(外国人)に提供する教育サービスは、金額にかかわらず課税される区分にあたります。インターナショナルスクールの学費のように「年間いくら以上から課税」というしきい値は適用されないため、見積りは税込で確認してください。実際に、公式に「2025年9月1日から外国人の登録料・授業料にSST6%が加算される」と告知している学校もあります。
もう1つは「レベルあたり」の料金体系です。上記は学校が区切る1レベル(=全10回・約3か月の1コース分)の料金なので、目標の到達度まで何段階必要かで総額が変わります。週1回・全10回で英語力が大きく変わるわけではなく、あくまで学校のカリキュラム上の1段階だと考えてください。プレースメントテストの結果次第で見積りが動くため、渡航前の総額は「◯レベル分」で握っておくと安全です。
生活費は「住まいのエリア」で決まる
3か月の総額で最も振れ幅が大きいのは家賃です。同じクアラルンプールでも、都心と郊外で1ベッドルームの家賃は倍近く変わります。エリアごとの相場はクアラルンプールの家賃相場の記事、日常の物価感はマレーシアの物価の記事で個別に整理しています。短期であればサービスアパートメントやシェアの選択肢もあり、通学時間との兼ね合いで決めるのが現実的です。
社会人の方に費用の話をするとき、私たちが必ずお伝えしているのは「授業料の差より、住まいと期間の差のほうが総額に効く」ということです。授業料を月1万円安くする努力より、通学しやすい範囲で家賃を月3万円下げる、あるいは「3か月で目標レベルまで」と期間を締めるほうが、総額へのインパクトが大きくなります。
もう1つ、現地に来てから調整される方が多いのが食費です。ローカルの食堂で食べる日と日本食の日を分けるだけで、月の食費は体感で大きく変わります。「安いはずなのに思ったより減らない」という声のほとんどは、輸入品と日本食の比率が原因です。
非英語圏のマレーシアで、社会人の英語は伸びるのか
結論として、「発音をネイティブに近づけたい」なら向かず、「仕事で通じる英語を鍛えたい」なら合う環境です。理由を1つに絞ると、マレーシアは英語が母語ではないのに、社会の共通語として英語が機能している国だからです。
マレーシアの国語はマレー語で、英語は公用語という位置づけではありません。しかし教育・ビジネス・行政の実務で英語が広く使われており、EF EPI(英語能力指数)の2025年版では、マレーシアは世界24位・スコア581で「High(高い)」バンドに分類され、同ランキングに掲載されたアジアの国・地域の中で最上位です(シンガポールは2025年版の対象に含まれていません)。生活が英語で完結する一方、街で耳にする英語は多民族国家らしい多様なアクセントで、いわゆる「マングリッシュ」と呼ばれる現地なまりの英語も日常的です。
これは社会人にとって欠点とは言い切れません。実際の仕事で英語を使う相手は、英語を母語としない人のほうが多いのが普通です。訛りのある相手の英語を聞き取り、こちらの意図を確実に伝える——という実務英語の負荷が日常的にかかる環境は、TOEICのスコア対策とは別の筋肉を鍛えます。逆に「英語圏の発音・言い回しを身につけたい」という目的が最優先なら、素直に英語圏を選ぶべきです。言語事情のより詳しい整理はマレーシアで英語は通じるかを扱った記事にまとめています。
渡航までの進め方(5ステップ)
社会人の場合、学校探しから始めると勤務先の確認で手戻りが起きます。順番を入れ替えるのが実務的です。
期間と「仕事の扱い」を先に決める
何か月行くのか、休職するのかリモートを続けるのか。ここが決まらないと在留ルートが決まりません。休職なら、勤務先の就業規則に教育訓練休暇の制度があるかを人事に確認します。
在留ルートを確定する(①②③のどれか)
90日以内のビザ免除/学生パス/DE Rantau のどれで行くかを決めます。就労やリモート業務の扱いは、この段階で学校と入管・EMGSに確認しておきます。
コース形態から学校を絞る
集中コースかパートタイムか。両立するなら開講時間が先に効くため、時間割から逆算して学校を選びます。総額は「何レベル分か」で握ります。
住まいと通学時間をセットで決める
家賃が総額に一番効きます。通える範囲でエリアを下げる調整と、リモート業務がある場合は回線品質の確認を内見時に行います。
手続き・保険・渡航
学生パスなら学校経由でEMGSの手続きと保険証券(入管要件で12か月以上の期間が求められる運用)を準備します。ビザ免除の短期でも、MDACの提出は必要です。
「休職して行くか、働きながら行くか」から一緒に整理します
期間・仕事の扱い・在留ルート・費用の目安を、現地スタッフが個別に整理します。
マレーシア留学の資料とセミナー案内も無料でお送りします。
よくある質問
社会人がマレーシアに語学留学するとき、ビザは必要ですか?
日本国籍の方は社会訪問(Social Visit)目的であれば90日以内の滞在にビザは不要とされています。ただし到着日の3日前以内に、マレーシア・デジタル・アライバル・カード(MDAC)の提出が必要です(公式サイトでの提出は無料です)。就学については、マレーシア教育省傘下のEMGSが「3か月を超える期間の就学には学生パス(Student Pass)が必要」と案内しています。ただし入国管理局の短期滞在パスの許可目的リストに「就学」は明記されていないため、ビザ免除での受講が可能かどうかは、必ず在籍予定の学校に事前確認してください。
学生パスでマレーシアで働くことはできますか?
語学センター・訓練/技能センター・認定センターの区分で学生パスを取得した人は、マレーシア入国管理局の案内ではパートタイム就労の許可の対象に含まれておらず、現地でのアルバイトは想定されていません。公立大学・私立高等教育機関の学生には、就学期間中に週20時間まで、飲食店・ガソリンスタンド・ミニマーケット・ホテル・大学構内など限られた場所で就労が認められる仕組みがありますが、フロント業務や学生募集エージェントとしての就労は禁止されており、いずれも学校経由での申請と入管の許可が前提です。また、EMGSは留学生が登録できるのはフルタイムのコースに限られると案内しており、学生パスで滞在する場合は学業が本分になります。語学留学は「現地で稼ぎながら」という前提を置かず、休職中の給付や貯蓄で組み立てるのが現実的です。
日本の会社のリモートワークを続けながら語学留学できますか?
日本の雇用主の業務をマレーシア滞在中に継続することについて、入管やEMGSの公開情報に明文の規定を確認できていません。そのため「問題ない」と言い切れる状況ではなく、在籍予定の学校と入管への個別確認が前提になります。国外の雇用主・クライアントの仕事をリモートで続けること自体を目的とする場合は、語学留学のビザではなくDE Rantau(ノマドパス)という別の制度が用意されています。ただしDE Rantauで語学学校に通えるかどうかは公式に記述を確認できていません。
休職してマレーシアに語学留学する場合、使える公的な給付はありますか?
2025年10月に創設された雇用保険の「教育訓練休暇給付金」が該当する可能性があります。厚生労働省のパンフレットは対象となる教育訓練の一つに「職業安定局長が定めるもの(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得等)」を挙げ、語学習得のための海外留学も対象になると明記しています。会社の就業規則などに基づく連続30日以上の無給の教育訓練休暇であること、雇用保険の加入期間が5年以上あることなどが要件で、給付日数は加入期間に応じて90日・120日・150日と定められています。個々の留学が対象になるかは事前にハローワークで確認できるとされています。この給付金を受け取ると、休暇開始前の雇用保険の被保険者期間は、その後に失業給付(基本手当)の受給資格を判断する際の期間から除かれるため、留学後に離職を考えている場合は特に注意が必要です。要件と影響は必ずハローワークと勤務先で確認してください。
マレーシアは英語圏ではないのに、語学留学先として英語は伸びますか?
マレーシアの国語はマレー語ですが、英語は教育・ビジネス・日常の共通語として広く使われています。EF EPI(英語能力指数)2025年版でマレーシアは世界24位・スコア581とされ、同ランキングに掲載されたアジアの国・地域の中では最上位です。英語で生活が完結する環境は整っています。一方で「ネイティブの発音を身につけたい」という目的には向かない面もあります。仕事で使う実務英語や、多国籍な相手に通じる英語を鍛えたい社会人と相性がよい環境です。
主な参照元
- マレーシア入国管理局(imi.gov.my)Student Pass ページ/MDAC 案内(rai.malaysia.gov.my)
- 在東京マレーシア大使館 ビザ案内(2025年10月1日更新版)
- EMGS Schedule of Fees(visa.educationmalaysia.gov.my)
- MDEC DE Rantau 公式FAQ(mdec.my)
- マレーシア関税局 サービス税 拡大対象に関するFAQ(mysst.customs.gov.my)
- 厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」パンフレット・雇用保険部会資料
- EF EPI 2025 報告書(ef.com)
- Numbeo クアラルンプール生活費データ(2026年8月時点・二次情報)
※費用・制度・税率は改定されます。本記事は公開情報を整理したものであり、申請・契約の判断は各公式情報および専門家への確認のうえで行ってください。