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マレーシア法人・進出ガイド

マレーシアの法人税と税制優遇|進出前に知る税率・優遇・申告【2026年版】

「法人税が24%で、しかも優遇が手厚い」——マレーシア進出の検討はここから始まることが多いのですが、日本人が100%出資した会社では、この前提の半分が当てはまりません。公式情報の出どころを示しながら整理します。

結論から言うと、進出前に確かめるべきなのは「税率が何%か」ではなく、①中小企業向けの軽減税率が自社に当てはまるか ②優遇制度の入口に届くか ③税率以外の税がいくら乗るかの3点です。マレーシアの法人税は標準24%。ただし賦課年度2024から、払込資本の20%超を外国法人や非マレーシア国民が持つ会社は中小企業から外れる扱いが加わりました。つまり日本人が100%出資したSdn Bhdは、原則として最初の1リンギットから24%で計算されます。この記事では、税率の基本・日本との差額・優遇制度の実際・税率以外の4つの税・申告カレンダーの順に、内国歳入庁(LHDN)やMIDAの公表内容をたどりながら整理します。

結論:確かめるのは税率ではなく「自社に当てはまるか」

マレーシアの法人税の話は、税率表を見ても答えが出ません。同じ24%という数字の裏で、実際の負担は「誰が株を持っているか」「何の事業か」「どこに拠点を置くか」の3つで変わるからです。

まず言葉を整理します。Sdn Bhd(Sendirian Berhad)はマレーシアの非公開有限会社で、日本の株式会社にあたる形態です。賦課年度(YA=Year of Assessment)は、その年の所得に税金をかける年度の呼び方です。払込資本は、株主が実際に払い込んだ資本金を指します。この3語は、以下の条件のほぼすべてに出てきます。

そのうえで全体像を、意思決定に使う軸で並べます。

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比べる項目日本の会社日本人100%出資のSdn Bhdマレーシア資本中心のSdn Bhdラブアンの事業体
基本の税率△ 実効29.74%程度◎ 24%◎ 24%◎ 3%(トレーディング)
中小向けの軽減税率○ 中小法人向けの軽減あり× 外国株主20%超で対象外◎ 15%・17%の階段- 別制度
免税・特別税率の入口○ 各種の税額控除△ 業種と投資額しだい△ 業種と投資額しだい○ 3%または0%
求められる実体○ 常居住の取締役1名・会社秘書役○ 同左△ ラブアンでの常勤雇用と運営支出
配当を受け取るとき△ 株主側で課税○ マレーシア側は原則非課税(日本側は別)○ 同左○ 同左
向いている使い方国内で完結する事業現地で売上を立てる事業合弁・現地パートナーあり域外取引・持株
◎ 有利○ ふつう△ 制約・注意
▲ 出資構成・拠点別の税負担の比較。内国歳入庁(LHDN)、ラブアン金融サービス庁(Labuan FSA)、財務省(日本)の公表内容をもとにルシュエット編集部が作成。評価は一般的な傾向で、業種と実際の持分構成によって変わります。

なお、この記事は税金と優遇に絞っています。設立の手続き・実費・必要書類は会社設立の記事、駐在員事務所や支店との使い分けは形態比較の記事、渡航されるご本人の所得税や社会保険は移住の税金の記事で扱っています。

表で目を引くのは3列目の「×」です。日本人が100%出資すると、中小企業向けの軽減税率が原則として使えません。「マレーシアは中小企業の税金が安い」という説明は、日本人が単独で作る会社には当てはまらないということです。

法人税率の基本と、軽減税率が使えなくなる条件

まず基本の税率です。マレーシアの居住法人の標準税率は24%で、中小企業に当たる会社だけが軽減税率の階段を使えます。階段は、課税所得の最初のRM150,000が15%、RM150,001〜600,000が17%、それを超える部分が24%です。

ここで大事なのは順序です。条文は原則24%で、要件を満たした会社が軽減税率に降りてくる建て付けです。要件を1つでも欠けば24%に戻ります

中小企業として扱われるための5つの要件

マレーシアの中小企業(MSMC)に当たるには、次の5つをすべて満たす必要があります。

①資本基準期間の開始時点で、払込普通株式資本がRM2,500,000以下
②売上その基準期間の事業総所得がRM50,000,000以下
③支配(する側)払込資本RM2,500,000超の会社を支配していない
④支配(される側)払込資本RM2,500,000超の会社に支配されていない
⑤外国株主払込普通株式資本の20%超を、国外で設立された外国法人または非マレーシア国民が直接・間接に保有していない(賦課年度2024から)

※LHDNの公表内容および会計事務所各社の解説をもとに整理したものです。適用の判定は個別事情で変わるため、現地の会計事務所にご確認ください。

賦課年度2024から加わった「外国株主20%」の条件

実務でいちばん影響が大きいのが⑤です。払込資本の20%超を外国法人や非マレーシア国民が持つ会社は、資本も売上も小さくても中小企業に当たらないとされました。

この条件を素直に読むと、日本人が100%出資したSdn Bhdは中小企業に該当しません。つまり課税所得がRM100,000でも、15%ではなく24%で計算される扱いになります。逆に、外国側の保有がちょうど20%にとどまる合弁であれば該当し得ます。持分の設計が税率を直接動かすということです。

※ただし判定は、グループ会社との資本関係や実際の株主構成によって変わります。持分を動かす前に、必ず現地の会計事務所に個別の判定をご確認ください。

この20%の条件は税率だけの話ではありません。新設会社に認められている予定納税申告(CP204)の提出免除にも波及し、1年目から申告義務が生じると読める内容になっています。設立の手順や費用はマレーシア会社設立|Sdn Bhdの流れ・費用・ビザの実際で扱っています。

その会社は「マレーシアの居住法人」なのか

もう1つ、見落とされやすい前提があります。ここまでの税率は、すべて居住法人を対象にしたものです。マレーシアの法人の居住判定は登記地ではなく、管理支配(management and control)がマレーシアで行われているかで決まるとされています。

取締役会が実質的に日本で開かれ続ける会社は、この前提が崩れる可能性があります。法人を作る場所と、意思決定を行う場所は、分けて考えてください。会社の形態そのものの選び方は駐在員事務所・支店とSdn Bhdの違いにまとめています。

課税所得の作り方も日本と違う

税率だけを並べても税額は出ません。かける相手である課税所得の計算ルールが、日本とマレーシアで違うからです。代表的なのが減価償却の扱いです。

マレーシアでは、会計上の減価償却費をそのまま損金にせず、税法で定められた資本控除(Capital Allowance)で計算し直します。資産の区分ごとに初年度の控除率と各年の控除率が決められており、会計上の償却年数とは一致しません。

もう1つが利子の損金算入の制限です。国外の関連会社への支払利子が一定額を超える場合、税務上のEBITDAの20%を超える部分は損金にならないとされています。日本の親会社からの借入で回す設計では、ここが効きます。

日本と比べて、実際にいくら違うのか

数字で見ます。日本の法人実効税率は財務省の資料で29.74%とされ、2026年4月に施行される防衛特別法人税の対象になる場合は30.64%になります。マレーシアの24%との差は、単純計算でおよそ6ポイントです。

ただしこの比較は概算です。日本の実効税率には地方税や外形標準課税が含まれ、課税所得の計算ルールも両国で違います。「6ポイント安い」は入口の目安であって、手取りの差ではありません

そのうえで、課税所得別に税額を並べます。為替はRM1≒38.7円で換算しました。

課税所得日本(29.74%)日本人100%出資(24%)軽減税率が使える場合
RM600,000
(約2,322万円)
RM178,440
(約691万円)
RM144,000
(約557万円)
RM99,000
(約383万円)
RM2,000,000
(約7,740万円)
RM594,800
(約2,302万円)
RM480,000
(約1,858万円)
RM435,000
(約1,684万円)

※税率を単純に当てはめた試算です。実際の納税額は損金算入の可否・繰越欠損金・税額控除で変わります。為替は2026年8月時点のRM1≒38.7円で換算しています。

この表には、あまり語られない事実が出ています。軽減税率による節税額は、課税所得がいくら大きくなっても年RM45,000(約174万円)で頭打ちになります。15%と17%が適用されるのは最初のRM600,000までで、そこから先は誰が株主でも24%だからです。

言い換えると、外国株主20%の条件で失うものは、金額としてはRM45,000です。事業規模が大きくなるほど、この差は相対的に小さくなります。ここで気をつけたいのは、この金額のために現地の相手に8割の株を渡すと、会社の支配権を手放すことになる点です。多くの業種で外資100%の設立が認められている以上、税率のためだけに持分を動かす設計はお勧めしません。

税率より先に効くのは、駐在員1名分の人件費

比較の目線をもう1つ足します。就労ビザ(Employment Pass)の給与下限が2026年6月1日に改定され、日本人を1名置くための人件費が上がりました。カテゴリーIが月RM20,000以上、カテゴリーIIがRM10,000〜19,999、カテゴリーIIIがRM5,000〜9,999という区分です。判定は基本給のみで行われ、住宅手当や交通費は含められません。

ここで先ほどの差額と並べてみます。軽減税率で浮くRM45,000は、カテゴリーIIIの下限で置いた駐在員1名の給与9か月分にあたります。持分の設計に悩む時間より、何名を日本から送るかのほうが金額を動かします。就労ビザの区分と要件はマレーシアで働く方法|現地就職と就労ビザEPの条件で扱っています。

現地からのリアル

私たちにご相談いただく進出のお話は、ご家族の帯同とセットになっていることがほとんどです。そして税率の話が先に進むと、お子さんの学校の話が後回しになりがちです。

マレーシアのインターナショナルスクールは、学年の途中でも受け入れる学校がある一方、人気校は募集が埋まる時期があります。会社の形を決める段階で、学校の出願時期も同じ表に並べておくことをお勧めしています。税務のスケジュールとご家族の渡航時期がずれると、赴任される方だけ先に渡り、ご家族が日本に残る期間が生まれます。

税制優遇は「業種」と「場所」で決まる

ここが本題です。マレーシアの税制優遇は、会社の規模が小さいから受けられる制度ではありません。対象の業種・活動と、投資する場所であらかじめ決まっています。多くは申請して認定される仕組みです。先に結論を言うと、数名規模の進出でこれらが適用されることはほとんどありません

主な制度を、現実的な対象とあわせて並べます。法定所得とは、事業所得から必要な控除を差し引いたあとの、税率をかける前の所得のことです。

制度内容現実的な対象
Pioneer Status法定所得の70%を5年間免税認定された製造業・一部サービス業
Investment Tax Allowance(ITA)適格資本支出の60%を5年間、法定所得の70%まで相殺設備投資を伴う事業
Reinvestment Allowance(RA)適格支出の60%を最長15年、法定所得の70%まで相殺既存工場の拡張・近代化
新投資優遇枠組(NIF)新規投資は特別税率0〜15%・最長15年、またはITA最大100%・最長10年で法定所得の70〜100%を相殺。小規模会社の枠は3〜12%・最長15年2026年3月1日から製造業で受付開始、サービス業は後続
Global Services Hub新規はTier1が5%、Tier2が10%で5年または10年。既存会社は付加価値所得に対して5年地域統括・共有サービス。申請は2027年12月31日まで
JS-SEZ(ジョホール)製造業の新規投資で、資本投資RM10億超なら5%・15年、RM5〜10億なら5%・10年大型投資。申請は2034年12月31日まで
ラブアントレーディング活動は監査済純利益の3%、ノントレーディングは0%域外取引・持株。実体要件あり

※MIDA・財務省・Labuan FSAの公表内容をもとに整理した概要です。各制度に細かい適格要件があり、認定は個別審査です。表の下半分は数億円から数百億円規模の投資を想定した制度で、数名規模の進出で対象になることはまれです

日本語の解説がまだ追いついていない2点

1つ目はNIF(New Investment Incentive Framework/新投資優遇枠組)です。2026年3月1日から製造業で申請の受付が始まり、サービス業はその後に続くとされています。従来のPioneer StatusとITAを前提にした説明は、これから見直しが入る領域です。日本語の記事の多くは、まだ旧来の枠組みで書かれています。

とくに製造業の方はご注意ください。投資促進法1986にもとづくPioneer StatusとITAの新規申請は、製造業では2026年2月28日で受付が締め切られました。すでに認定を受けた案件は続きますが、これから申請する製造業の会社の入口はNIFに移っています。

2つ目はPrincipal Hubがすでに終わっていることです。地域統括拠点向けの優遇として知られた制度ですが、新規の受付は2022年12月31日で終了し、後継としてGlobal Services Hubが設けられました。

JS-SEZとラブアン——数字だけを見ると誤解する2つ

JS-SEZ(ジョホール・シンガポール特別経済区)の5%という税率は魅力的に見えますが、この税率と年数が示されているのは製造業の新規投資で、資本投資がRM5億以上のケースです。日本円で200億円前後の規模で、中小企業の進出で届く水準ではありません。

ただしJS-SEZは製造業だけの枠組みではなく、統合型観光やスマート物流など分野ごとに別の条件が置かれています。資本投資額だけで自社を当てはめないでください。

ラブアンの3%も同じです。税率の低さと引き換えに、ラブアンでの常勤従業員の雇用と、年間の運営支出の下限が課されます。活動の区分ごとに常勤従業員が最大4名程度、年間の運営支出がおおむねRM20,000からRM200,000の範囲で定められており、要件を満たさない場合は24%で課税される扱いです。「登記だけラブアンに置く」形は想定されていません。

もう1つ、見落とされやすい除外があります。ロイヤルティなど知的財産権に由来する所得は、この3%や非課税の対象から外れ、通常の所得税法のもとで課税されます。ライセンス収入を軸にした設計では、この点が結論を変えます。

もう1点、規模の大きいグループには逆向きの力が働きます。グローバルミニマム税が2025年1月1日以後開始事業年度から適用され、連結収入7.5億ユーロ以上のグループは実効税率が15%を下回る分を追加で課されます。優遇で下げても15%まで戻される構図です。

現地からのリアル

優遇制度について私たちがお伝えしているのは、「制度の名前を集めるより先に、自社の活動がその制度の対象リストに載っているかを見てください」ということです。制度名はどれも魅力的に見えますが、入口は業種と投資額で閉じています。

数名規模で現地に会社を作られる方の場合、実際には優遇を使わず標準の24%で回している例が一般的です。優遇を前提にした収支計画は、認定が下りなかったときに崩れます。まずは24%で成り立つかを確かめる進め方をお勧めしています。

古い記事に残っている4つの誤り

マレーシアの税制は改定が続いているため、検索で出てくる日本語の解説には期限切れの情報が混ざっています。私たちがご相談で実際に見かける4つを挙げます。

よく見る記載2026年9月時点
法人税は25%標準税率は24%。古い率のまま更新されていない記事があります
Principal Hubで統括拠点の優遇が取れる新規の受付は2022年12月31日で終了。後継はGlobal Services Hub
ラブアンはRM20,000の定額を選べる2019年1月1日に廃止。現在は3%または0%と実体要件
消費税(GST)がかかる2018年9月に廃止。現在は売上税とサービス税(SST)

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会社の形態・滞在年数・お子さんの学年を同じ表に並べると、決める順番が見えてきます。現地スタッフが無料でご相談を承ります。

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税率以外に手取りを決める4つの税

法人税率だけを見て比較すると、実際の負担を読み違えます。マレーシアでは、法人税のほかにSST・源泉徴収税・配当課税・キャピタルゲイン税が事業のどこかに乗ります。順に整理します。

①SST——2025年7月1日に対象が広がった

マレーシアにはGST(消費税に近い制度)がありましたが、2018年9月に廃止され、現在はSST(Sales and Service Tax/売上税・サービス税)が使われています。売上税は原則10%で、定められた品目が5%、免税の品目もあります。サービス税は標準8%で、飲食・物流・電気通信・駐車場などは6%です。

2025年7月1日に課税範囲が拡大しました。賃貸・リースと手数料型の金融サービスが8%、建設・民間医療・教育がそれぞれ6%で対象に加わっています。このうち賃貸・リースは2026年1月1日から6%に下がりましたオフィスを借りる、現地でサービスを受ける——その両方でコストが上がる改定でした。

教育の6%は、対象になる条件が2つに分かれます。私立校は年間の対象料金がRM60,000を超える場合、高等教育機関と語学センターはマレーシア国籍でない学生への提供が対象です。ご家族を帯同される場合、この6%は学費の側に乗ります

登録が必要になる売上のしきい値は、サービス税の一般的な区分で12か月あたりRM500,000とされますが、区分によって水準が異なり、公表資料のあいだで数字が揃っていない箇所があります。自社の業種が対象かどうかは、関税局と財務省の最新の発表でご確認ください。なお駐在されるご家族に直接関わるのは学費のサービス税で、こちらはマレーシア移住の税金・年金・保険で扱っています。

②源泉徴収税——日馬租税条約で下がるものがある

源泉徴収税は、マレーシアの会社が国外の相手に支払うとき、支払い側が差し引いて納める税金です。条約がない場合、利子が15%、使用料(ロイヤルティ)が10%、役務提供や動産の賃貸が10%とされています。

日本との間には租税条約があり、利子と使用料はいずれも10%が上限とされています。日本の親会社にロイヤルティやサービスフィーを払う設計をする場合、この率が資金計画に直接効きます。

ただし役務提供の対価には注意が必要です。日馬租税条約には技術役務の独立した条項がなく、マレーシアに恒久的施設があるかどうかで扱いが分かれます。親会社への送金の設計は、必ず専門家にご確認ください。

配当は少し事情が違います。条約が定める限度税率は持分などに応じて5%または15%ですが、マレーシアが配当に上乗せの税を課していない現状では、実際の源泉徴収は0%です。国内法が変われば条約の率が働く建て付けなので、「条約で0%」と覚えないでください。

③配当——賦課年度2025から個人株主に2%

マレーシアはsingle tier制度で、法人段階で課税が完結し、配当は原則として株主段階で課税されません。日本の二重課税の感覚とは違う部分です。

ただし賦課年度2025から例外が加わりました。個人株主の配当所得のうち、RM100,000を超える部分に2%が課されます。EPF(従業員積立基金)やユニットトラスト経由の配当など、除外される区分もあります。

④キャピタルゲイン税——非上場株式の売却益に10%

マレーシアには長く一般的なキャピタルゲイン税がありませんでしたが、非上場株式の譲渡益に対する10%の課税が導入されました。法律の施行は2024年1月1日ですが、同年1月1日から2月29日までは免除され、実質的には2024年3月1日からの課税です。

ここで押さえておきたいのは、納税義務者の範囲です。対象は会社・LLP・信託体・協同組合で、個人株主が非上場株式を売った場合は原則として対象外とされています。誰の名義で株を持つかによって、出口の扱いが変わります。

2024年1月1日より前に取得した株式については、純利益に10%か、譲渡総額に2%かを選べるとされています。将来の売却や持株の再編まで視野に入れるなら、設立時の株主構成の段階で確認しておく論点です。

あわせて押さえておきたいのが国外資産の扱いです。マレーシアの会社が国外の資産を売って得た利益は、その資金をマレーシアに送金した時点で通常の税率(法人は24%)の対象になるとされています。海外の資産をマレーシア法人で持つ設計では、送金のタイミングが税額を動かします。

申告のカレンダーとe-Invoice

制度の理解より先に効いてくるのが期限です。マレーシアの法人税は、事業年度が始まる前に見積りを出すところから始まります。日本の感覚で「決算後に申告する」と考えていると、初年度でつまずきます。

手続き期限
CP204(予定納税の見積申告)基準期間の開始30日前まで。納付は事業年度2か月目から。新設会社は2年間の提出免除があるが、中小企業に当たらない会社は対象外と読める
CP204の修正事業年度の6か月目と9か月目(賦課年度2024からは11か月目にも可)
Form C(法人税確定申告)会計期間終了後7か月以内。電子申告での取り扱いは資料により記載が分かれる
財務諸表の作成(初回)設立から18か月以内

※LHDNおよびPwC Worldwide Tax Summariesの公表内容をもとに整理しています。ペナルティの率を含め、実際の適用は個別の状況で変わります。

e-Invoice(MyInvois)——2026年1月1日から小規模事業者も

e-Invoiceは、請求書をLHDNのシステムに送って認証を受ける電子インボイス制度です。義務化は売上規模ごとに段階的に進みました。年商RM1億超が2024年8月1日、RM2,500万〜1億が2025年1月1日、RM500万〜2,500万が2025年7月1日、RM500万以下が2026年1月1日です。

ただし小規模な事業者には免除があり、この基準がここ1年で2度引き上げられました。当初のRM500,000から2025年12月にRM1,000,000へ、さらに2026年9月1日から年商RM3,000,000未満が免除となっています。数名規模で始める会社の多くは、当面この免除の範囲に入ります。

とはいえ、取引先が対応していれば自社にも影響が及びます。免除に当たるかどうかは、必ずLHDNの最新の公表内容でご確認ください

グループ内取引がある場合は移転価格の文書化も

移転価格は、親子会社間の取引価格が第三者との取引と同じ水準かを見る制度です。売上RM3,000万超かつ国外関連者との取引がRM1,000万以上の場合などに、詳細な文書の作成が求められます。

特徴的なのは提出の速さです。要請から14日以内に出せない場合、賦課年度ごとに罰則が科されます。日本の親会社との取引がある会社は、決算のたびに準備しておく前提で考えてください。

日本側の税金も同時に動く

最後に、マレーシア側だけを見ていると見落とす論点です。マレーシアで税率を下げると、日本側で取り戻される仕組みが用意されています

日本には外国子会社合算税制(いわゆるタックスヘイブン対策税制)があり、租税負担割合が一定の水準を下回る外国関係会社の所得は、日本の親会社や株主の所得に合算されて課税される場合があります。ラブアンの3%のような低い税率を選ぶ判断は、この制度とセットで検討する必要があります

逆に、一定の要件を満たす外国子会社から受ける配当を日本側の益金に算入しない扱いもあります。合算されるのか、益金に入らないのか——同じ配当でも結論が反対に振れる領域なので、金額の大きい判断ほど早めに確認してください。

日馬租税条約は1999年発効の本体に、2010年の改正議定書とMLIが重なった状態で、どの条項が効くかはケースで変わります。ここはご事情ごとに結論が変わる領域なので、必ず日本の税理士にご相談ください。私たちが判断できる範囲ではありません

検討の進め方(5ステップ)

  1. 持分構成を先に決める

    外国株主が20%を超えるかどうかで、軽減税率とCP204の扱いが変わります。合弁にするなら、この段階で相手を決めておきます。

  2. 自社の活動が優遇の対象リストにあるか確認する

    MIDAの各ガイドラインで、業種・活動・投資額の要件を見ます。届かない場合は24%前提で収支を組みます。

  3. 税率以外の税を積み上げる

    SSTの登録義務、国外への支払いにかかる源泉徴収税、配当で抜くときの2%を、月次の資金繰りに入れます。

  4. 日本側の扱いを税理士に確認する

    外国子会社合算税制と租税条約の適用を、日本の税理士に確認します。マレーシア側の結論が変わることがあります。

  5. 渡航とご家族の予定を同じ表に載せる

    設立・ビザ・学校の出願時期を1枚に並べます。ここがずれると、ご家族の渡航が半年単位で遅れます。

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よくある質問

マレーシアの法人税は結局何%ですか?

居住法人の標準税率は24%です。中小企業に当たる会社だけ、課税所得の最初のRM150,000が15%、RM150,001〜600,000が17%、それを超える部分が24%という軽減税率を使えます。条文の建て方は原則24%で、要件を満たした会社だけが軽減税率に降りる順序です。日本人が100%出資した会社は、後述の外国株主要件により原則として最初のリンギットから24%で計算される扱いになります。

日本人が100%出資すると、中小企業向けの軽減税率は使えないのですか?

賦課年度2024から、払込普通株式資本の20%を超える部分をマレーシア国外で設立された外国法人または非マレーシア国民が直接・間接に保有している会社は、中小企業の定義から外れる扱いが加わりました。この条件に当たると、払込資本や売上の要件を満たしていても標準税率の24%で計算されます。持分構成しだいで結論が変わる部分なので、実際の適用可否は現地の会計事務所にご確認ください。

Pioneer StatusやITAは、小さな会社でも取れますか?

これらは申請して当局に認定される制度で、対象の業種・活動があらかじめ決められています。製造業や特定のサービス業が中心で、審査では投資額・雇用・技術移転などが見られます。2026年3月1日からは製造業で新投資優遇枠組(NIF)の運用が始まり、サービス業は後続とされています。数名規模の商社や小売の会社が自動的に対象になる制度ではないとお考えください。

ラブアン法人にすれば税率3%になりますか?

ラブアンの事業体でトレーディング活動を行う場合、監査済純利益に対して3%、ノントレーディング活動は0%とされています。ただし実体要件があり、活動の区分ごとにラブアンでの常勤従業員数と年間運営支出の下限が定められています。要件を満たさない場合は24%で課税される扱いになります。RM20,000の定額を選ぶ制度は2019年1月1日に廃止されました。

利益を配当で受け取れば、マレーシアでは課税されないのですか?

マレーシアはsingle tier制度で、法人段階で課税が完結し、配当は原則として株主段階で課税されません。ただし賦課年度2025から、個人株主の配当所得のうちRM100,000を超える部分に2%が課される例外が加わりました。加えて日本の居住者が受け取る場合は日本側の課税があり、外国子会社合算税制の対象になるかどうかも別途の論点になります。日本側の扱いは日本の税理士にご確認ください。

e-Invoice(電子インボイス)は小さな会社も対応が必要ですか?

MyInvoisの義務化は年間売上の規模ごとに段階的に進み、内国歳入庁(LHDN)の実施タイムラインでは年商RM5,000,000以下の事業者は2026年1月1日からとされています。ただし小規模な事業者には免除があり、その基準は2026年9月1日から年商RM3,000,000未満に引き上げられました。数名規模で始める会社の多くは当面この範囲に入りますが、自社が免除に当たるかどうかは必ずLHDNの最新の公表内容でご確認ください。

本記事に記載した費用・制度・学校情報は、2026年8月時点に公開されている情報にもとづく目安です。為替はRM1≒38.7円で換算しています。制度や料金は改定されることがあるため、お申し込みの前に各公式サイト、または当社までご確認ください。