結論から言うと、現行のMM2Hの条件は「定期預金を預ける」と「住宅を買う」の2本柱です。定期預金はUSD建てでUSD32,000〜1,000,000、住宅購入は4カテゴリーすべてで義務。そして日本語でよく見る「月収RM40,000」「10年ビザ」「不動産購入は任意」は、いずれも現行制度の条件ではありません。この記事では、観光芸術文化省(MOTAC)が公表している現行ガイドラインだけを使って、条件と費用を整理します。
まず前提:今のMM2Hは2024年7月基準の制度
MM2H(Malaysia My Second Home)は、観光芸術文化省が所管する長期滞在プログラムです。取得すると、決められた年数のあいだ何度でも出入国できる滞在許可が家族単位で得られます。
ここでいちばん大事な前提をお伝えします。現行の条件は、公式資料に「2024年7月22日時点」と明記された規約が土台になっています。つまりそれ以前に書かれた記事の数字は、そのまま使えません。
ところが実際には、タイトルに「2026年最新」と付いていながら、中身は2021年の条件のままという記事が今も上位に並んでいます。ご家庭の資金計画に直結する部分なので、まず「その記事がどの世代の制度を書いているか」を見分けるところから始めてください。
古い情報を1秒で見分ける3つのサイン
読んでいる記事に次のどれかが書かれていたら、それは現行制度ではありません。判定はこの3点で足ります。
①「月収RM40,000(オフショア所得)が必要」と書いてある。現行規約には、全カテゴリーでオフショア所得の要件は撤廃されたと明記されています。②「MM2Hは10年ビザ」と書いてある。現行はカテゴリーごとに5年・10年・15年・20年と分かれます。③「不動産購入は任意」と書いてある。現行は全カテゴリーで購入と保有が条件です。
ご相談のなかで、いちばんよくある行き違いがここです。「調べたら2,000万円くらいと書いてあったので、それで考えていました」とおっしゃる方に現行条件をお伝えすると、金額そのものより「不動産を買わないといけない」という部分で表情が変わります。
お金の総額は工夫できても、住宅の購入は10年間動かせない決断になります。数字を比べる前に、まずご家族がマレーシアに家を持つつもりがあるかどうか。そこを先に決めていただくと、その後の判断がぐっと速くなります。
4カテゴリーの条件を一覧で比べる
現行のMM2HはPlatinum/Gold/Silver/SEZ・SFZの4つに分かれます。違いは定期預金の額と、それに連動するパスの年数・住宅の最低価格です。
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| 項目 | Platinum | Gold | Silver | SEZ/SFZ |
|---|---|---|---|---|
| 定期預金(FD) | USD100万 | USD50万 | USD15万 | USD6.5万(21〜49歳) USD3.2万(50歳以上) |
| 円の目安 | 約1億5,600万円 | 約7,800万円 | 約2,340万円 | 約1,010万円/約500万円 |
| パスの有効期間 | 20年 | 15年 | 5年 | 10年 |
| 主申請者の年齢 | 25歳以上 | 25歳以上 | 25歳以上 | 21歳以上 |
| 住宅購入(最低額) | RM200万 | RM100万 | RM60万 | 経済特区の設定価格 |
| 参加費(一回限り) | RM20万 | RM3,000 | RM1,000 | RM1,000 |
| 更新料 | RM5,000 | RM3,000 | RM1,500 | RM300 |
| 就労・事業 | 可 | 不可 | 不可 | 不可 |
表で最初に目を留めていただきたいのは、Silverのパスが5年しかないことです。「MM2Hを取れば10年は安心」というイメージで検討を進めると、5年後に更新の審査が来ます。お子さんが小学生のうちに取得した場合、中学生になる頃に一度更新をまたぐと考えておくと計画が立てやすくなります。
もうひとつがSEZ・SFZ枠です。定期預金はSilverの半分以下で、パスは10年、年齢も21歳から。数字だけ見れば、いちばん条件の軽い入口です。
ただしこの枠には場所の制約があります。公式サイトでは住宅の購入先がジョホール州の経済特区(フォレストシティ)とされ、さらに不動産業者や既存オーナーからではなく開発業者から直接購入することが求められると案内されています。加えて、他のカテゴリーが「パスの裏書き後1年以内に購入」でよいのに対し、SEZ枠は裏書きの前に購入して保有している必要があるとされています。順番が逆なのです。
なお公式サイトと公式PDFのあいだで、対象エリアの書き方や年齢帯の記載が一致していない箇所があります。SEZ枠を本気で検討される場合は、必ず認可事業者を通じて現行の扱いを直接確認してください。
実際にどのカテゴリーが選ばれているかも参考になります。専門メディアの報道によれば、新制度の開始から2024年末までに承認された782件のうち、大半をSilverが占め、GoldとPlatinumは合わせても二桁に届いていません。検討の出発点がSilverとSEZに集まっていることが数字にも表れています。
「Silverだから RM60万の家でいい」とは限りません
ここは試算を大きく狂わせる落とし穴なので、先にお伝えします。MM2Hが定める住宅の最低価格と、外国人が不動産を買えるかどうかを決める規制は、別のものです。
マレーシアには連邦の不動産取得ガイドラインがあり、外国人は原則として1戸あたりRM100万未満の住宅を取得できないとされています。さらに実際の価格の下限は州が決めており、上乗せされている州もあります。たとえばセランゴール州の一部ゾーンでは分譲住宅がRM200万以上で、土地付き住宅はそもそも取得できないとされています。
一方でMM2Hの参加者には別枠が用意されている場合があります。ペナン州の公式資料では、MM2H保有者は島部・本土ともRM50万から、最大2ユニットまで取得できるとされています。連邦の原則より低い水準です。
つまり「MM2Hの最低額」「州の下限」「MM2H向けの特例」の3つが重なるのがこの分野です。「Silverだから2,300万円の物件で足りる」と決め打ちせず、住みたい州を決めてから、その州の現行の扱いを確認してください。州ごとの条件は 外国人のマレーシア不動産購入 でも整理しています。
費用は「預ける・買う・払う」の3層で見る
MM2Hの費用が分かりにくい最大の理由は、性質のまったく違うお金がひとまとめに「必要資金」と呼ばれていることです。ここを3層に分けると、家計への影響が正しく見えます。
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| 層 | 中身 | 戻ってくるか |
|---|---|---|
| ① 預けるお金 | 定期預金(USD3.2万〜100万) | 資産として残る。1年経過後に最大50%を引き出せるとされる |
| ② 買うお金 | 住宅(RM60万〜200万以上)+購入時の諸経費 | 資産として残るが10年間売却できない |
| ③ 払うお金 | 参加費・手続料・更新料・パス料・健康診断・医療保険・事業者手数料 | 戻らない |
※金額・条件は2026年9月時点の公式公表情報にもとづく整理です。改定されることがあるため、申請時点の条件を必ずご確認ください。
ご家庭の負担感を左右するのは、実は③の「戻らないお金」です。①と②は形を変えて手元に残りますが、③は純粋な支出になります。それなのに、日本語の記事で③を項目立てしているものはほとんど見当たりません。
③「払うお金」の内訳
公式に金額が示されているものを並べます。まず参加費が一回限りで、Silver・SEZはRM1,000、GoldはRM3,000、PlatinumはRM200,000です。次に手続料が主申請者RM5,000、扶養家族は1名につきRM2,500かかります。更新料はSilverがRM1,500、GoldがRM3,000、PlatinumがRM5,000、SEZがRM300です。
見落とされやすいのが毎年かかる固定パス料で、1人あたり年RM500とされています。ビザ料は国籍によりRM0〜RM50です。家族3人なら固定パス料だけで年RM1,500、約5.8万円が継続的に出ていく計算になります。
このほか健康診断が必要です。承認後にMOTACが指定する医療機関で、主申請者と扶養家族の全員が受診します。医療保険も60歳以下の申請者には必須とされ、マレーシアまたは海外の保険会社で世界的に有効な補償であることが求められます。
住宅を買う以上、不動産の印紙税と、売買にともなう弁護士費用・登記関連の費用もこの層に入ります。印紙税は2026年に外国人の扱いが変わったので、あとの章で詳しくお伝えします。
そして認可事業者の手数料です。MM2Hは個人で直接申請できず、必ずMOTACの認可を受けた事業者を通します。この手数料には公式に定められた金額がありません。事業者ごとに設定が異なるため、見積もりを取って比較する部分になります。
費用の相談で私たちが必ずお伝えしているのが、「毎年出ていくお金」を先に確定させてくださいということです。取得時の大きな金額には皆さん身構えるのですが、固定パス料・医療保険・更新料といった継続コストは見積もりから抜け落ちがちです。
とくに医療保険は、年齢が上がるほど保険料も上がります。5年後・10年後の更新時に「保険料が想定の倍になっていた」となると、せっかく整えた暮らしが揺らぎます。今の保険料ではなく、更新時の年齢での保険料で試算しておくことをおすすめします。
Silverで試算するといくらになるか
結論を先にお伝えします。ご夫婦とお子さん1人の3人家族でSilverを取る場合、手元から動かす資産がおよそ4,660万円、初年度に戻らない支出が約48万円+印紙税約186万円+実費という形になります。内訳を並べます。円換算はUSD1≒156円・RM1≒38.7円(2026年9月)の概算です。
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| 項目 | 金額 | 円の目安 |
|---|---|---|
| ① 定期預金 | USD150,000 | 約2,340万円 |
| ② 住宅購入(最低額) | RM600,000〜 | 約2,320万円〜 |
| ③ 参加費(一回) | RM1,000 | 約3.9万円 |
| ③ 手続料(主+扶養2名) | RM10,000 | 約39万円 |
| ③ 固定パス料(3人・毎年) | RM1,500/年 | 約5.8万円/年 |
| ③ 更新料(5年後) | RM1,500 | 約5.8万円 |
| ③の小計(初年度・公式分のみ) | RM12,500 | 約48万円 |
| ③ 印紙税(外国人8%) | RM48,000 | 約186万円 |
※健康診断・医療保険・認可事業者の手数料は公式に金額が定められていないため、上表には含めていません。実際の見積もりではこれらが上乗せされます。※法務費用も別途かかります。
「2,000万円くらい」というイメージとの差は、ほぼ住宅購入の分です。そして戻らない支出のうち大半を占めるのが、実は不動産の印紙税だと分かります。この税率は2026年に変わったばかりなので、あとで詳しくお伝えします。
USD建てだから、円での必要額は動きます
ここが日本語の記事でほとんど触れられていない点です。定期預金の要件はUSD建てで固定されています。ですから円安が進めば、同じUSD150,000でも用意すべき円は増えます。
実際、Silverの円換算は記事によって1,500万円から2,400万円まで開きがあります。これは制度が違うのではなく、各記事が書かれた時点の為替が違うだけです。ご家庭で試算されるときは、必ずUSD建ての原数字を基準に置き、円はその時点の目安として扱ってください。
なお2025年5月の公式告知では、定期預金は各カテゴリーのUSD相当額に等しいリンギット建てで預け入れることが推奨されると案内されています。この点も事業者に確認しておきたいところです。
条件で見落とされやすい5つのこと
金額の話が片づいたあとで「そこは知らなかった」と言われることが多い5点をまとめます。どれも取得後の暮らし方に直結します。
1. 買った住宅は10年間売れない
現行制度では、購入した住宅は10年間の売却が禁止とされています。認められるのは同額以上の物件への買い替えのみで、違反した場合はパスの取り消しにつながるとされています。「合わなければ数年で引き上げればいい」という前提は成り立ちません。
「申請より前に買った家は認められるのか」というご質問もよくいただきます。公式の告知では、定期預金を住宅購入のために引き出せる条件として、Platinum・Gold・Silverはパス裏書きの2年前まで、SEZ枠は6か月前までにさかのぼった購入が挙げられています。つまり先に購入していても扱われる余地はあります。ただし新築か中古かを含め運用の細部は公表されていないため、すでに物件をお持ちの場合は必ず事前に認可事業者へご確認ください。
2. 定期預金の引き出しは1年後・用途も限られる
定期預金は最大50%まで引き出せるとされていますが、時期は参加承認から1年経過後です。用途も住宅購入・教育・医療・国内旅行に限られます。渡航直後の生活費として当てにはできません。
3. 年90日の滞在義務は「50歳未満だけ」
年間90日という数字が一人歩きしていますが、公式には50歳以上には最低滞在の要件がないとされています。さらに25〜49歳の方は、主申請者本人だけでなく配偶者や扶養家族の滞在で日数を満たせると案内されています。ご主人が日本で働き続け、奥さまとお子さんがマレーシアで暮らす形でも成り立つ設計です。
4. 働けるのはPlatinumだけ
就労と事業・投資活動が認められているのはPlatinumのみです。Gold・Silver・SEZは不可とされています。「移住したら現地で働けばいい」という計画は、MM2Hでは基本的に通りません。現地で働くことが前提なら、就労ビザ(EP)や別の制度を検討することになります。
5. 扶養家族の範囲は思ったより広い
同伴できるのは配偶者と21歳未満のお子さんが基本です。21〜34歳のお子さんも、無職かつ独身であることを条件に含められるとされています。医学的に証明された障害のあるお子さんには年齢の制限がありません。さらにご両親・義理のご両親も対象です。扶養家族の参加費は無料で、かかるのは手続料RM2,500のみとされています。
※お子さんの上限年齢については、公式資料のあいだで34歳と35歳の記載が分かれています。本記事は各カテゴリー詳細ページの表記に合わせています。実際の可否は申請時点で必ずご確認ください。
細かい点では、外国人のメイドを同伴できるのはPlatinumのみとされています。また主申請者に万一のことがあった場合、パスは登録済みの扶養家族の近親者へ引き継げるとされており、家族単位の制度として設計されていることが分かります。
申請の流れと窓口
MM2Hは個人で直接申請できません。1992年観光産業法にもとづくMOTACのライセンスを持つ事業者を通じ、ワンストップセンター(OSC MM2H)に提出する仕組みです。新規も更新も同じ経路になります。
認可事業者を選ぶ
MOTACのライセンスを持つ事業者かどうかを最初に確認します。手数料には公式の定めがないため、複数から見積もりを取って比べます。
申請書類を提出する
申請書(IMM.12)2部、主申請者と扶養家族のパスポート、18歳以上は無犯罪証明書などを事業者経由でOSCへ提出します。
審査を受ける
従来のセキュリティ審査に加え、2025年5月の告知で警察(PDRM)による無作為の面接が導入されたと案内されています。
条件付承認を受け、90日以内に準備する
承認が下りたら90日以内に、定期預金証明・医療保険・健康診断書・内国歳入庁で印紙を押した誓約書・有効なパスポートを揃えます。
費用を支払い、パスの裏書きを受ける
参加費と手続料を納め、パスポートにMM2Hパスの裏書きを受けます。住宅の購入は裏書き後1年以内(SEZ枠は裏書き前)とされています。
気になる審査期間ですが、連邦MM2Hについて「申請から承認まで何日」という標準期間は公式に公表されていません。承認後の準備期間が90日という規定はありますが、その前段は書類の揃い方や時期で変わります。渡航時期から逆算する場合は、余裕を持った計画をおすすめします。
なお2025年10月からは、事業者がオンラインの予約システムを通じて申請する運用に切り替わったと告知されています。
ご家族に合う形を、一緒に整理しませんか?
MM2Hが向いているのか、別のルートのほうが早いのか。
現地スタッフが、ご家族の状況に合わせて個別に整理します。
税金と不動産で「別にかかる」お金
ここは多くの記事が「海外所得は非課税」の一文で終わらせている領域です。しかし実際には、押さえるべき論点が3つあります。ご家庭の資金計画に効く順に整理します。
「非課税」を決めているのはビザではありません
まず前提として、マレーシアの税務上の居住者かどうかは所得税法第7条で決まります。その基準は原則としてその年の滞在が182日以上かどうかで、ビザの種類は判定基準に入っていません。よく見かける「183日」は正確ではなく、条文は182日です。
したがって「MM2Hを取ったから非課税になる」という理解は成り立ちません。実際にどれだけマレーシアにいるかが判断の軸です。
マレーシア国外で得た所得(海外の給与・年金・配当など)については、居住者個人向けの非課税措置が、2024年12月の官報告示によって当初の2026年12月31日から2036年12月31日まで10年延長されています。「2026年末で切れる」と書いている記事は、この延長を反映していません。
ただし無条件ではありません。その所得が源泉国ですでに所得税に相当する課税を受けていることが要件で、マレーシア国内のパートナーシップ事業から生じた所得は対象外とされています。そして免除されても、確定申告の義務そのものはなくなりません。「非課税だから何もしなくていい」ではない点にご注意ください。
日本側で非居住者になれるかは、まったく別の問題
ここが最も見落とされる論点です。マレーシアで居住者になっても、日本の居住者から自動的に外れるわけではありません。
国税庁は「滞在日数のみによって判断するものでない」とし、外国に1年の半分以上滞在していても日本の居住者となる場合があると明示しています。ご家族の住まい・資産・職業の状況を総合して判断されるためです。日本側の扱いは、必ず税務の専門家にご確認ください。
住宅を「買う」制度なので、不動産の税が効いてきます
MM2Hは住宅購入が条件なので、不動産まわりの税金が費用に直結します。ここは2026年に大きく変わったところなので、少し詳しくお伝えします。
まず譲渡証書(MOT)にかかる印紙税です。2025年12月に成立した財政法により、2026年1月1日以降、マレーシア国籍でも永住権者でもない外国人が住宅用不動産を取得する場合の印紙税は一律8%になりました。対価の額と市場価値の高いほうに対して課され、価格帯による段階はありません。
一方でマレーシア国民と永住権者は従来どおり1〜4%の累進です。また外国人でも、商業用・工業用の不動産は一律4%が続きます。引き上げの対象は住宅用に絞られています。
これはMM2Hの試算に直接効きます。Silverの最低額であるRM600,000の住宅を買う場合、印紙税だけでRM48,000、日本円でおよそ186万円。従来の4%と比べて負担が倍になった計算です。先ほどの「払うお金」に、この分を必ず加えてください。
※2025年中に売買契約を結んだ案件がどちらの税率になるかは、法文に明示がありません。該当しそうなご家庭は、購入前に必ず現地の弁護士・税理士にご確認ください。
次に不動産譲渡益税(RPGT)です。外国人の場合、保有5年目までの売却で30%、6年目以降でも10%が課されるとされています。マレーシア国民や永住権保有者が6年目以降は0%になるのとは扱いが違います。10年の売却制限が明けたあとも、売却益には税がかかると考えておいてください。
一方で、マレーシアには相続税・遺産税・贈与税がありません。また2024年3月から導入されたキャピタルゲイン税は法人などが対象で、個人は対象外とされています。日本側の課税は別途判断が必要ですが、この点はマレーシアが選ばれる理由のひとつです。
税金まわりの手続きの順番は マレーシア移住の税金・年金・保険、物件購入そのものの条件は 外国人のマレーシア不動産購入 で詳しく整理しています。
サラワク・サバは連邦MM2Hとは別制度
ここまでは連邦のMM2Hの話です。ボルネオ島の2州は独自のプログラムを運用しており、条件がかなり違います。
サラワク州のS-MM2Hは、2025年1月1日から新しい要件になったと州の所管官庁が告知しています。30歳以上で、州内の銀行に定期預金RM500,000(配偶者・扶養家族を含めて1申請あたり)を預け入れること。州内に年30日以上の滞在が延長・更新の条件で、パスは5年+更新でさらに5年です。
連邦MM2Hとの最大の違いは、住宅の購入が義務ではないことです。S-MM2Hの公式ポータルでは、承認された参加者は住宅を購入することが「できる」と案内され、価格の下限はクチンでRM600,000、その他の地域でRM500,000とされています。審査には90営業日かかり、オンライン申請には対応していないとされています。
※S-MM2Hについては、州の所管官庁の告知と観光局ポータルのFAQで内容が一致していない箇所があります(FAQには改定前の年齢・預金額が残っています)。検討される場合は必ず州の窓口に直接ご確認ください。
サバ州のSabah-MM2Hは2024年6月30日に開始され、州の観光文化環境省が所管しています。Silver・Gold・Platinumの3層で、Silverは25歳以上・定期預金RM500,000、高層住宅をRM600,000以上で購入することが条件とされています。年30日のサバ州内滞在が必要で、居住できるのはサバ州内に限られ、マレー半島側へ移る場合は移民局の承認が要るとされています。
なお日本語のネット記事には「サバのSilverは定期預金RM150,000」といった記述が見られますが、州の公式サイトの現行記載とは一致しません。州のプログラムは連邦以上に情報が古くなりやすいと考えて、必ず州の公式で確認してください。
教育が目的なら、MM2Hが最短とは限りません
最後に、お子さんの教育を目的にマレーシアを検討されているご家庭へ、いちばんお伝えしたいことを書きます。その目的なら、MM2Hは必須ではありません。
MM2H公式のガイドラインでは、扶養家族として登録されたお子さんは政府が認める教育機関で学べるとされ、既存のMM2Hパスのまま、または学生パスが付与される形になると案内されています。制度としてはきちんと道筋があります。
ただ、そのために定期預金USD150,000と住宅RM600,000以上を用意する必要があります。一方で、お子さんが学生パスを取り、保護者が付き添い用のパスで滞在するルートなら、大きな預金も住宅購入も要りません。実際、教育を目的に来られるご家庭の多くはこちらを選ばれています。ただし付き添える人数や続柄には制限があるため、ご夫婦そろって滞在したい場合は事前の確認が必要です。
それでもMM2Hが向くのは、15年・20年という単位でマレーシアに軸足を移すご家庭や、マレーシアに資産として家を持ちたいご家庭です。逆に「まず数年、お子さんの英語環境のために」という段階であれば、MM2Hから入るとハードルを自分で上げてしまうことになります。
条件に届かないと感じたときの考え方
「調べたけれど、うちには届かない」と感じてこのページにたどり着いた方も多いはずです。実際、MM2Hに関する検索でよく入力される言葉のひとつが「収入が足りない」です。
ここで整理しておきたいのは、MM2Hに届かないことと、マレーシアで暮らせないことは別だという点です。現行のMM2Hは資産を条件にした制度で、暮らす資格そのものを独占しているわけではありません。
お子さんの就学が目的なら学生パスと保護者パス、海外の仕事を続けるならデジタルノマド向けの制度、現地企業に雇われるなら就労ビザ。どれもMM2Hのような大きな定期預金や住宅購入を必要としません。ご家庭の目的から選び直すと、選択肢はむしろ広がります。
どのルートが合うかは、滞在年数・親御さんの働き方・お子さんの年齢で変わります。制度の全体像は マレーシア移住のビザの種類、リモートワークで暮らす選択肢は DE Rantau(デジタルノマドビザ) にまとめています。
ビザから決めようとすると、かえって遠回りになります。学生パスも保護者パスも学校が出す書類が起点ですし、MM2Hであってもお子さんの受け入れ手続きは学校ごとに運用が違います。
私たちがおすすめしているのは、志望校を数校に絞ってから、その学校の手続きに合わせて滞在方法を組む順番です。結果的にこのほうが早く、やり直しも起きません。学校選びと住まい探しは並行して進められるので、早めに動き始めていただくのが安心です。
よくある質問
MM2Hでいちばん条件が軽いのはどのカテゴリーですか?
公式の4カテゴリーのうち、定期預金の額がもっとも小さいのはSEZ/SFZ枠です。50歳以上でUSD32,000、21〜49歳でUSD65,000とされ、パスは10年、参加費はRM1,000です。ただし住宅の購入場所がジョホール州の経済特区に限られ、購入はパスの裏書き前に済ませておく必要があるとされています。地域を限定せずに住みたい場合は、定期預金USD150,000・住宅RM600,000以上のSilverが実質的な入口になります。条件は改定が続いているため、申請時点の公式ガイドラインで必ずご確認ください。
MM2Hは不動産を買わないと取れませんか?
現行の連邦MM2Hでは、4カテゴリーすべてで住宅の購入と保有が条件に含まれています。最低価格はSilverがRM600,000以上、GoldがRM1,000,000以上、PlatinumがRM2,000,000以上です。購入した住宅は10年間売却できず、同額以上への買い替えのみ認められるとされています。「不動産購入は任意」という説明は旧制度のもので、現行制度では当てはまりません。なお州が独自に運用するサラワク州のS-MM2Hでは、住宅購入は義務ではなく任意と案内されています。
MM2Hを取ると、海外の所得に税金はかからなくなりますか?
「MM2Hを持っているから非課税」という理解は正確ではありません。マレーシアの税務上の居住者かどうかは所得税法第7条にもとづき、原則としてその年の滞在日数が182日以上かどうかで判定され、ビザの種類は判定基準に入っていません。マレーシア国外で得た所得については、居住者個人向けの非課税措置が2024年12月の官報告示で2036年12月31日まで延長されていますが、源泉国ですでに所得税に相当する課税を受けていることが要件で、免除されても申告義務は残ります。さらに日本側で非居住者になれるかは別問題で、国税庁は滞在日数だけで判断するものではないと明示しています。実際の判断は必ず税務の専門家にご相談ください。
MM2Hがあれば、子どもをインターナショナルスクールに通わせられますか?
MM2H公式のガイドラインでは、扶養家族として登録されたお子さんは政府が認める教育機関で学べるとされ、既存のMM2Hパスのまま、または学生パスが付与される形になると案内されています。ただし受け入れの手続きは学校ごとに運用が違うため、志望校への確認は欠かせません。また、お子さんの就学だけが目的であれば、MM2Hは必須ではありません。お子さんが学生パスを取り、保護者が付き添い用のパスで滞在するルートを選ぶご家庭が多くあります。
MM2Hの年間90日の滞在義務は全員に必要ですか?
公式ガイドラインでは、年間の累計滞在90日は50歳未満の参加者に求められる条件とされ、50歳以上には最低滞在の要件がないと案内されています。さらに25〜49歳の参加者については、主申請者本人だけでなく配偶者や扶養家族の滞在で日数を満たすこともできるとされています。ご家族の誰かが暮らしていれば条件を満たせる設計です。ただし更新時の運用は変わることがあるため、最新の条件は公式情報でご確認ください。