結論から言うと、マレーシア教育視察の成否は「訪問先の選定」より日程の設計で決まります。理由は2つあります。マレーシアは英国式インターナショナルスクールが8月始まり、現地の国民学校(公立)が1月始まりという二重の学年暦を持つこと。そして祝日の一部がイスラム暦にもとづくため年ごとに日付が動き、直前に追加されることもあること。この2つを外すと「学校には入れたが、先生も生徒もいなかった」という視察になります。この記事では、視察先の4つの層・時期の決め方・費用の内訳項目・入国時の線引きを、現地の実務の順番で整理します。なお、学年暦と祝日の条件は個人で親子留学の下見を計画される保護者の方にもそのまま当てはまります。
教育視察は「4つの目的」で行程が変わる
まず整理したいのは、ひとくちに「教育視察」「スタディツアー」と呼ばれるものが、目的によって行程の型がまったく違うという点です。同じ「学校を見に行く」でも、見るべき相手も、押さえるべき時間帯も変わります。実務では次の4つに分かれます。
- ① 教育移住・親子留学の下見(保護者ご本人/社員の家族向けに情報を集める企業)……候補校を短時間で比較したい。1日に複数校を回る密度が要る。
- ② 修学旅行・海外教育旅行の下見(高校・中学・教育委員会)……本番の行程が成立するかの検証。学校訪問だけでなく宿泊地・移動・食事・安全面まで通しで見る。
- ③ 教員研修・学校法人としての視察……授業の中身や指導法を見たい。「授業を見せてもらう」交渉が必要になるため、事前の打診が最も重い。
- ④ 提携先・進学先の開拓(大学・専門学校のグローバル担当、教育系企業)……見るのは施設ではなく相手の意思決定者。面談枠が取れるかが行程の主軸になる。
この4つのうち、日程の自由度が一番低いのは③、次に④です。①と②は「学校が開いている日」であれば比較的組みやすい一方、③は授業のある日でなければ意味がありません。最初に「何が分かれば視察は成功なのか」を1文で決めてから日程を引くと、後戻りが減ります。
私たちが日常的にお受けしている学校見学の同行から、行程の density(密度)の感覚をお伝えします。クアラルンプール近郊で学校が近接している場合は1日3校が目安で、学校の立地が離れると1日2校までになります。KL都市部は時間帯によって渋滞が大きく、地図上の距離だけで移動時間を読むと後半の予定が崩れます。
そして土日とマレーシアの祝日は学校が休みです。「週末を使って弾丸で」という組み方は、学校訪問を含む視察では基本的に成立しません。金曜に到着して土日で観光、月曜から視察——という順番のほうが現実的です。
数字で見る:日本の学校はどれだけマレーシアに行っているか
社内・校内で視察の稟議を通すときに一番効くのは、「マレーシアは実績のある行き先である」という客観データです。公益財団法人 全国修学旅行研究協会の2024(令和6)年度 全国公私立高等学校・中学校海外教育旅行実施状況調査によると、海外教育旅行を実施したのは公立259校39,769人・私立375校59,597人の合計634校99,366人(旅行件数850件)でした。その訪問国別の内訳がこちらです。
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| 順位 | 訪問国 | 実施校数 | 生徒数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 台湾 | 217校 | 31,393人 |
| 2 | シンガポール | 135校 | 18,600人 |
| 3 | オーストラリア | 102校 | 14,676人 |
| 4 | マレーシア | 70校 | 8,536人 |
| 5 | 韓国 | 64校 | 4,604人 |
マレーシアの内訳は公立22校2,405人(10都道府県)・私立48校6,131人(21都道府県)の合計70校8,536人です。同調査の「まとめ」では、公立高校の生徒数で見た上位3カ国として台湾・シンガポール・マレーシアが挙げられています。つまりマレーシアは、公立校にとってはシンガポールに次ぐ現実的な候補という位置にあります。
もう一つ、費用の議論に直結するデータがあります。同調査の訪問国別の旅行費用(公立高校の平均額)では、マレーシアは2024年度が平均231,203円・平均5.1日。2018年度の147,456円から約1.57倍に上がっています。ここから引き出せる実務的な結論は一つです——数年前の見積書や過去の実施報告の金額は、そのまま社内資料に使えません。為替と現地の物価、航空券の水準が当時と変わっています。
視察先は4つの層に分かれる
マレーシアで「学校を見る」と言ったとき、選択肢は大きく4つの層に分かれます。どの層を見るかで、受け入れのハードルも、持ち帰れる情報の質も変わります。
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| 比較項目 | インター校 | 現地の大学 | 国民学校(公立) | 日本人学校 |
|---|---|---|---|---|
| 見学の受け入れ | ◎ 慣れている校が多い | ○ 窓口がある | △ 個別交渉 | ○ 校ごとに判断 |
| 使用言語 | ◎ 英語 | ◎ 英語 | △ マレー語中心 | ◎ 日本語 |
| 日本の学校との比較 | ○ 制度が違う | ○ | ◎ 公教育同士 | ◎ 同じ課程 |
| 主な見どころ | 多国籍の教室/ESL体制 | 研究設備/留学生受入 | 公教育の実像 | 日本の教育を海外で |
| 向いている目的 | ①②③ | ④ | ③ | ②③ |
A. インターナショナルスクール
マレーシアのインター校は英国式・米国式・IB(国際バカロレア)・オーストラリア式などカリキュラムが多様で、同じ「インター校」でも学年の区切りも卒業資格も違います。この違いはマレーシアのインター校のカリキュラム比較で詳しく整理しています。視察先の例としては、ジョホール州イスカンダルプテリの Marlborough College Malaysia、ヌグリスンビラン州バンダルエンステックの Epsom College in Malaysia、クアラルンプールの The International School of Kuala Lumpur(ISKL)や Garden International School、プトラジャヤの Nexus International School Malaysia、ペナンの Uplands School などが挙がります。日本人家族に人気のエリアに集まる校についてはモントキアラ周辺のインター校にまとめました。
※学校名は視察先として名前が挙がりやすい代表例で、ルシュエットの提携校や推奨校を示すものではありません。外部からの見学・視察を受け入れているかどうかは学校ごとに方針が異なります。必ず各校の公式サイトの案内、または現地の窓口を通じて確認してください。
B. 現地の大学
大学は国際交流や留学生受け入れの窓口を持っていることが多く、④の「提携先の開拓」なら最初に当たる層です。学生の受け入れ実務の感覚はマレーシアの大学インターンシップで触れています。
C. 国民学校(公立)
マレーシアの公教育そのものを見る層です。日本の公立校と制度同士を比べられる一方、外部見学の受け入れは学校・州の教育局ごとの判断になり、個別の交渉が必要です。日本とマレーシアの教育制度の違いはマレーシアと日本の教育の違いで整理しています。
D. 日本人学校
文部科学省が認定した在外教育施設の一覧では、マレーシアの日本人学校はクアラルンプール・ジョホール・ペナン・コタキナバルの4校です。日本の学習指導要領にもとづく課程を海外でどう運営しているかが見られるため、②の修学旅行下見や③の教員研修では比較の軸として機能します。クアラルンプールの学校についてはクアラルンプール日本人学校にまとめました。
【最重要】時期の決め方——学年暦は二重構造
ここが日本語の情報でほとんど触れられていない、しかし視察の成否を決める部分です。マレーシアには学年の始まりが2種類あります。
英国式インター校=8月始まりの3学期制
英国式のインター校は、英国の学年暦に合わせた8月〜9月始まりの3学期制を採ります。たとえば Epsom College in Malaysia は公式サイトで「英国の伝統的な学年暦にしたがい、1年を3学期で構成する」と明記しており、2026–2027年度の Term 1 は2026年8月17日開始とされています。Marlborough College Malaysia の公表する2026/27年度の学期日程では、Michaelmas Term が2026年8月25日開始です(いずれも各校公式の Term Dates)。この2校の例が示すように、同じ英国式でも開始日は校によって1〜2週間ずれます。「英国式なら9月始まり」と思い込むと、8月中旬に始まる校では初日を外します。米国式やIB校も8月前後の開始が多いものの、区切りは校ごとに違います。学年の対応関係はインター校の学年の考え方で解説しています。
国民学校(公立)=1月始まり(暦年表記)
一方、マレーシアの国民学校は暦年で区切られ、1月に始まります。マレーシア教育省(MOE)の通達 Surat Siaran KPM Bil. 3 Tahun 2025 による2026年の学校暦では、開始日はKumpulan A が2026年1月11日、Kumpulan B が2026年1月12日です。この「Kumpulan(グループ)」は州の週末の曜日で分かれています——Kumpulan A は金曜・土曜を週末とするケダ州・クランタン州・トレンガヌ州の3州、Kumpulan B はクアラルンプール・ペナン・ジョホールなど土曜・日曜を週末とするそれ以外の州です。開始日が1日ずれているのはそのためです。なお年度の呼び方も日本と違い、「2026年度」ではなく「2026年の学年」と呼ぶのが正確です。
この二重構造を踏まえると、視察の時期選びは次のように整理できます。
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| 時期 | インター校 | 国民学校 | 視察の向き |
|---|---|---|---|
| 9〜11月 | 学期中 | 授業期間 | どちらも授業が見やすい |
| 12月下旬〜1月上旬 | 長期休暇 | 学年の切替 | 授業見学には向かない |
| 2月〜3月上旬 | 学期中 | 授業期間(始業後) | 比較的組みやすい |
| 3月下旬前後 | 学期中だが祝日が重なりやすい | 同じ | 祝日の確認が必須 |
| 6月〜8月中旬 | 学年の切替・長期休暇 | 授業期間だが中間休暇あり | インター校の授業は見にくい |
※上表は一般的な傾向をもとにした目安です。学期日程・休暇期間は学校ごとに異なり、毎年変わります。日程を固める前に、必ず訪問予定校が公表している最新の Term Dates と、その年の祝日を公式情報で確認してください。3月下旬前後の注意点は次章で説明します。
もうひとつ、休暇期間の扱いについて実務からお伝えしたいことがあります。学校のホリデー期間中でも、施設の見学と学校担当者からの説明は受けられる場合があります。ただし先生と生徒が不在のため、授業の様子と校内の雰囲気は見られません。
これは判断のポイントになります。視察の目的が「設備・カリキュラムの方針・学費体系の確認」であれば、休暇中の訪問でも十分に成立します。逆に「生徒がどんな顔で授業を受けているか」「先生と子どもの距離感」を見たいなら、学期中に合わせるしかありません。目的が①②④なら休暇中も選択肢、③なら学期中一択——そう割り切ると日程の候補が一気に絞れます。
日程で落ちやすい4つの罠
時期の大枠が決まったあと、日単位で行程が崩れる原因は主に4つです。①直前に追加される「動く祝日」/②州ごとに違う週末(金土休みの州がある)/③金曜午後のアポイントの取りにくさ/④午後の雷雨——いずれも日本の常識のままだと気づきにくいものです。順に見ていきます。
1. 祝日が年ごとに動き、直前に増えることがある
マレーシアの祝日には、イスラム暦にもとづくもの(Hari Raya Aidilfitri=断食月明けの祝日など)が含まれます。イスラム暦は太陰暦のため、これらの祝日はグレゴリオ暦での日付が毎年動きます。マレーシア政府が公表する2026年の祝日表には、該当する祝日に「Tertakluk kepada perubahan(変更の対象)」という注記が付いています。
さらに厄介なのは、祝日が直前に追加されることがある点です。Holidays Act 1951(Act 369)の第8条は、大臣が官報告示によって、既定の祝日に「加えて、または代えて」公休日を指定できると定めています。
2026年がまさにその年でした。実際の決まり方は次のとおりです。
- 3月15日:首相が断食月明け(ハリラヤ・アイディルフィトリ)の追加公休日を表明。ただしこの時点では日付が未定で、「20日(金)が祝日なら23日(月)を追加、21日(土)が祝日なら20日(金)を追加」という条件付きの2案だけが示された。
- 3月18日前後:断食月明けの初日(1シャワル)が3月21日(土)と告示される。新月が観測条件を満たさなかったため、断食月を30日で満たして日付が決まった。
- 結果:2案のうち後者が適用され、追加公休日は3月20日(金)に確定。平日が1日消えることが判明したのは、実質2〜3日前だった。
- 州ごとの差:サバ州では3月18日付の特別官報で条件付きの指定が告示された。州によって扱いとタイミングが異なる。
つまり、渡航直前まで平日の数が確定しない年があるということです。視察の行程は、「祝日が1日増えても崩れない形」で組んでおくしかありません。
対策は2段構えです。①日程を組む段階でその年の政府公表の祝日表を確認する。②渡航の1か月前と1週間前に、追加告示が出ていないかを再確認する。訪問先の学校への最終確認と同じタイミングでやると漏れません。
2. 州によって週末が違う
マレーシアは州ごとに週末の曜日が異なります。ケダ州・クランタン州・トレンガヌ州の3州は金曜・土曜が週末で、日曜は平日です。以前はジョホール州もこの形でしたが、ジョホール州は2025年1月1日から土日の週末に戻っています——数年前の情報のままだと間違えるポイントです。
1回の渡航で複数州を回る行程では、これが致命的になります。「日曜は移動日」と決めていた行程で、実は日曜が訪問先の平日だった(=せっかくの平日を潰した)というロスが起こります。
3. 金曜の午後はアポイントが取りにくい
金曜の昼から午後にかけては礼拝の時間帯にあたり、面談や訪問の枠が取りにくくなる傾向があります。金曜は午前に予定を寄せ、午後は移動や自由行動に充てるのが無理のない組み方です。対応は組織によって異なるため、打診の段階で「金曜の午後は可能か」を直接確認してください。
4. 午後の雷雨で屋外の予定が流れる
マレーシアは熱帯の気候で、午後にまとまった雨が降ることが少なくありません。雨季とされる月は資料によって記述が分かれるため、特定の月を避けるという判断より、行程の組み方で吸収するほうが確実です。具体的には、屋外を含む予定を午前に置き、午後は屋内(校内見学・面談・振り返り)を配置する。屋外の予定には屋内の代替案を一つ用意しておく。この2つで、日程全体が流れるリスクはかなり下がります。
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費用の内訳項目と、相場をつかむ手がかり
費用の話をする前に、前提を一つ。マレーシア国内で発生する費用はリンギット(RM)建てで、円換算額は為替で動きます。マレーシア国立銀行(BNM)が公表するレートでは、2026年8月27日時点で1RM=約39.6円です。この記事に出てくる円の概算はこのレートによるもので、渡航時点の実勢とはずれます。団体の視察では総額が大きくなるため、為替が数円動くだけで日本円の総額は十万円単位で変わります。見積書を読むときはRMの金額を基準にし、円は「その時点の目安」として扱うのが安全です。稟議書に円額を書く場合は、換算に使ったレートと取得日を併記しておくと、後から差が出たときに説明できます。
視察の費用は、次の項目に分解できます。見積書を比べるときは、どの項目が含まれ、どれが別建てなのかを揃えてから比較してください。
| 費用項目 | 見るポイント |
|---|---|
| ① 航空券 | 日本からクアラルンプールへの直行便あり。時期(学校の休暇=日本の繁忙期と重なる)で大きく変動 |
| ② 宿泊 | 訪問先の分布で滞在地を決める。移動時間を宿で削れる場合がある |
| ③ 車両・ドライバー | 人数で車種が変わる。学校が離れる行程では終日チャーターが前提 |
| ④ 通訳・アテンド | 英語での質疑を通訳するか、日本語で聞ける人が同行するか |
| ⑤ 訪問先の手配・調整 | アポ取り・日程調整の実務。ここを誰が担うかで担当者の負荷が最も変わる |
| ⑥ 手土産・謝礼 | 訪問先への配慮。組織の規定に沿って事前に扱いを決める |
| ⑦ 海外旅行保険・危機管理 | 安全配慮義務の観点。補償額と現地の医療アクセスをセットで確認 |
| ⑧ 食事 | 訪問先での会食が入る場合は別枠で見込む |
| ⑨ 予備日・予備費 | 祝日の追加告示・アポの流れに備える。これを入れていない見積は要注意 |
※項目ごとの金額は人数・時期・訪問先の分布で大きく変わるため、この記事では単価を示していません。マレーシアの物価水準の感覚はマレーシアの物価、安全面はマレーシアの治安を参考にしてください。
相場をつかむ2つの手がかり
「では、いくらくらいなのか」を考えるとき、公開情報から使える手がかりが2つあります。
1つ目は前章のデータです。マレーシアを訪問した公立高校の旅行費用は2024年度が平均231,203円・平均日数5.1日(全国修学旅行研究協会調査)。これは生徒の団体旅行の数字で、少人数の視察とは条件が違います。ただし「5日前後の行程で、団体価格でこの水準」という下限側のレンジとしては読めます。
2つ目は、学校見学に特化したサービスの公開価格です。ルシュエットが提供している学校見学の同行サービス(スクールツアー)は、2026年4月からの価格でベーシックプランがRM1,150。内容は、学校選定のカウンセリング(60分)・見学校の提案と予約手配・スケジュール調整・当日の専用ドライバー送迎(モントキアラ発着)・2〜3校の見学・同行と通訳・見学後のカウンセリング(30分)です。現地に来られない場合のオンライン見学は50分で1校RM550・3校RM1,500としています。
※これはご家族の学校見学に向けた1日単位のサービスで、学校法人・企業の団体視察は人数・訪問先・日数によって別途組み立てが必要です。また上記は本記事の公開時点の価格で、改定されることがあります。最新の内容と料金はスクールツアーのご案内でご確認ください。
この2つを両端に置くと、「団体・5日で1人20万円台の後半から」「少人数で現地1日の学校見学の手配部分は数万円規模から」という幅で当たりをつけられます。実際の見積は、上の①〜⑨のどこまでを誰が担うかで大きく変わります。
入国と在留資格の線引き
ここはYMYL(お金・法律・人生に関わる領域)にあたるため、公式に書かれていることと、書かれていないことを分けて整理します。
公式に列挙されている訪問目的
まず用語を1行で。Short Term Social Visit Pass(短期社会訪問パス)は、事前に大使館へ申請する種類のビザではなく、短期の訪問者の滞在を扱う枠組みです。日本のパスポート保持者は短期の観光・商用目的であれば事前のビザ申請が不要とされていますが、免除の対象・条件・認められる滞在日数は国籍や時期によって変わるため、渡航前に必ず公式の最新案内で確認してください。
マレーシア入国管理局(Immigration Department of Malaysia)のこの短期社会訪問パスの案内には、許可される訪問目的が列挙されています。そこには会議・会合への出席、セミナーへの参加、商談、工場視察(factory inspection)などが含まれます。学校の見学・視察は、実務上この範囲で入国されるケースが多いものです。ただし、最終的な入国の可否と許可される滞在日数を判断するのは現地の入国審査官です——「この目的なら必ず入れる」と保証できるものではありません。
もう一点、正確に言うと「教育視察」という語そのものが列挙されているわけではありません。ここは誤解のないように押さえてください。入国審査では訪問目的を問われることがあり、団体で人数が多い場合はなおさらです。訪問先の学校からの受入の連絡(招待状・返信メール)と、日付入りの日程表を、印刷またはすぐ提示できる形で全員が持っておく——これだけで説明が通りやすくなります。目的は事実のまま(学校の見学である旨)を説明してください。
別の在留資格が必要になりうるケース
視察の中身が「見る・話を聞く」を超える場合は、扱いが変わります。たとえば現地で研修を実施する、報酬を受けて授業や講演を行う、といった場合は Professional Visit Pass(PVP)など別の在留資格の検討が必要になります。企業研修としてマレーシアに人を送る場合の線引きは企業の海外研修をマレーシアでで詳しく整理しました。
※入国要件・ビザ免除の対象と条件・在留資格の運用は変更されることがあります。本記事の内容は概要であり、渡航前に必ずマレーシア入国管理局または在東京マレーシア大使館の最新の案内でご確認ください。参加者の国籍が日本以外の方を含む場合は、国籍ごとに条件が異なるため個別の確認が必要です。
入国前の手続き(MDAC)
マレーシアに入国する前には、MDAC(Malaysia Digital Arrival Card/デジタル入国カード)のオンライン提出が案内されています。実務で重要なのは提出のタイミングです。公式ページでは到着前3日以内に提出すると案内されており、1か月前にまとめて済ませることはできません。渡航直前の作業になります。
参加者が複数いる視察では、渡航直前に担当者を決めて全員分の提出を確認する工程を、日程表に明記しておいてください。登録手順はマレーシアMDACの登録方法、入国全体の流れはマレーシア入国手続きガイドで解説しています。免除対象もあるため、対象かどうかは公式で確認してください。
視察の組み立て方(5ステップ)
ここまでの内容を、実務の順番に並べ直します。訪問先の選定より日程の確定を先に置くのがポイントです。
なお「どのくらい前から動くべきか」の手がかりが一つあります。マレーシア政府観光局が日本の学校向けに配布している修学旅行ハンドブックは、実施の1年前〜3か月前までに、学校長または修学旅行担当者から日程表を添えて申し込む案内になっています(旅行会社経由の請求は不可)。これは資料請求の受付期間で、視察や旅行そのものの申請期限ではありません。ただし公的機関側が「学校は1年前から動くもの」という前提で窓口を設計していることの表れです。②の修学旅行下見であれば、この時間軸を目安に逆算すると無理がありません。
目的を1文にする
「何が分かれば視察は成功か」を1文で書く。1章の①〜④のどれに当たるかを決めると、見るべき層と必要な日程条件が同時に決まります。
視察先の層を決める
インター校/現地の大学/国民学校/日本人学校のどれを、何校見るか。層を混ぜるほど移動と交渉が重くなります。
日程を先に固める
訪問予定校の公式Term Datesで学期中かを確認し、その年の政府公表の祝日表と州ごとの週末を突き合わせる。金曜午後を避け、予備日を1日入れます。
打診と手配
アポの打診(③の授業見学は交渉に時間がかかるため最も早く動く)、通訳・車両・宿泊の確保、MDACの担当決め。訪問先の返答待ちが最長のリードタイムになります——ここを最後に回すと日程が動かせなくなります。
持ち帰りの形を先に決める
誰に何を報告するのか、記録の形式(写真・比較表・質問リスト)を出発前に決める。学校ごとに同じ質問を聞く形にすると、帰国後に比較できる資料になります。
ステップ5について補足します。学校を複数見た後で「どこが良かったか」を思い出せなくなるのは、視察でとても起こりやすいことです。カリキュラムも施設も雰囲気も、3校を過ぎると混ざります。
私たちが同行の際にお勧めしているのは、出発前に「全校に同じ順番で聞く質問」を5つだけ決めておくことです。学校側は毎回違う順番で説明してくださるので、質問の型を持っていないと聞き漏らします。逆に型があれば、帰国後にそのまま比較表になります。視察の質は、現地での観察力より事前に用意した質問の質で決まります。
よくある質問
マレーシアの学校視察は、いつの時期に行くのが良いですか?
「授業のある姿」を見たい場合は、インターナショナルスクールの学期中と現地の国民学校の授業期間が重なる時期を狙うのが基本です。マレーシアは英国式インター校が8月始まり、国民学校(公立)が1月始まりという二重の学年暦を持つため、どちらを見るかで最適な時期が変わります。加えてイスラム暦にもとづく祝日は年ごとに日付が動くため、日程は必ず訪問予定校の公式Term Datesと、その年の官報の祝日表で確認してください。
学校の休暇期間中でも視察はできますか?
施設の見学と学校担当者からの説明であれば、休暇期間中でも受けられる場合があります。ただし先生と生徒が不在のため、授業の様子や校内の雰囲気は見られません。視察の目的が「設備と方針の確認」なら休暇中でも成立しますが、「授業と生徒の様子を見る」ことが目的なら学期中に合わせる必要があります。受け入れ可否は学校ごとに異なります。
教育視察には特別なビザが必要ですか?
マレーシア入国管理局のShort Term Social Visit Pass(短期社会訪問パス)の案内では、許可される訪問目的として会議・セミナーへの参加・商談・工場視察などが列挙されています。学校見学もこの範囲で扱われることが一般的ですが、「教育視察」という語そのものは列挙されていません。現地で研修を実施する、報酬を受けて授業を行うといった目的が含まれる場合は、Professional Visit Passなど別の在留資格の検討が必要になります。目的と滞在日数を整理したうえで、渡航前にマレーシア入国管理局または在東京マレーシア大使館で必ず確認してください。
1日に何校まで回れますか?
クアラルンプール近郊で学校が近接している場合は1日3校が目安、学校の立地が離れている場合は1日2校までになることがあります。マレーシアの都市部は時間帯によって渋滞が大きく、移動時間が読みにくいためです。土日とマレーシアの祝日は学校が休みになるため、平日ベースで組む必要があります。
マレーシアは日本の高校の海外教育旅行先としてどのくらい選ばれていますか?
公益財団法人全国修学旅行研究協会の2024(令和6)年度 全国公私立高等学校・中学校海外教育旅行実施状況調査では、訪問国別の実施校数でマレーシアは第4位です。公立22校2,405人・私立48校6,131人の合計70校8,536人が訪問しています。上位は台湾217校、シンガポール135校、オーストラリア102校で、マレーシアはすでに実績のある行き先といえます。
主な参照元
- 公益財団法人 全国修学旅行研究協会「2024(令和6)年度 全国公私立高等学校・中学校海外教育旅行実施状況調査」(shugakuryoko.com)
- マレーシア入国管理局 Short Term Social Visit Pass(訪問目的の一覧)/Professional Visit Pass(imi.gov.my)
- マレーシア入国管理局 MDAC(Malaysia Digital Arrival Card)登録案内
- マレーシア教育省(MOE)Surat Siaran KPM Bil. 3 Tahun 2025(2026年 学校暦)
- Epsom College in Malaysia 公式 Term Dates 2026–2027
- Marlborough College Malaysia 公式 Term Dates(Michaelmas 2026–Summer 2027)
- マレーシア首相府 内閣局 2026年 連邦公休日一覧(kabinet.gov.my)
- Holidays Act 1951(Act 369)第8条(マレーシア法務長官府 lom.agc.gov.my)
- ベルナマ通信(Bernama/マレーシア国営通信社)2026年の追加公休日に関する報道
- 文部科学省「認定した在外教育施設の一覧」
- マレーシア政府観光局 日本語サイト 教育旅行のご案内(tourismmalaysia.or.jp)
- マレーシア国立銀行(BNM)公表為替レート
- ルシュエット「インターナショナルスクール:スクールツアー」(自社サービス案内)