日本国籍の方がマレーシアにビザなしで滞在できるのは、最長90日(3か月)です。ただしこれは「必ず90日もらえる」という意味ではなく、入国のときに許可された日数が上限になります。この記事では、90日の数え方、入国に必要なMDACとパスポートの条件、延長やビザランの現実、そして「働けない・学校に通えない」という線引きまで、クアラルンプール現地の目線で順に整理します。
この記事の要点
- ビザなしで認められる滞在は最長90日。暦の「3か月」ではなく、入国時に許可された期限が正です。
- 入国前にMDAC(デジタルアライバルカード)の登録が要ります。入国予定日の3日前から、公式ポータルで無料です。
- 観光でビザが要らないことと、留学でビザが要らないことは別。学生パスを取る渡航には、別途ビザ(SEV)が必要です。
ビザなしの滞在は最長90日。ただし「90日が保証される」わけではない
日本のパスポートをお持ちの方は、観光・親族訪問・商用の打ち合わせといった報酬を伴わない短期の訪問であれば、事前のビザ申請なしでマレーシアに入国できます。認められる滞在は最長90日です。学校見学のための下見も、この範囲で行けます。
ここで用語を一つだけ整理させてください。マレーシアでは「ビザ(Visa)」と「パス(Pass)」を分けて扱います。ビザは入国するための許可、パスは入国したあとに滞在するための許可です。日本国籍の短期訪問はビザが免除され、入国審査の場で社会訪問パス(Social Visit Pass)という滞在許可が与えられる、という順序になります。
「ビザなし」と呼ばれているのは前半のビザが免除される部分で、滞在そのものは無許可ではありません。パスという形の許可を、入国時に受け取っています。この区別が分かると、あとの「延長」の話が理解しやすくなります。
免除されるのは「日数」ではなく「どんな訪問か」で決まる
ここが、日数の話より先に押さえておきたい部分です。外務省の海外安全ホームページは、査証の免除について「観光や知人訪問を目的とした滞在期間が3か月を超えず、かつ報酬等の収入目的とした活動に従事する者を除き」と説明しています。つまり免除の条件は、期間と活動内容の2つがそろって初めて成立します。
さらに同じページには、短期の滞在であっても宗教活動・調査研究・撮影を目的とする場合は査証が必要と書かれています。取材や撮影を含む渡航を考えている方は、期間が短くても対象外になりうるということです。「90日以内なら何をしてもいい」ではない、と読み替えてください。
もう一つ、検索していると「eNTRI」という制度名が出てきますが、これはインド国籍の方に向けた登録制度で、日本のパスポートをお持ちの方には関係がありません。似た名前の手続きが混在するので、自分に該当するものだけを拾ってください。
90日は「上限」であって「自動的にもらえる日数」ではない
見落とされやすいのがこの点です。90日はあくまで制度上の上限で、入国審査では渡航の目的・滞在の予定・帰りの航空券などをもとに、実際に許可する日数が判断されます。目的がはっきりしない場合や、短期の出入国を繰り返している場合には、90日より短い日数で許可されることもあるとされています。
ですから、渡航前に「3か月ある前提」で予定を固めてしまうのは避けたいところです。許可された日数は、入国した直後にご自身で確認する。これが最初に身につけていただきたい習慣です。
ご相談で時々あるのが、「3か月と聞いていたので、3か月分のコンドミニアムを先に押さえた」というケースです。実際に許可された期限がそれより短いと、住まいの契約だけが残ってしまいます。下見の日程は、1〜2週間ぶん手前で折り返せるように組んでおくと安心です。
90日の数え方——起点は入国日、正は入国時の記録
90日は入国した日を1日目として数えるのが基本です。「3か月」という言い方が広まっていますが、制度として示されているのは日数のほうです。月によって日数が違うため、暦で3か月を足すと数日ずれることがあります。
そして、いちばん確実なのは自分で計算した日付ではなく、入国のときに記録された満了日です。自分の計算と違っていたら、記録されたほうが優先します。ただし、その記録がどこに残るかは入国の仕方で変わります。
自動化ゲートを使うと、パスポートにスタンプは押されない
あまり知られていませんが、実務では大きな違いになります。有人カウンターで入国すれば、外務省が説明しているとおり旅券に滞在期間が記載されます。一方、自動化ゲートを通った場合はスタンプが押されず、代わりにレシートが発行されます。
在マレーシア日本国大使館は、このレシートをマレーシアへの移動の証明として保管し、出国時に入管へ提示する必要があると案内しています。あわせて、パスポートにスタンプを押したい場合は自動化ゲートではなく有人カウンターを使うように、とも書かれています。
つまり「パスポートを見れば期限が分かる」とは限りません。ご家族で下見に来られるなら、初回は有人カウンターを選ぶほうが後々分かりやすいと思います。なお、MDACの公式ポータルには滞在の記録を照会する画面があり、そこでも確認できます。ただし表示は直近3か月ぶんに限られると注記されています。
※自動化ゲートのレシートに満了日そのものが印字されるかは、公的な案内から確認できませんでした。推測で補わず、記載のある範囲だけを書いています。レシートで満了日が分からないときは、MDACポータルの滞在記録の照会画面で確かめてください。日数を確実に把握したい初回の渡航では、旅券に記載が残る有人カウンターを選ぶのが安全です。
入国日=1日目
空港の入国審査を通った日から数え始めます。到着が深夜便でも、入国した日が起点です。
その場で期限を確認する
有人カウンターなら旅券の記載、自動化ゲートなら発行されたレシートを、空港を出る前に見ておきます。
満了日の1か月前に判断する
そのまま帰るのか、目的に合ったパスへ切り替えるのか。手続きが要るなら、この時期には動き始めます。
満了日までに出国する
満了日は「その日まで滞在できる日」です。当日の便で出国する計画は、遅延を考えると余裕がありません。
※実際に許可される日数は入国審査での判断によります。上の流れは一般的な進め方の目安で、ご自身の期限は必ず入国時の記録でご確認ください。
「90日」と「3か月」は同じ日にならないことがある
実は、公的な案内の中でも表記が分かれています。駐日マレーシア大使館が配布している英文の案内には「90日を超えない社会訪問(not exceeding 90 days)」とある一方、同大使館の入国要件の表と外務省はどちらも「3か月」と書いています。日本語の記事で両方の数字が混在しているのは、公式の中で表記が割れているためです。
そして暦で3か月を足した日と、入国日から90日を数えた日は一致しないことがあります。31日の月が続けば暦のほうが後ろに、2月をまたげば暦のほうが手前に来ます。数日の差ですが、帰りの航空券を押さえたあとで気づくと動かせません。
下の表は、入国日ごとに両者がどれだけずれるかを並べたものです。ご自身の期限そのものではなく、「表記によってずれが出る」という感覚をつかむための目安としてご覧ください。だからこそ、最後に頼るのは自分の計算ではなく入国時の記録になります。
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| 入国日 | 暦で3か月後 | 入国日から90日目 | ずれ |
|---|---|---|---|
| 1月10日 | 4月10日 | 4月9日 | 1日 |
| 4月1日 | 7月1日 | 6月29日 | 2日 |
| 8月20日 | 11月20日 | 11月17日 | 3日 |
※上表は暦の計算例です(うるう年でない年で計算)。実際に滞在できる期限は入国時に記録された満了日であり、この表の日付ではありません。必ずご自身のパスポートの記録をご確認ください。
出国してから再入国した場合はどうなるか
一度出国して再び入国すると、そのたびに入国審査を受け、あらためて滞在の許可を受けることになります。前回の残り日数を持ち越すわけでも、自動的に90日が加算されるわけでもありません。毎回が新しい判断です。
この仕組みで滞在を延ばそうとするのが、いわゆる「ビザラン」です。再入国が必ず認められる前提で計画を立てるのは危険だとお考えください。
入国のときに必要なもの(MDAC・パスポート残存・帰りの航空券)
ビザの申請が要らないぶん、入国時に整えておくものははっきりしています。まず押さえていただきたいのが、渡航前にオンラインで済ませるMDACの登録です。
MDAC(デジタルアライバルカード)は渡航前に登録する
MDACは、かつて機内で書いていた紙の入国カードをオンライン化したものです。在マレーシア日本国大使館の案内によれば、2023年12月1日から登録が義務づけられ、入国の3日前から登録できます。同じ案内には料金の支払いはなく、クレジットカード情報の入力も求められないとはっきり書かれています。
検索すると有料の代行サイトが上位に混ざります。支払い画面が出てきた時点で、公式ではない可能性が高いとお考えください。手順はマレーシアMDAC登録方法のガイドで画面に沿って整理しています。
登録が要らない方もいます。大使館の案内では、永住権の保有者と長期滞在ビザの保有者、そして外交旅券・公用旅券の保有者が除外とされています。外務省はこれに加えて、自動クリアランス・システム(MACS)の登録者も挙げています。学生パスや保護者のパスで暮らしているご家族が一時帰国から戻るときは、登録が要らない側に入る可能性があります。
もう一点、次の渡航から効いてくる話です。MDACを登録したうえで初回の入国時に有人カウンターで指紋を登録しておくと、次回から自動化ゲートを使えるとされています。無条件で使えるわけではなく、初回に有人カウンターを通ることが前提です。対象となる国や空港は広がってきているため、使えるかどうかは渡航時点の案内でご確認ください。
入国時にそろえておくもの
審査で確認されうるものを、並べて挙げておきます。すべてを毎回求められるわけではありませんが、求められたときに出せる状態にしておくのが安全です。
- パスポートの残存有効期間が6か月以上あること
- 帰国便、または第三国へ向かう航空券(出国する予定が示せること)
- 滞在先の住所(ホテル名やコンドミニアムの住所)
- 滞在期間に見合った資金
- MDACの登録(登録済みであること。控えを画面で出せると安心です)
特にパスポートの残存6か月は、うっかりしやすいところです。お子様のパスポートは有効期間が5年のことが多く、ご家族の中で一人だけ期限が近い、という状況が起こります。渡航を決めた時点で、全員分の残りを一度そろえて確認しておいてください。
帰りの航空券は、日本への帰国便でなくても構いません。求められているのは「マレーシアから出る予定が示せること」なので、第三国へ抜ける片道の航空券でも成立します。
入国審査で聞かれること
審査は短く、聞かれる内容もほぼ決まっています。滞在の目的、滞在する日数、泊まる場所。この3つを英語で短く答えられれば十分です。
気をつけたいのは、答えの中身がそろっていることです。「観光です」と答えたのに滞在が2か月を超えていたり、宿泊先を即答できなかったりすると、確認が長引くことがあります。学校見学が目的なら、そのまま伝えて構いません。目的がはっきりしているほうが話は早く終わります。
外務省の案内では、入国時に両手の親指と人差し指の生体認証(指紋)登録が必要とされ、入国審査官から入国目的と滞在期間を尋ねられたうえで、旅券に滞在期間が記載されると説明されています。滞在日数を決めているのは審査官の側だということです。
ボルネオ島側(サバ州・サラワク州)は入域の扱いが別
意外と知られていないのですが、サバ州とサラワク州では、半島側とは別の入域管理が行われています。外務省の案内では、クアラルンプールなど半島部から旅行する場合であっても、旅券を提示して入出域の許可を受ける必要があるとされています。
コタキナバルの学校を検討されるご家族には、ここを先にお伝えしています。なおボルネオ島側で認められる滞在日数について、公的な案内から具体的な数字は確認できませんでした。推測で書ける部分ではないので、入域時に受けた許可の内容をそのつど確かめてください。
クアラルンプール国際空港の入国審査は、多くの場合とても短時間で終わります。目的を聞かれても「観光」「学校見学」と答えられれば、それ以上踏み込まれないことがほとんどです。
ただ、機械的に流れるからこそ、押された期限を見ないまま空港を出てしまう方が多いのも事実です。確認する場所が空港の中にあるうちに見る、と決めておくのがおすすめです。
90日は延ばせるのか——延長とビザランの現実
先にお答えすると、ビザなしで得た90日を、そのまま延長して住み続けるという使い方は想定されていません。短期の社会訪問パスについて入国管理局が示している説明では、延長は「特別な考慮(Special consideration)」による例外と位置づけられており、例として挙げられているのは病気・事故・母国での戦争です。
しかもその場合でも、事情を裏づける証拠の提出と、確定した復路航空券の提示、そして本人が出向くことが求められます。書類を整えれば通る手続きではなく、事情があるときの救済です。
日本語の記事には「観光目的なら30日ずつ2回まで延長できる」といった記述も見かけますが、この運用を示す公式の記載は確認できていません。数字が独り歩きしている可能性があるため、この記事では書かないことにしました。「とりあえず3か月行って、現地で延長すればいい」という計画は、原則として避けてください。90日を超えて滞在するなら、渡航前の段階で、目的に合ったパスを取る前提で組む必要があります。
ビザランは「制度」ではなく「グレーな慣行」
ビザランとは、滞在期限が近づいたら近隣国へ短期間出国し、すぐ戻って新しい滞在許可を受ける、という方法です。マレーシアはシンガポールやタイに近いため、物理的にはやりやすい環境にあります。
ただし、これは制度として用意されたものではありません。再入国のたびに審査があり、許可するかどうかも、何日許可するかも、その場の判断です。短期の出入国を繰り返した記録は残るため、回を重ねるほど「観光での訪問」とは見なされにくくなっていきます。
調べた範囲では、マレーシアの入国管理局がビザランについて見解を示した公式文書は確認できませんでした。そのうえで、実務上の扱いを最もはっきり書いているのが在クアラルンプール米国大使館の案内です。同大使館は、自国民が入国を拒否される理由の一つとして「観光の資格を不適切に使い、認められた期間より長くマレーシアに居住しようとしている場合」を挙げています。過去にオーバーステイをして入国を禁止されている場合も、拒否の理由として挙げられています。
あわせて押さえたいのが、入管法(Immigration Act 1959/63)第8条です。自分と扶養家族を支える資力を示せない人は入国を認められない対象とされ、それを示す責任は本人の側にあると規定されています。「疑われたら証明するのは自分」という構造です。
実際に起こりうるのは、滞在日数を短く区切られる、別室で渡航目的を詳しく確認される、そして入国そのものを断られる、といった事態です。拒否されれば、最後に出発した空港へ送り返されます。お子様の学校が始まっている状態でこれが起きると、影響は生活全体に及びます。ご家族での長期滞在をビザランで支えるのは、避けていただきたい選択です。
90日で足りるのか、パスが要るのか。一度いっしょに整理しませんか?
下見の期間・学校見学の時期・お子様の入学時期を並べると、
ビザなしで足りるのか、パスの準備が要るのかがはっきりします。
ビザなしの滞在で「できないこと」——働くことと、学校に通うこと
ビザなしの90日でできるのは、報酬を伴わない短期の訪問です。観光、親族の訪問、商談や視察、学校見学やオープンデーへの参加は、この範囲に入ります。一方で、はっきりできないことが2つあります。
できないこと①:報酬を得て働くこと
マレーシア国内で報酬を得る活動は、社会訪問パスの対象外です。現地の企業で働く、現地で商売をするといった行為には、目的に合った就労系のパスが要ります。
判断が分かれやすいのが、日本の会社の仕事をマレーシアから行うリモートワークです。こうした働き方のために用意されているのがDE Rantau(デジタルノマド向けのパス)で、専門訪問パスの一種として運用されています。滞在を前提に働くなら、検討するのはこちらです。詳しくはDE Rantauの条件・費用の解説にまとめました。
できないこと②:正規の学校に通うこと
お子様がマレーシアの学校に在籍して通うには、学生パス(Student Pass)が必要です。ビザなしの滞在のまま、インターナショナルスクールに正規の生徒として通い続けることはできません。
この点は入国管理局の学生パスの案内に書かれています。対象は3歳以上とされ、対象校としてインターナショナルスクール・エクスパトリエイトスクール・私立校・中華私立中学(SMPC)が明示されています。年齢が低いから対象外、ということはありません。
申請のルートは学校の種別で分かれます。大学・私立の高等教育機関・語学センターはEMGS(Education Malaysia Global Services)を通すルート、インターナショナルスクールなどのSchool Levelは、教育省の支持書をもとに学校の担当者または保護者が入国管理局へ申請するルートです。高等教育のルートでは「申請を出す時点で本人がマレーシア国外にいること」が要件とされている点も、日程を組むうえで効いてきます。
もう一つ、誤解が起きやすいのが「親が別のパスを持っていれば、子どもはそのまま通える」という思い込みです。デジタルノマド向けのDE Rantauを運営するMDECは、公式のFAQで「DE Rantauパス保持者のお子様がマレーシアで学ぶ場合は、学校を通して学生パスを申請してください」と明記しています。親の滞在資格と、子の就学資格は別に必要だということです。
ここでいちばんお伝えしたいのが、「観光でビザが要らないこと」と「留学でビザが要らないこと」は別という点です。マレーシア留学の手続きを担うEMGSが公開している「SEV(シングルエントリービザ)が必要な国」の一覧に、日本が入っています(2026年9月時点)。入国管理局が示す「入国目的を問わず査証が不要な国」の一覧にも、日本は含まれていません。
流れとしては、学校からeVAL(入学許可にあたる承認レター)を受け取り、そのうえで渡航前にSEVを申請します。「ビザなしで入れる国だから、入学のときも何も要らない」と思い込んだまま日程を詰めると、渡航の直前で止まります。なおEMGSはこの一覧が予告なく変わると注記しているため、最新の要否は進学先の学校を通してご確認ください。
学校見学や短期のプログラムはどちら側か
学校見学・オープンデーへの参加・入学試験の受験は、短期の訪問の範囲で行えるのが一般的です。下見でいちばん多いのもこの形です。
迷いやすいのが、数週間のサマープログラムや体験入学です。受け入れの形は学校によって異なるため、在籍扱いになるのか、短期のプログラム参加なのかを、申し込む前に学校側へ確認してください。同じ「2週間の体験」でも、学校によって手続きが変わります。短期の受け入れの実際はマレーシア短期留学の解説でまとめています。
付き添う保護者の立場も、ビザなしのままでは続かない
お子様が学生パスを取ると、次に決めるのが付き添う保護者の滞在資格です。入国管理局の学生パスの案内には「Guardians(School Level)」という項目があり、認められるのは実の親・法定後見人・養親・祖父母、そして7歳未満の兄弟姉妹とされています。そのうえで、就労・事業・政治活動は禁止と明記されています。
つまり付き添いの保護者は、滞在はできても働けない立場になります。なお高等教育の段階では扶養家族(Dependent)としての扱いになり、帯同できるのは修士・博士課程の学生に限られるとされています。お子様の進学段階で、親が取れる立場そのものが変わるということです。
90日を超えて住むなら:滞在ルートの早見表
90日で足りないと分かった時点で、検討する先は「どのパスを取るか」に移ります。ご家族の状況によって現実的な選択肢は変わるので、代表的なルートを横に並べて比べられるようにしました。
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| 比較項目 | ビザなし(社会訪問パス) | 学生パス+保護者のパス | MM2H | DE Rantau |
|---|---|---|---|---|
| 滞在できる期間 | 最長90日 | 就学に連動 | 5〜20年(4区分別) | 最長24か月 |
| 事前の申請 | ◎ 不要(MDACのみ) | △ 学校経由で数か月 | △ 資産要件あり | △ 収入要件あり |
| お子様の就学 | × 不可 | ◎ これが本来の形 | ○ 可 | ○ 帯同の子は可 |
| 働けるか | × 不可 | × 保護者は不可 | △ 区分による | ○ 承認された分野 |
| 向いている人 | 下見・学校見学 | お子様の教育が目的 | 家族で腰を据える | リモートで働く |
教育移住でいちばん多いのは、お子様が学生パス、保護者が付き添いのためのパスという組み合わせです。保護者側のパスでは就労ができない点が、家計の設計に効いてきます。それぞれの条件はマレーシア移住のビザの種類で比較しました。
MM2Hを検討される場合は、区分の数にご注意ください。公式の現行案内はPlatinum・Gold・Silver・SEZ/SFZの4区分で、ビザの有効期間は順に20年・15年・5年・10年とされています。定期預金の額はいずれも米ドル建てで公表されており、リンギット建てで書かれた日本語記事は古い可能性があります。さらに50歳未満の参加者には年間90日(累計)の滞在義務があります。条件はMM2Hの条件と費用にまとめました。
そしてこの「年間90日」は、ビザなし滞在の90日とはまったく別の数字です。片方は「これ以上いられない上限」、もう片方は「これだけはいなければならない下限」。同じ90日でも意味が逆です。
逆に、まだ国を決めきれていない段階なら、無理にパスを取りにいく必要はありません。90日の枠で下見をして、それから決めるで遅くはありません。期間別の考え方はマレーシア長期滞在の解説で整理しています。
オーバーステイは1日でも違反
許可された期限を1日でも過ぎれば、それは不法滞在です。マレーシアの入管法(Immigration Act 1959/63)第15条(4)の違反にあたり、RM10,000以下の罰金または5年以下の懲役、もしくはその両方と示されています。過料(コンパウンド)としてRM3,000という金額も公表されています。
2025年10月21日からは、入国管理局(JIM)が導入した「Overstay Management Programme」という運用が始まったと、政府機関のMDECが告知しています。一定の条件下で取締部門へ送致せず過料で処理する扱いです。ただし対象として明示されているのは就労パス(EP)と扶養家族パス(DP)の保持者で、しかも登録企業を通した申請に限られます。ビザなしで滞在している方への言及は告知にありません。救済を前提にできる仕組みではないということです。
怖いのは金額よりも記録のほうです。違反の履歴が残ると、次の入国や、学生パス・MM2Hの申請にも影響しうると考えておくのが安全です。該当してしまったときは、在籍校のビザ担当や留学エージェントを通して進めるほうが確実です。更新や期限切れの実務はビザ・パスの更新と延長の記事にまとめています。
※制度の運用は変更されることがあります。渡航時点の入国・滞在の取り扱いについては、在マレーシア日本国大使館が公開している最新の案内をご覧ください。
90日をどう使うか——下見・学校見学の組み立て方
ここまでを踏まえると、ビザなしの90日は「住むための期間」ではなく「決めるための期間」だと分かります。ご家族の下見でうまくいくことが多いのは、次のような進め方です。
学期中に行く日程を選ぶ
長期休暇と重なると、授業の様子も先生の雰囲気も見られず、校舎だけ見て帰ることになります。
1回の滞在は2〜4週間に収める
90日いっぱいを使う必要はありません。見るものを絞れば、判断材料は数週間で集まります。
住まいは短期で借りる
通学の距離感は滞在中に印象が変わります。長期の契約は、学校を決めてからで間に合います。
出願は帰国後でも間に合う
見る・決める・出すを分けたほうが、判断が急ぎ足にならず結果的に早く進みます。
パスの準備期間を逆算する
入学時期が決まったら、学生パスとビザ(SEV)に数か月かかる前提で退職・転居の予定を組みます。
下見に来られたご家族にいつもお伝えしているのが、「90日をどう使うかより、90日のうちに何を決めるか」を先に書き出しておきましょう、ということです。学校、エリア、渡航の時期。この3つが決まれば、下見としては十分です。決めたいことが曖昧なまま長く滞在すると、時間だけが過ぎていきます。
ご家族の予定に合わせて、必要な手続きを整理します
下見の時期・お子様の学年・入学を考えている時期をお聞かせいただければ、
ビザなしで足りる範囲と、パスの準備が要る範囲を現地スタッフが切り分けます。
よくある質問
マレーシアにビザなしで滞在できるのは何日までですか?
日本のパスポートをお持ちの方は、報酬を伴わない短期の訪問であれば、事前のビザ申請なしで最長90日まで滞在できます。ただし90日は上限で、実際に許可される日数は入国審査での判断によります。入国後は、有人カウンターなら旅券の記載、自動化ゲートなら発行されたレシートで満了日をご確認ください。
90日を過ぎそうなときは、現地で延長できますか?
ビザなしで得た社会訪問パスは短期の訪問のための許可なので、住み続けるための延長は想定されていません。入国管理局の説明でも「特別な考慮」による例外とされ、例に挙がっているのは病気・事故・母国での戦争です。90日を超えて滞在する予定があるなら、渡航前の段階で目的に合ったパスを取る前提で計画してください。
一度出国して戻れば、また90日滞在できますか?
再入国のたびに入国審査を受け、あらためて滞在の許可を受けることになります。前回の残り日数が持ち越されるわけでも、90日が自動的に加算されるわけでもありません。短期の出入国を繰り返すと記録が残り、許可される日数が短くなったり、入国を断られたりする可能性があります。ご家族の長期滞在をこの方法で支えるのはおすすめできません。
ビザなしの滞在で、お子様をインターナショナルスクールに通わせられますか?
正規の生徒として在籍して通うには学生パスが必要で、ビザなしの滞在のままでは通えません。学校見学やオープンデーへの参加、入学試験の受験は短期の訪問の範囲で行えます。数週間の体験入学やサマープログラムは受け入れの形が学校によって異なるため、申し込む前に学校側へご確認ください。
入国のときにMDACの登録は必要ですか?
短期の訪問で入国する場合は、渡航前にMDAC(デジタルアライバルカード)の登録が必要です。入国予定日の3日前から、公式ポータルで無料で登録できます。有料の代行サイトが検索結果に混ざることがあるので、公式かどうかをご確認ください。なお、有効な長期滞在パスをお持ちの方は、原則として登録の対象外とされています。
うっかり滞在期限を過ぎてしまったらどうなりますか?
1日でも超えれば不法滞在にあたります。マレーシアの入管法第15条(4)の違反として、RM10,000以下の罰金または5年以下の懲役、もしくはその両方が示されており、過料としてRM3,000という金額も公表されています。金額以上に、違反の記録が次の入国やパスの申請に影響しうる点が重要です。該当してしまったときは、在籍校のビザ担当や留学エージェントを通して対応を進めてください。