結論から言うと、親子留学は公的に定義された言葉ではありません。文部科学省の海外子女教育のQ&Aにも、日本学生支援機構の留学状況調査にも、この語の定義は見当たりません。だからこそ、言葉の意味を追いかけるより先に、形を実際に決めている3つの条件を押さえたほうが早く進みます。①親がどのビザで滞在するか ②子どもがどの種類の学校に通うか ③どれくらいの期間いるか——この3つが決まると、検討すべき種類・期間・費用の選択肢をかなり絞り込めます。逆にここが曖昧なまま学校名や費用の相場から調べ始めると、「親のビザでは実現できない計画」を立ててしまいがちです。この記事では、マレーシアを中心に、政府と学校の公式情報をもとに全体像を整理します。ビザ・税制・学費はいずれも改定されるため、実際に計画を固める段階では必ず各機関と志望校の最新の公式情報でご確認ください。
親子留学とは何か(母子留学・教育移住との違い)
親子留学とは、保護者が子どもに付き添って海外に滞在し、子どもが現地の学校に通う形の留学を指す言葉です。ただしこれは慣用的な呼び方で、公的に定義された用語ではありません。文部科学省の海外子女教育に関するQ&Aで定義されているのは「在外教育施設」「日本人学校」「海外子女」「帰国子女」といった語で、「親子留学」という区分は見当たりません。日本学生支援機構が公表する留学状況調査も、対象は日本国内の高等教育機関に在籍する学生等とされており、義務教育年齢のお子さんの同行は統計に含まれていません。使う人によって指す範囲が違うのは、そのためです。
実務では、次のように呼び分けられることが多い言葉です。親子留学は「保護者が付き添う」ことが条件で、期間の長短は問いません。母子留学はそのうち付き添う保護者が母親だけの形、教育移住は日本に戻る前提を置かず、進学まで見据えて生活の拠点を移す形を指します。教育移住かどうかを分けるのは滞在期間の長さではなく、「日本に戻る前提があるかどうか」だと考えると整理しやすくなります。1年の滞在でも、帰国後の進学まで含めて設計していれば教育移住に近い準備が必要になりますし、3年いても日本の学校に戻る前提なら、優先すべきは日本語の維持と帰国生入試の要件です。
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| 呼び方 | 親子留学 | 母子留学 | 教育移住 |
|---|---|---|---|
| 付き添う人 | 保護者(父・母・祖父母など) | 母親のみ | 家族の形はさまざま |
| 期間 | 数週間〜数年 | 数か月〜数年 | 年単位(期間で区切らない) |
| 日本に戻る前提 | ある場合が多い | ある場合が多い | 置かない |
| 主に決める必要があるもの | 親の滞在資格 | 親の滞在資格・収入 | 進学の出口と資産・税 |
| 公的な定義 | 見当たらない | 見当たらない | 見当たらない |
ご相談では「うちは親子留学と教育移住のどちらですか」と聞かれることがよくあります。私たちがお返ししているのは、言葉ではなく「何年後にどこにいる想定ですか」という質問です。ここが決まっていれば、呼び方が何であっても学校選びもビザも決められます。
逆に、この一点が決まらないまま学校見学だけ進めると、あとから「日本に戻るならこのカリキュラムではなかった」と組み直しになります。言葉の定義より、出口の想定を先に置いてください。
親子留学の種類は4つに分かれる
親子留学は、「子どもが何をするか」と「親が何をするか」の組み合わせで4つに整理できます。同じ「親子留学」でも、必要な手続きも費用も、この4つでまったく違います。
① 子どもが現地校・インターに通い、親は付き添う
いちばん多い形です。子どもが学校に通うための在留資格を取り、親はその付き添いとしての在留資格で滞在します。親は語学学校に通わず、生活のサポートに回ります。マレーシアではこの形が中心で、後述のとおり親は原則として就労できません。
② 親子ともに語学学校に通う
親も英語を学ぶ形です。親自身が学生になるため、親の在留資格が「付き添い」ではなく「就学」になる場合があります。滞在が短ければ観光の枠で扱われることもありますが、扱いは国と学校で分かれます。なお、マレーシアの語学センターについては、後述するサービス税の扱いがインターナショナルスクールとは異なる点にも注意が必要です。
③ 短期プログラム(サマースクール・体験入学)
1〜4週間程度のパッケージ型です。学校が受け入れの枠と宿泊をまとめて用意していることが多く、手続きの負担がいちばん軽い形です。「まず試したい」というご家庭の入口になります。マレーシアの夏の短期プログラムについてはマレーシアのサマースクールで扱っています。
④ 教育移住(進学までを現地で設計する)
日本に戻る前提を置かず、卒業資格や大学進学までを現地で組む形です。この場合は在留資格も、親の収入をどう確保するかも、長期で成立する組み方が必要になります。考え方は教育移住のメリットと注意点にまとめています。
形を決めているのは「親のビザ」
4つのどれを選べるかを実際に決めているのは、予算ではなく親の在留資格です。子どもが通える学校があっても、親が合法的に一緒に住める枠がなければ計画は成り立ちません。ここを最初に確認すると、候補の国と形が一気に絞れます。
マレーシアの場合:子は学生パス、親はGuardianの社会訪問パス
マレーシア入国管理局の案内では、学生パスの対象は3歳以上で、プリスクールから高等教育までの就学が想定されています。そして学校段階(School Level)の子どもに付き添う保護者については、Guardianとしての社会訪問パスの枠が設けられています。対象は実の親・法定後見人・養親・祖父母、および7歳未満の兄弟姉妹で、入国管理局はこのGuardian(および扶養家族)について、就労・事業活動・講演・政治活動を行うことを認めないと明記しています。パスの発行料は入国管理局の公表で学生パスがRM60、保護者・扶養家族の社会訪問パスがRM90とされています。ただし実際に支払う額はこれだけではありません。学校が申請を代行する場合の手数料が別途かかり、たとえばクアラルンプールのインター校の公式料金表には、保護者ビザの申請代行手数料として1名あたりRM1,000という金額が載っています(学生ビザ側は学校によりRM500〜2,500程度)。入国管理局の発行料と学校の代行手数料は別物なので、初期費用を見積もるときは両方を足して見てください。
実務で注意したいのが、申請ルートが学校の種別で分かれる点です。大学・私立高等教育機関・語学センターの学生パスはEMGS(Education Malaysia Global Services)を通します。一方、インターナショナルスクールなどの学校段階は扱いが異なります。EMGSを通さず、教育省の私立教育課が出す支持書をもとに、学校または保護者が入国管理局の担当部署へ直接申し込むルートです。「留学の手続きはすべてEMGS」と書かれた情報を見かけますが、インター校に当てはめると手順も費用も合わなくなります。
もう一つ、保護者が先にMM2Hや就労パスなどの長期ビザを持っている場合は、子どもは学生パスではなく扶養家族のパスに就学の許可を付けて通うのが一般的です。学校の公式サイトにもその案内があります。さらに、子ども単独では学生パスを申請できないとしている学校や、学生ビザ・保護者ビザの手続きを学校では扱わないとしている学校もあります。年齢の条件だけを見て判断せず、志望校の入学要項で申請ルートを必ず確認してください。マレーシアのビザ全体の整理はマレーシア移住のビザの種類で扱っています。
短期でも「観光ビザのまま通える」前提で組まない
ここが、親子留学でいちばん誤解の多いところです。マレーシア政府観光局の日本語公式サイトによれば、日本国籍の方は観光や商用目的での90日以内の滞在についてビザが不要とされています。そのため「短期なら手続き不要」と書かれた情報が多く出回っています。ただし、日本で「観光ビザ」と呼ばれているこの枠は、制度上は短期社会訪問パス(Short Term Social Visit Pass)という滞在許可で、目的ごとに認められる範囲が決まっています。そして入国管理局が示すその許可目的の一覧に、通常の通学は挙げられていません。この一覧で教育に関連するものは「親善目的の学生」と「大学での受験」の2つだけで、学校に通うこと自体は含まれていません。実際に、到着前に有効な学生ビザを取得しておく必要があると公式の入学案内に明記しているインターナショナルスクールもあります。
一方で、語学学校の短期コースなどの実務上の扱いは学校ごとに異なります。本記事では「短期でも通学するなら学生パスが必要になる前提で計画し、志望校と入国管理局の最新情報の両方で確認する」ことをおすすめします。ビザの要件は改定されるため、判断はその時点の公式情報で行ってください。
他の国はどうか(付き添いの枠があるかは国で違う)
「親が子どもに付き添って住める制度」は、どの国にもあるわけではありません。制度の有無そのものが、行き先を絞る最初のふるいになります。
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| 国 | 親の付き添い制度 | 親の就労 | 押さえておく点 |
|---|---|---|---|
| マレーシア | ◎ あり(Guardian/社会訪問パス) | △ 不可 | 対象は実親・後見人・養親・祖父母など |
| オーストラリア | ◎ あり(サブクラス590) | △ 不可 | 学生と共に滞在する義務がある |
| ニュージーランド | ◎ あり(Guardian Visitor Visa) | ○ 条件つき | 子どもが複数でも付き添いは同時1名 |
| イギリス | ○ あり(年齢の条件つき) | △ 不可 | 子どもの年齢で終了する仕組み |
| フィリピン | △ 専用の枠なし | △ 不可 | 子は就学の許可、親は観光の枠で滞在 |
| アメリカ | △ 専用の枠なし(観光の枠で滞在) | △ 不可 | 公立小学校での就学に制限がある |
| カナダ | △ 専用の枠なし | △ 不可 | 親が訪問者でも子は就学の許可を取れる |
表のとおり、付き添いの制度がある国でも、親の就労は認められないのが基本です。親子留学の資金計画を「現地で働いて賄う」前提で組むことは、多くの国でできません。親の仕事の選択肢についてはマレーシア移住で親の仕事はどうするで詳しく扱っています。国ごとの比較は教育移住におすすめの国を比較もあわせてご覧ください。
「うちの家族はどの形になるか」を、ビザから逆算して整理しませんか?
親の滞在資格・子どもの学年・希望の期間が決まれば、選べる形はかなり絞れます。クアラルンプール在住のスタッフが、実現できる形と学校の候補を一緒に整理します。
ビザの要件も学校ごとの扱いも改定されます。最終的な判断は、その時点の公式情報でご確認ください。
マレーシア親子留学の資料とセミナー案内も無料でお送りします。
期間の型と、期間で変わること
期間は「どれくらい行けるか」ではなく、期間によって手続きと日本側の扱いが変わるという順番で見てください。実務上は次の4つの型に分かれます。
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| 期間の型 | 主な中身 | 手続きの重さ | 日本の学校の扱い |
|---|---|---|---|
| 1〜4週間 | サマースクール・体験入学 | 軽い(学校が受け入れ枠を用意) | 在籍したまま。学校と欠席の扱いを相談 |
| 1〜3か月 | 語学学校・短期の通学 | 中(在留資格の確認が要る) | 在籍したまま。長期欠席の扱いになる |
| 半年〜1年 | インター校への編入 | 重い(学生パス・住居・保険) | 1年以上の転出かどうかで扱いが分かれる |
| 1年以上 | 進学まで見据えた滞在 | 重い(更新と出口の設計が要る) | 住民票の消除にともない除籍となる場合がある |
日本の学籍の扱いは、滞在が1年以上か未満かで分かれます。具体的な線引きと帰国後の編入については海外移住と子どもの教育、帰国後の学校選びはマレーシア留学の帰国後の学校で扱っています。在籍校ごとに運用が異なるため、実際の扱いは必ず在籍校と教育委員会にご確認ください。
期間の選び方でもう一つ効いてくるのが、学年の切れ目です。インターナショナルスクールの学年暦は日本と異なります。クアラルンプールの主要な英米系インター校は公式カレンダー上いずれも8月に新学年が始まりますが、マレーシア国内のカリキュラムを持つ私立校には1月始まりの学校もあります。さらに、Year 11やYear 13といった試験学年への編入は受け付けないと入学ポリシーに明記している学校もあります。長期を考えている場合は、試験を伴う課程が始まる前に落ち着ける時期を選ぶのが基本です。志望校のAcademic Calendarと入学ポリシーは必ず個別に確認してください。学年の対応はインターの学年(Year)と日本の学年の対応、入学のタイミングはマレーシアのインターは何歳・何年生で入れるべきかにまとめています。
費用の全体像は4つの箱で見る
親子留学の費用は、①学費 ②住居費 ③生活費 ④渡航と手続きの費用の4つに分かれます。総額の振れ幅をいちばん大きく決めるのは学費で、次が住居費です。生活費は暮らし方で調整できる部分が大きく、渡航と手続きの費用は回数で効いてきます。
学費:同じ「インター校」でも3倍以上の開きがある
クアラルンプールの主要インターナショナルスクールが公式に公開している1年あたりの授業料には、学校と学年によって大きな差があります。以下は各校の公式料金表に掲載されている年間授業料の目安です。
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| 学校(公式料金表より) | 1年あたりの授業料の範囲 | 授業料のほかに載っている費用 |
|---|---|---|
| Mont'Kiara International School(2025/26年度) | 年 RM35,110〜125,520 ※公式は半期額表示・2学期分を年額換算 | 入学金。ビザ申請代行は学生RM500・保護者RM1,000(年あたり)。サービス税は別途 |
| Garden International School(2026/27年度) | 年 RM52,440〜126,870 ※英語補習(EAL)付きは別料金で最高RM140,670 | 申請料・登録料。ビザ代行費の記載はなし |
| Epsom College in Malaysia(2026/27年度・通学生) | 年 RM52,920〜116,610 | 学生ビザ新規RM2,500・保護者/扶養ビザRM1,000。サービス税は別途 |
| Sri KL International School 中等部(2026年〜) | 年 RM33,200〜43,500 | 出願料・登録料・返還されるデポジット |
※各校の公式料金表に掲載されている1年あたりの授業料の範囲です。学年・入学年度・コース・支払い方法によって金額は変わり、料金表は毎年改定されます。サービス税の適用開始時期の案内も学校によって異なります。実際の金額は必ず各校の最新の公式料金表でご確認ください。為替はRM1≒38.7円で換算しています。
ここで見落とされやすいのがサービス税(SST)です。マレーシアでは2025年7月1日から、私立教育サービスの対象料金が1人の生徒・1学年度あたりRM60,000を超えると、超えた分だけでなく対象料金の全額に6%のサービス税がかかります。マレーシアのサービス税の一般的な税率は8%ですが、教育サービスは官報で6%と定められており、ここは別扱いです。免除はマレーシア国民であることとKad OKU(障害者手帳)を持っていることの両方を満たす場合の要件のため、日本国籍のお子さんは免除の対象になりません。課税対象は授業料・入学金・課外活動費・施設費など教育に関わる料金で、教科書・制服・スクールバス・寮費・食費・PTA費・学生パスやビザの費用は対象外とされています。
注意したいのは、しきい値を判定するのは授業料だけの金額ではなく、入学金や施設費なども含めた対象料金の合計だという点です。関税局のガイドでも、登録料と月謝の合計で判定した例が示されています。上の表で言えば、1学年度あたりの対象料金の合計がRM60,000に届かない学校では課税されず、超える学校では6%が上乗せされます。学校選びの段階で数十万円単位の差になるため、見積もりを取るときは「税込かどうか」を必ず確認してください。なお語学センターと高等教育機関は別の区分で、RM60,000のしきい値は適用されず、非国民への提供であること自体が課税の要件です。親子で語学学校に通う形を考えている場合は、金額にかかわらず課税側になる前提で見てください。
住居費・生活費・手続きの費用
住居費はエリアと物件の築年数で大きく変わり、日本人に人気のエリアはその分高くなります。生活費は暮らし方で調整できる幅がいちばん大きい項目で、ローカルの食事や公共交通を使えば日本より安く、日本食や輸入品を中心にすると日本と同等かそれ以上になります。月々の内訳はマレーシアの教育費は月いくらか、母子で滞在する場合の見積例はマレーシア母子留学の費用で具体的に扱っています。
手続きの費用は金額こそ小さいものの、見落とすと初年度の予算が合わなくなる部分です。前述のとおり、入国管理局の発行料に加えて学校の申請代行手数料が親子それぞれに発生し、しかも代行費を毎年かかる費用として料金表に載せている学校もあります。加えて入国管理局は、Guardianのパスの必要書類として有効期間が18か月以上残っているパスポート、マレーシアで有効な12か月以上の医療保険、直近3か月分の銀行明細などによる資力の証明を挙げています。パスポートの残存期間が足りずに出直しになるご家庭は実際にあります。保険の加入先と、証明に使う口座は渡航前に決めておいてください。
費用のご相談でいちばん多い行き違いが、「年間授業料=1年目に払う額」だと思って予算を組んでしまうケースです。実際には入学金や登録料、返還されるデポジット、ビザ関連の費用が初年度にまとめてかかるため、1年目だけは想定より膨らみます。
もう一つ、学費は毎年改定されます。複数年いる前提なら、今年の料金表の金額がそのまま続くとは考えないほうが安全です。私たちが見積もりをお出しするときも、初年度と2年目以降を分けて、改定の可能性を織り込んだ形でご説明しています。
よくある3つの誤解
ご相談の中で、計画を組み直すことになりやすい誤解を3つに絞りました。いずれも、無料の情報だけを見ていると気づきにくいものです。
1. 「短期なら観光ビザのまま通える」
前述のとおり、マレーシアの短期社会訪問パスの許可目的に、通常の通学は挙げられていません。到着前の学生ビザ取得を求めている学校もあります。短い期間でも「学校に通う」なら、在留資格の確認から始めてください。
2. 「親も現地で働いて費用を賄う」
付き添いの在留資格では就労できない国がほとんどです。マレーシアのGuardianの社会訪問パスも就労・事業活動が認められていません。日本の収入を維持する、貯蓄で賄う、あるいは就労できる別の在留資格を先に取る——このいずれかを渡航前に決めておく必要があります。
3. 「帰国すればまた元どおり」
帰国後に効いてくるのは、滞在した年数と、帰国してからの経過年数です。帰国生入試の出願資格は学校ごとに定められており、在外年数と帰国後の経過年数の組み合わせで線が引かれているのが一般的です。「何年いるか」を決める前に「いつ帰るか」を仮でも置くと、この条件から逆算できます。日本語の維持についてはマレーシア教育移住と帰国後の日本語で扱っています。
我が家の形の決め方(4ステップ)
「結局、何から決めればいいのか」への答えとして、実際のご相談で使っている順番を4つのステップにまとめました。この順番を逆にすると、あとから組み直しになります。
出口(何年後にどこにいるか)を仮でも決める
日本に戻る前提か、現地で進学まで進む前提か。この一点で、選ぶべき学校のカリキュラムも滞在年数も変わります。決めきれない場合は「戻る前提」で組んでおくほうが、選択肢を残せます。
親の在留資格から、実現できる形を絞る
付き添いの枠があるか、親が働けるか、子どもの年齢に条件がないか。ここで消える国と形は、先に消しておくと学校探しが無駄になりません。就労が認められない前提で、収入の確保も同時に決めます。
期間を決めて、日本側の扱いを確認する
1年以上か未満かで、日本の学籍の扱いが変わります。在籍校と教育委員会に、転出の扱いと復学の手順を先に確認してください。帰国生入試を使う可能性があるなら、必要な在外年数もこの段階で調べます。
学校を選び、初年度の総額で見積もる
年間授業料だけでなく、入学金・登録料・デポジット・ビザ関連費・サービス税まで含めた初年度の総額で比較します。学費は毎年改定されるため、卒業までの年数分を無理なく払えるかで判断してください。
よくある質問
親子留学とは何ですか?母子留学や教育移住とはどう違いますか?
親子留学は公的に定義された用語ではありません。文部科学省の海外子女教育に関するQ&Aで定義されているのは在外教育施設・日本人学校・海外子女・帰国子女といった語で、親子留学という区分は見当たりません。日本学生支援機構の留学状況調査も対象が日本国内の高等教育機関に在籍する学生等とされているため、義務教育年齢のお子さんの同行は統計に含まれていません。実務上は、保護者が子どもに付き添って海外に滞在し子どもが現地の学校に通う形を親子留学、付き添う保護者が母親だけの場合を母子留学、日本に戻る前提を置かず進学まで見据えて生活の拠点を移す場合を教育移住と呼び分けることが多い言葉です。期間の長短ではなく、日本に戻る前提があるかどうかで教育移住と区別すると整理しやすくなります。
短期の親子留学なら観光ビザのままで学校に通えますか?
通えるという前提で計画を組まないでください。マレーシア政府観光局の日本語公式サイトでは、日本国籍の方は観光や商用目的での90日以内の滞在についてビザが不要とされていますが、マレーシア入国管理局が示す短期社会訪問パスの許可目的の一覧に、通常の通学は挙げられていません。実際にインターナショナルスクールの公式サイトでも、到着前に学生ビザを取得しておく必要があると明記している学校があります。一方で語学学校の短期コースなどは学校ごとに運用が異なるため、期間が短い場合でも、必ず志望校とマレーシア入国管理局の最新情報の両方で確認してください。
親子留学中、付き添いの親は現地で働けますか?
マレーシアの場合、学校に通う子どもに付き添う保護者はGuardianとしての社会訪問パスで滞在しますが、マレーシア入国管理局はこのパスで就労・事業活動・講演・政治活動を行うことを認めていません。付き添いの枠がある他の国も同様で、オーストラリアのStudent Guardian visa(サブクラス590)も就労が認められていません。親が働いて生活費を賄う前提では計画が成り立たないため、収入をどう確保するかは渡航前に決めておく必要があります。現地で働きたい場合は、就労パスなど別の在留資格を先に検討することになります。
親子留学は何歳から始められますか?
マレーシア入国管理局の学生パスの案内では、対象を3歳以上とし、プリスクールから高等教育までの就学を想定しています。ただし実際のルートは子どもの年齢だけでは決まりません。保護者がMM2Hや就労パスなどの長期ビザを持っている場合、子どもは学生パスではなく扶養家族のパスに就学の許可を付けて通うのが一般的で、学校の公式サイトにもその案内があります。さらに、子ども単独では学生パスを申請できないとしている学校や、学生ビザ・保護者ビザの手続きを学校では扱わないとしている学校もあります。年齢の下限だけを見て判断せず、志望校の入学要項で申請ルートを確認してください。
親子留学の費用は何で決まりますか?
費用は学費・住居費・生活費・渡航と手続きの4つに分かれ、総額の振れ幅をいちばん大きく決めるのは学費です。クアラルンプールの主要インターナショナルスクールが公式に公開している1年あたりの授業料は、学校と学年によっておよそRM33,000台からRM12万台まで開きがあり、英語補習が必要な場合はさらに上がります。加えてマレーシアでは2025年7月1日から、私立教育サービスの対象料金が1人の生徒・1学年度あたりRM60,000を超えると、超過分だけでなく対象料金の全額に6%のサービス税がかかります。免除はマレーシア国民であることとKad OKU(障害者手帳)を持っていることの両方を満たす場合の要件のため、日本国籍のお子さんは免除の対象になりません。入学金や登録料、返還されるデポジットが別に必要な学校も多いため、初年度は授業料だけでは収まらない前提で見てください。
この記事の主な参照元
- マレーシア入国管理局(Jabatan Imigresen Malaysia)「Student Pass」(対象年齢と学校段階の申請ルート・Guardians (School Level) の対象範囲と就労等の禁止・パス発行料)
- マレーシア入国管理局「Short Term Social Visit Pass」(許可される滞在目的の一覧)
- マレーシア政府観光局(日本語公式)「入出国について」(日本国籍者の観光目的90日以内のビザ免除)
- EMGS(Education Malaysia Global Services)公式サイト(高等教育・語学センターの申請区分と料金表)
- Mont'Kiara International School/Garden International School/Epsom College in Malaysia/Sri KL International School 各校公式の料金表(年間授業料・入学金・登録料・デポジット・ビザ申請代行手数料)
- Epsom College in Malaysia 公式(到着前の学生ビザ取得に関する記載)
- マレーシア関税局(mysst.customs.gov.my)「Guide on Private Education Services」/官報 P.U.(A) 172/2025(Group M 教育の課税区分としきい値)・P.U.(A) 173/2025(教育サービスの税率6%)・P.U.(A) 174/2025(免除の要件)/Service Tax Policy No.4/2025(課税対象外の費目)
- MM2H 公式サイト(mm2h.gov.my)(参加区分と扶養家族の取扱い)
- オーストラリア内務省「Student Guardian visa (subclass 590)」/ニュージーランド移民局「Guardian Visitor Visa」/GOV.UK「Parent of a Child at School visa」/フィリピン入国管理局(Bureau of Immigration)FAQ/米国 8 U.S.C. §1101・§1184(F-1・F-2の範囲)/カナダ移民・難民・市民権省(未成年の就学許可に関する指針)
- 文部科学省「就学事務Q&A」(国外転出中の就学義務と学籍の取扱い)
- 日本学生支援機構(JASSO)「日本人学生留学状況調査」(調査対象の範囲)
本記事の情報は2026年8月時点で確認したものです。ビザ・制度・学費・入学要件はいずれも変更されることがあるため、実際のご判断の際は必ず各機関・各校の公式情報で最新の内容をご確認ください。