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フィリピン留学とマレーシア留学の比較|費用・授業・治安の違い【2026年版】

「安いのはどっち?」から始めると、たいてい判断を間違えます。理由は単純で、2か国の語学学校は"学費に含まれるもの"がそもそも違うからです。授業・費用・治安・ビザの4点を、公的な情報の出どころまで添えて整理します。

結論から言うと、選び分けの軸は「安さ」ではなく①いまの英語レベル ②どれだけの期間いたいかの2つです。話す量を短期で最大化したいならマンツーマン中心の学校が多いフィリピン、多国籍な環境で生活ごと英語に慣れたい・3か月を超えて滞在したいならマレーシアが候補になります。以下、両国の公的情報と学校の公開情報をもとに、違いが出るポイントだけを順番に見ていきます。

結論:2か国の違いは「授業形態」と「滞在できる長さ」に出る

比較記事を何本読んでも結論が揃わないのは、多くの記事が「月いくら」だけを並べているからです。実際に確認すべき違いは4つに絞られます。①授業がマンツーマン中心かグループ中心か ②学費に滞在と食事が含まれるか ③どれだけの期間滞在できるか ④必要な許可が何か。この4つが決まれば、費用は後から自動的に計算できます。

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比較項目フィリピン留学マレーシア留学
授業形態マンツーマンを組み込む学校が多いグループ授業が中心の学校が多い
学費に含まれるもの寮・食事を含む一体型が一般的授業料のみ(滞在は自分で手配)が一般的
短期留学に必要な許可特別留学許可(SSP)が必要3か月以内は査証免除(日本国籍・観光と知人訪問が対象。語学コース受講の扱いは学校と入国管理局に確認)
ビザなしで居られる長さ入国時30日/延長で最長59日3か月以内
語学学校の受講年齢(外国人)年齢の下限なし(18歳未満もSSPの対象と明記)18〜45歳(教育省ガイドライン)
語学学校での家族帯同18歳未満もSSPの対象。親子で受講する場合は各自にSSP語学センター区分は扶養家族の帯同不可(入管が明記)
外務省の危険情報全地域にレベル1以上主要都市に危険レベルの発出なし
英語能力指標(EF EPI 2025)28位/569点24位/581点
TOEFL スピーキング平均(2024)23点22点
英語の位置づけフィリピノ語とともに公用語国語はマレー語。英語は商業・産業で広く使われる
◎ 数値・制度上で有利△ 注意が必要/不利
▲ フィリピン留学とマレーシア留学の比較(2026年8月時点)。授業形態・費用構造は学校ごとに差があるため「一般的な傾向」として記載しています。危険情報・英語指標の出典は記事末の出典のとおり(ルシュエット作成)
現地からのリアル

私たちはマレーシア専門のエージェントなので、フィリピンについては公的情報と学校が公開している情報の範囲で整理しています。そのうえで正直にお伝えすると、「英語をゼロから、まず話せるようにしたい」という段階の方には、マンツーマンの多い学校を選べるフィリピンのほうが合うことがあります。私たちに相談された方でも、目的を伺ううちにマレーシアが最適とは限らないケースはあります。

逆にマレーシアが向くのは、授業以外の時間も英語で回る環境に身を置きたい方です。クアラルンプールは多民族の街で、店員さんとのやり取り、Grab(配車アプリ)の運転手との会話、学校外の生活そのものが英語の練習になります。ここは"授業のコマ数"には表れない差です。

授業形態の違い(マンツーマン中心か、グループ中心か)

両国でもっとも構造的に違うのがここです。フィリピンの語学学校は、1日のコマの中にマンツーマン(1対1)授業を複数入れる構成を公開している学校が多いのが特徴です。学校によっては「1日4コマのマンツーマンを最低保証」といった形で、学校側がカリキュラムにコマ数を掲げているケースもあります。1対1なので、発言量が物理的に確保され、間違いをその場で直してもらえます。

一方マレーシアの語学学校は、レベル別のグループ授業(1クラス15〜20名程度)を週20〜28レッスン受ける集中コースが公開されている学校が多い形です。多国籍のクラスメイトと議論する時間が長く、「聞き取って、割り込んで、言い返す」という実戦的な力がつきやすい反面、発言量は自分から取りにいかないと確保できません。

言い換えると、フィリピンは「話す回数を買う」留学、マレーシアは「英語で暮らす時間を買う」留学に近い、ということです。どちらが優れているかではなく、いまの自分に足りていないのがどちらかで選ぶのが現実的です。

なおここで説明した授業形態は、いずれも主に大人向けのコースを前提にしています。お子さんも一緒に受講する親子留学を考えている場合、両国の差は授業形態よりも受け入れの枠組みに出ます。フィリピンは18歳未満のお子さんも留学許可(SSP)の対象として制度に明記されている一方、マレーシアの語学センターは教育省のガイドラインで外国人の受講年齢が18〜45歳と定められています。この違いは学校選び以前に効いてくるので、親子で語学留学するときの落とし穴で詳しく説明します。

※コマ数・クラス人数・マンツーマンの有無はいずれも学校ごとに異なり、同じ国の中でも幅があります。検討する段階で各校の公式サイトの最新のコース概要をご確認ください。マレーシア側の学校の探し方はマレーシアの語学学校の選び方で詳しく解説しています。

費用は単純比較できない。含まれるものが違うから

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。ネット上の比較記事を並べると「フィリピンのほうが安い」と書く記事と「マレーシアのほうが安い」と書く記事が両方存在し、結論が真逆になっています。どちらかが嘘をついているわけではなく、比べている中身が違うのです。

フィリピンの語学学校は、授業料に寮・1日3食・Wi-Fi・清掃や洗濯といった生活サービスまで含める「一体型」の料金体系を公開している学校が一般的です。数字が大きく見えますが、その中に住居費と食費が入っています。対してマレーシアの語学学校は、授業料は授業料のみで、滞在先(コンドミニアムやシェアハウス)は自分で手配する形が一般的です。学費だけを並べれば当然マレーシアが安く見えます。

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費用の項目フィリピン(一体型が一般的)マレーシア(分離型が一般的)
授業料含む含む
滞在費(寮・住居)含むことが多い別途(自分で手配)
食事含むことが多い(1日3食など)別途(自炊・外食)
入学金・教材費別途別途
現地で払う手数料SSP・ビザ延長費など現金で必要学生パスを取る場合はEMGSの費用等
比較するときの注意「授業料」の欄だけを2か国で並べても意味がない。滞在費と食費を足して同じ条件に揃えてから比べる

親子で行く場合は、この構造の差がさらに広がります。フィリピンの一体型なら人数分の学費に滞在と食事が乗る形で見通しが立ちやすい一方、マレーシアは親子2人分の住居・食費・移動費を自分で組み立てることになるため、同じ「学費」の見積もりを見ていても実際に必要な総額は大きく変わります。クアラルンプールの家賃相場もあわせて確認しておくと、総額の感覚がつかみやすくなります。

※上表は各国で公開されている料金体系の一般的な形を整理したものです。具体的な金額は学校・部屋タイプ・コマ数・時期で大きく変わるため、この記事では金額の断定を避けています。見積もりを取る際は「この金額に滞在と食事が含まれるか」を最初に確認してください。マレーシアの費用感はマレーシアの教育費は月いくらかもあわせてご覧ください。

現地からのリアル

マレーシアの見積もりで想定外になりやすいのは、住まいの初期費用です。コンドミニアムを借りる場合はデポジット(保証金)が家賃の数か月分必要になるのが一般的で、短期の滞在だとサービスアパートメントや学生向け住居のほうが結果的に安くなることもあります。ここは学校の場所とエリアで答えが変わるので、私たちも一律ではご案内していません。

もう一つ、費用を比べるときに抜けやすいのが日本から現地への渡航費と、現地に着いてから現金で払う手数料です。とくにフィリピンは現地で現金払いする項目がある学校が多いと公開されており、「日本で払い終わったつもりだった」という行き違いが起きやすい部分です。

見落とされがち:マレーシアの教育サービス税(2025年7月より導入済)

マレーシアでは2025年7月1日から、サービス税(SST:Sales and Service Tax=マレーシアの売上・サービス税)の課税範囲が教育サービスに広がりました。官報 P.U.(A) 172/2025 に施行日が定められ、マレーシア王立関税局(RMCD)のFAQでも税率6%・施行日2025年7月1日と示されています。対象には1996年教育法に基づき登録された語学センター(Language Centre)が非マレーシア国籍の人に提供する教育サービスが含まれます。

ここで押さえておきたいのが金額のしきい値がない点です。私立学校については「1人あたり年間の学費がRM60,000を超える場合に登録義務」というしきい値が設けられていますが、語学センターはその規定から明文で除外され、しきい値なしの区分に置かれています。つまり学費が高いか安いかに関係なく、非マレーシア国籍の受講料には6%が乗る立て付けです。

一方で、課税されない費目も公式に列挙されています。RMCDのサービス税ポリシー(STP 4/2025)では、高等教育機関・語学センターについて書籍代・宿泊費・交通費・食事代・授業料と別建ての返金されるデポジット・授業料と別建ての研修旅行費・学生パスやビザの費用が非課税の費目として挙げられています。学費に6%、住居や食事にはかからない、という整理です。

なおこの税の免除を受けられる対象者は限られており、「マレーシア国民であること」と「Kad OKU(障害者手帳)を保持していること」の両方を満たす場合に限られます(マレーシア王立関税局のMySST公式サイト)。日本国籍のお子さんはこの免除の対象外となるため、学費には課税される前提で見積もるのが安全です。

つまり日本から語学留学する場合、授業料に6%のサービス税が乗る可能性があるということです。2025年6月以前に書かれた古い比較記事の金額は、この税を織り込んでいません。金額を見積もる段階で「表示価格は税込みか」を学校に確認してください。

※事業者側の登録受付が始まったのは2025年8月1日で、課税の施行日(7月1日)とは別の日付です。課税の対象・免税の範囲・しきい値は制度の細部が更新されることがあり、その後2025年10月には外国外交官の子女や、機関・企業・財団が全額負担する学費についての免税が追加されました。最新の内容はRMCDのMySST公式サイト、または学校の請求担当に直接ご確認ください。マレーシアの税制全体はマレーシア移住と税金でも整理しています。

治安:外務省の危険情報は"出方"が違う

治安を「なんとなく安全そう」で語らないために、日本の外務省が出している危険情報を見るのがいちばん早いです。ここに、2か国のはっきりした違いが出ます。

フィリピンは、ミンダナオ地方の一部にレベル3(渡航は止めてください)、サランガニ州東部やパラワン州南部などにレベル2(不要不急の渡航は止めてください)が出ており、マニラ首都圏を含むそれ以外の全地域にもレベル1(十分注意してください)が出ています。留学先として名前が挙がるセブ島・バギオ・クラークはいずれもレベル1の範囲です。

対してマレーシアは、サバ州東側の島嶼部・沿岸部にレベル2およびレベル1が出ている一方、クアラルンプールなどそれ以外の地域には危険レベルが発出されていません。留学先として一般的なクアラルンプール周辺に危険レベルが出ていない、という点は制度上の事実として挙げられます。ただしこれは「日本の外務省が渡航に関する注意を発出していない」という意味であって、現地で防犯対策が不要という意味ではありません

ただし、犯罪の種類で見ると評価は一様ではない

ここで終わらせると片手落ちです。外務省の安全対策基礎データには犯罪の傾向も書かれていて、そこを読むと単純に「マレーシアのほうが安全」とは言えません。ただし2国のデータは比べ方が違うため、表にして横並びにはできません。それぞれの国について書かれている内容を、そのまま分けて示します。

外務省の安全対策基礎データに書かれている内容(いずれも2024年)
フィリピンフィリピン国家警察(PNP)発表の全国犯罪統計で、2024年の犯罪発生件数の総計は約20万件。日本と比較して強盗は約3倍、殺人は約4倍、不同意性交は約2倍(比較の基準は明記されていない=件数どうしの比較と読める)
マレーシア2024年の犯罪届出件数は58,255件(前年比+5,811件)。うち殺人236件=人口10万人あたりの発生率は日本とほぼ同じ、強盗4,274件=人口10万人あたりで日本の約12倍、強制性交等2,074件=同約2倍

※出典=外務省 安全対策基礎データ(フィリピン/マレーシア)。フィリピン側は比較の基準が明記されておらず、マレーシア側は「人口10万人あたり」と明記されています。基準が違うため、両国の倍率をそのまま並べて優劣を判断することはできません。数値はいずれも2024年のものです。

それでも読み取れることは、「マレーシアは命に関わる重大犯罪の発生率は日本と近い水準にある一方、強盗のような財産を狙う犯罪には日本よりずっと注意が必要」ということです。外務省の資料でも、クアラルンプール中心部のブキビンタン周辺やKLセントラル駅〜空港間でのスリ・置き引きの相談が多いと紹介されています。どちらの国を選んでも、夜間の一人歩きを避ける・スマートフォンを手に持って歩かない・配車アプリを使うといった基本は同じです。マレーシア側の詳細はマレーシアの治安で解説しています。

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英語環境:指標によって順位が入れ替わる

「フィリピンは訛りがある」「マレーシアはマレー語混じり」といった話は尽きませんが、感覚論をやめて公表されている指標を2つ並べると、意外な結果になります。

1つ目はEF EPI(EF English Proficiency Index=語学教育企業EFが公表している国・地域別の英語能力指標)です。2025年版では、マレーシアが123の国・地域のうち24位でスコア581点、フィリピンが28位で569点。世界平均は488点で、両国とも平均を大きく上回っています。この指標ではマレーシアが上位です。

2つ目はETS(TOEFLの実施団体)が公表しているTOEFL iBTの国別平均点です。2024年の受験者データでは、合計点はマレーシアが91点、フィリピンが86点でマレーシアが上回るものの、スピーキングだけはフィリピンが23点、マレーシアが22点と逆転します(参考:日本は合計72点、スピーキング17点)。

結論として、「読む・書く・全体的な英語力ではマレーシアが上位、話す力ではフィリピンが上位」という構図が数値上は見えます。訛りを心配して国を選ぶより、自分が伸ばしたいスキルで選ぶほうが理にかなっています。なおフィリピンでは1987年憲法により、フィリピノ語とともに英語が公用語として位置づけられています。マレーシアは政府ポータルの記載どおり国語がマレー語で、英語は商業・産業の言語として広く使われる、という立て付けです。マレーシアの英語事情もあわせてご覧ください。

※EF EPIは受験者が自主的に受けたオンラインテストの結果を集計したもの、TOEFLの国別平均はTOEFLを受験した層の平均で、どちらも国民全体の英語力を表すものではありません。順位の差をそのまま「街で通じる英語の差」と読み替えないよう注意してください。

ビザと滞在許可(SSP/学生パス)

比較記事でいちばん抜け落ちているのが、この手続きの部分です。「短期だからビザは要らない」は、フィリピンについては正確ではありません。

フィリピン:短期の語学留学でもSSPが必要

外務省の安全対策基礎データには、フィリピンについて「短期語学留学等を目的とする滞在では、入国管理局が発行する『特別留学許可(SSP:Special Study Permit)』が必要」と明記されています。SSPはビザではなく、観光ビザに付随して発給される「許可」で、フィリピン入国管理局(Bureau of Immigration)に認定された教育機関が発行する受入証明書(Certificate of Acceptance)を添えて申請します。現在はオンライン申請にも対応しています。

対象は入国管理局の規則で定められており、「18歳未満」または「学位を取らない課程に在籍する人」が軸です。ここは誤解されやすいのですが、公式の文言は「18歳未満、および/または非学位課程を受講する外国人」で、年齢の条件は18歳未満の項目にだけかかっています。つまり大人が語学コースのような非学位課程を受けるケースも規定の対象に含まれる立て付けです。ほかに「1年未満の短期コース」「学位取得のためのインターン・研修生」「航空・飛行学校の在籍者」も列挙されています。

有効期間は、コースの期間と同じで最長6か月と規則に定められています。6か月を超えるコースの場合は、残りの期間に合わせて延長(extension)する手続きが規定されています。ただし同じ規則には「手数料は各申請の提出時に全額を支払う」と定められており、延長についても発給と同じ料金表が適用される形で掲載されているため、延長のたびに手数料が改めて発生すると読めます。長期のコースを取る場合は、この分も費用に入れておいてください(なお初等・中等課程や、18歳未満で学士課程に在籍する場合は1年ごとの発給とされています)。

入国管理局が公開している公式手数料は、申請料2,000ペソ・実施料1,000ペソ・サービス料200ペソ・証明書発行料500ペソ・法務調査料40ペソ・エクスプレス費用(証明書・申請・I-Card処理の各500ペソ)を合わせて合計5,240ペソ、加えて外国人登録証(ACR I-Card)が50米ドルと掲載されています。ただしこの料金表には入国管理局自身が「2014年3月6日時点のもので予告なく変更される場合がある」と注記を付けています。掲載額が長く据え置かれているという意味でもありますが、申請前には必ず最新額を確認してください。また、これは政府に払う手数料であって、実際に現地で支払う金額は、学校が代行する場合の手数料・保証金・ビザ延長費などを含めて変わります。見積もりの段階で「政府手数料以外に現地で現金で払うものは何か」を学校に確認しておくと、行き違いを防げます。

滞在できる長さは、観光目的なら入国時に30日、入国管理局で29日間まで延長して合計59日まで、さらにACR I-Cardを取得すれば入国日から起算して最長36か月という段階になっています。「フィリピンは短期向き」と言われる背景の一つは、この滞在延長の手続きが段階的に必要になる点です。

マレーシア:3か月以内は査証免除、超えるなら学生パス

日本国籍の場合、日本とマレーシアの査証免除取決めにより、観光・知人訪問の目的で報酬を得る活動に従事しなければ、滞在3か月以内は査証が不要です(外務省)。在東京マレーシア大使館の入国要件の表でも、日本は査証なしで3か月と記載されています。加えて2023年12月1日からMDAC(Malaysia Digital Arrival Card=マレーシアのデジタル入国カード)の登録が義務になっており、出発の3日前からオンラインで登録できます。旅券の残存有効期間は6か月以上が必要です。

ただし外務省は「短期の滞在であっても宗教活動、調査研究活動、テレビ・映画撮影等の目的の場合は査証が必要」とも記しています。免除はあくまで観光・知人訪問を目的とした滞在に対するものなので、短期の語学コースをこの免除の範囲で受講できるかは、コースの期間や内容によって扱いが変わり得ます。この点は学校と入国管理局に確認するのが確実です。

3か月を超えて学ぶ場合に検討するのが学生パス(Student Pass)です。マレーシア入国管理局のページによると、学生パスの制度全体としては3歳以上の非市民が対象(就学前教育から高等教育まで)で、認可先には教育省(MOE)や人的資源省(MOHR)に登録・認可された語学センターも含まれます。申請の窓口になるのがEMGS(Education Malaysia Global Services=高等教育省傘下の留学生受け入れ窓口機関)で、EMGSが学術面の審査を行い就学許可を発給し、入国管理局本部が電子ビザ承認レター(eVAL)を承認する流れです。

ただしこの「3歳以上」は学生パス制度全体の下限で、語学センターに適用される年齢ではありません。マレーシア教育省が公表している語学センター(Pusat Bahasa)の設置・登録・運営ガイドラインには、外国人の生徒について「年齢の範囲は18歳から45歳」と定められ、あわせて入国管理局の学生パスを持つことが必要と記されています(マレーシア国民の下限は7歳)。つまり18歳未満のお子さんが語学センターの区分で学生パスを取って通う、という形は制度上想定されていません。また同じ教育省の分類では、語学センターは「1段階あたり3か月または20クレジット時間を超えない語学コースを提供する施設」と定義されています。

ここが要注意です。マレーシア入国管理局は「申請の提出時点で、申請者はマレーシア国外にいなければならない」と明記しています。つまり「まず観光で入国して、現地で気に入ったら学生パスに切り替える」という進め方は、公式の案内とは前提が異なります。3か月を超えて学ぶ可能性があるなら、渡航前に学校とEMGSへ手順を確認しておくのが安全です。

※「語学コースは3か月未満なら観光パスでよい/3か月以上なら学生パス」という説明はエージェントや学校のブログで見かけますが、私たちが確認した範囲では入国管理局・EMGSの公式ページにその区分の明記は見つけられませんでした。公式に確認できるのは「査証免除は3か月以内・観光と知人訪問が対象」「学生パスの申請時は国外にいること」です。学生パスの有効期間やEMGSの審査にかかる期間も公式には明記が見つからないため、期間や日数は必ず学校と各機関の最新の案内で確認してください。なお「3か月」と「90日」は月によって1〜3日ずれるため、公式表記どおり「3か月」で考えるのが安全です。入国手続きの詳細はマレーシアの入国手続きMDACの登録方法で解説しています。

親子で語学留学するときの落とし穴

結論を先に書きます。マレーシアの語学センター区分で学生パスを取った人は、扶養家族を帯同できないと入国管理局が明記しています。3か月を超える長期の親子留学・母子留学を考えるなら、語学学校ではなくインターナショナルスクールなど学校への就学を軸に組み立てるのが、制度に沿ったルートです。ここは比較記事でほとんど触れられていない一方、知らないまま計画すると渡航そのものが成り立たなくなる部分なので、必ず先に確認してください。

理由は2つあります。ひとつは年齢です。前章のとおり、教育省の語学センターのガイドラインでは外国人の生徒は18歳から45歳とされているため、18歳未満のお子さん自身が語学センターの学生パスで通う形は想定されていません。

もうひとつが帯同です。マレーシア入国管理局の学生パスのページには、「語学センター、研修/技能センター、認定センターのカテゴリーで学生パスを取得した人は、扶養家族(dependents)を帯同することを認められない」と明記されています。さらに扶養家族の帯同そのものが修士・博士課程の学生パス保持者に限られるとされ、保護者の帯同(マレー語版では Pengiring)についての規定は学校レベル(peringkat sekolah)で学ぶ人の家族が対象と書かれています。帯同者に発給されるのは「学生パス保持者の扶養家族・保護者のための長期社会訪問パス」という名称のパスで、手数料はRM90と掲載されています。

つまり「マレーシアの語学学校に子どもを入れて、親が保護者として長期に付き添う」という形も、「親が語学学校の学生パスを取って子どもを帯同する」という形も、公式の枠組みの上では成り立ちません。3か月以内であれば査証免除の範囲で親子ともに滞在を検討できますが、それを超える長期の親子滞在を考えるなら、語学学校ではなくインターナショナルスクールなど学校(初等・中等課程)への就学を軸に設計するのが現実的です。こちらのルートであれば保護者の帯同も検討の対象になります。「英語力ゼロからでも入れる学校はあるのか」「その場合の予算はどうなるか」といった具体的な組み立ては家庭ごとに変わるので、私たちはまずご家族の状況を伺ってから、この形に切り替えられるかを一緒に確認しています母子留学の進め方親子留学ガイドもあわせてご覧ください。

この点、フィリピンは対照的です。SSPの対象は入国管理局の規則で「18歳未満、および/または非学位課程に在籍する外国人」と定められており、18歳未満のお子さん自身が対象に明記されています。申請時の受入証明書についても、18歳未満の申請者向けに初等・中等課程や技術・職業課程の就学期間を記載する、という様式になっています。つまり子どもが語学学校に通うことを前提とした枠組みが、フィリピンには制度として用意されているということです。

親自身も授業を受ける場合については、規則が挙げる対象のうち「非学位課程に在籍する人」「1年未満の短期コースに在籍する人」には年齢の条件が付いていません。したがって親が語学コースを受講する場合もSSPの対象に含まれると読めます(=親子それぞれに手数料が発生する前提で見積もるのが安全です)。一方で「親が授業を受けず付き添いのみで滞在する場合」の扱いを明記した公式の記載は見つけられませんでしたので、この形を考えている場合は学校と入国管理局に直接確認してください。

なお、マレーシアで3か月以内の親子滞在を考える場合にも注意点があります。査証免除はあくまで観光・知人訪問を目的とした滞在に対する制度で、外務省も宗教活動・調査研究・撮影といった目的は短期でも査証が必要と記しています。短期のコース受講がこの免除の範囲に収まるかは、コースの期間や内容によって扱いが変わり得る領域です。「3か月以内なら何をしても問題ない」と考えず、渡航前に学校と入国管理局へ実務上の確認をしておいてください。

※上記はいずれも制度の枠組みの話で、運用は年度や学校種別によって変わります。お子さんの年齢・学年・滞在期間によって使える選択肢が変わるため、具体的な設計は個別にご相談ください。

迷ったら「滞在したい期間」から逆算する

  1. 1〜4週間の短期

    どちらの国でも観光目的の滞在期間内に収まります。フィリピンはSSPの取得が必要なため、その手数料と手続きを学校に確認します。

  2. 2〜3か月

    マレーシアは査証免除の3か月以内に収まります。フィリピンは30日+29日延長で59日までなので、それを超えるならACR I-Cardの手続きが入ります。

  3. 3か月を超える

    マレーシアは学生パスの検討が必要で、申請時に国外にいる必要があります。つまりこの時点で渡航前の準備が変わるため、期間だけは早めに決めるのがおすすめです。

  4. 1年以上・家族での滞在

    学校選びより先に、ビザと家族の滞在方法の設計が主役になります。お子さんの就学が絡む場合は教育移住の枠組みで考えたほうが早いです。

目的別の選び方と、2か国留学という選択

ここまでの違いを、目的別に整理します。

フィリピンが向きやすい方

英語をゼロ〜初級から始めたい方、1〜4週間の短期で「話す回数」を最大化したい方、学費・滞在・食事をまとめて予算管理したい方。マンツーマン中心の環境は、人前で話すことに苦手意識がある方にとって心理的なハードルも低くなります。

マレーシアが向きやすい方

クラスで発言できる程度の土台がある方、3か月以上の滞在を考えている方、多民族・多国籍の環境で生活ごと英語に慣れたい方、そしてお子さんの教育を軸に将来の移住まで視野に入れている方。社会人のマレーシア語学留学マレーシア短期留学もご参照ください。

「2か国留学」=フィリピンで話す力、マレーシアで使う力

比較記事の多くが最後に触れるのがこの選択です。先にフィリピンでマンツーマン中心に発話量を確保し、次にマレーシアの多国籍なグループ環境で実戦に移すという組み方は、2か国の性格の違いをそのまま活かす形になります。ただし国をまたぐと、滞在許可・渡航費・住居の手配がそれぞれ二重に発生します。合計の手続きと費用を最初に一覧化してから決めてください。

現地からのリアル

相談を受けていて感じるのは、「どちらの国か」より前に決めるべきことが「期間」だということです。期間が決まると、必要な許可が決まり、住まいの選択肢が決まり、費用の枠がほぼ自動的に決まります。逆に期間が曖昧なまま学校のパンフレットを比べると、いつまでも結論が出ません。

もう一つ。マレーシアは「英語留学の国」というより「英語で暮らせる国」です。授業の外で英語を使う機会が生活の中に組み込まれているので、授業のコマ数だけで判断すると、この国の一番の価値を見落とします。ここは残念ながらパンフレットには載らない部分です。

この記事の情報の扱いについて

ビザ・税・治安・学費は、いずれも年単位で変わる領域です。この記事では日本の外務省、フィリピン入国管理局、マレーシア入国管理局、EMGS、マレーシア王立関税局、ETS、フィリピン最高裁の電子図書館といった公的な情報源で確認できた内容を中心に書き、公的に確認できなかったことは断定していません。具体的には、学生パスの有効期間・EMGSの審査期間・両国の月額費用の相場・フィリピンで親自身にSSPが必要かどうかは、公式の記載を見つけられなかったため断定を避けています。実際に申し込む段階では、必ず学校と各機関の最新の案内をご確認ください。

※為替の目安:本記事執筆時点で1リンギット=約38.7円、1フィリピンペソ=約2.57円(2026年8月時点)。為替は日々変動するため、金額を検討する際はその時点のレートでご確認ください。

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よくある質問

フィリピン留学とマレーシア留学、初心者はどちらが向いていますか?

話す量を最短で確保したい初心者には、マンツーマン授業を中心に組む学校が多いフィリピンが向きやすいとされています。一方マレーシアはグループ授業が中心のため、クラスの中で発言できる程度の土台があるほうが伸びやすい傾向があります。ただし授業の組み方は学校ごとに違い、マレーシアでも個別指導を用意している学校もあるため、最終的には各校の公式情報でコマ数と形態を確認することをおすすめします。

フィリピン留学とマレーシア留学、月額の費用はどちらが安いですか?

月額の総額だけを並べた比較は成立しません。フィリピンの語学学校は授業料に寮と食事を含める一体型の料金が一般的で、マレーシアの語学学校は授業料のみで滞在先を自分で手配する形が一般的です。つまり同じ「学費」という言葉が指す範囲が違うため、含まれるもの(滞在・食事・教材・現地手数料)を揃えてから比較する必要があります。

短期の語学留学でもビザや許可は必要ですか?

フィリピンは、短期の語学留学を目的とする滞在でも入国管理局が発行する特別留学許可(SSP)が必要とされています。マレーシアは日本国籍の場合、査証免除の取決めにより観光目的で3か月以内の滞在が認められており、それを超えて学ぶ場合は学生パス(Student Pass)の取得を検討することになります。学生パスは申請時にマレーシア国外にいることが条件とされているため、渡航前に学校とEMGSへ確認してください。

治安はマレーシアのほうが良いのでしょうか?

外務省の危険情報の出方は異なり、フィリピンは全地域に危険レベル1以上が出ている一方、マレーシアはクアラルンプールなど主要都市に危険レベルが出ていません。ただし犯罪の種類で見ると評価は一様ではありません。外務省の安全対策基礎データでは、マレーシアについて2024年の強盗の発生率が人口10万人あたりで日本の約12倍、フィリピンについては2024年の件数で強盗が日本の約3倍・殺人が約4倍と紹介されています。2国で統計の基準が異なるため直接は並べられませんが、どちらの国でも都市部での防犯意識は必要です。

子どもを連れた親子での語学留学はできますか?

マレーシアの語学学校(語学センター)では注意が必要です。マレーシア教育省の語学センターのガイドラインは外国人の生徒を18歳から45歳と定めており、加えて入国管理局は語学センター区分で学生パスを取得した人は扶養家族を帯同できないと明記しています。そのため語学学校を使った長期の親子留学は制度上成り立ちにくく、長期の親子滞在を考える場合はインターナショナルスクールなど学校への就学を軸に設計するのが現実的です。3か月以内の滞在であれば査証免除の範囲で検討できますが、実際の可否は必ず学校・EMGS・入国管理局にご確認ください。

英語の訛りが気になります。どちらで学ぶべきですか?

指標によって順位が入れ替わるため、訛りだけで決める必要はありません。EF EPI 2025年版では英語能力の順位はマレーシアが24位、フィリピンが28位ですが、ETSが公表したTOEFL iBTの2024年国別平均ではスピーキングのみフィリピンが23点、マレーシアが22点と逆転しています。どちらも英語が広く使われる環境で、目的に合った授業形態で選ぶほうが現実的です。

この記事で参照した公的情報

  1. 外務省「安全対策基礎データ(フィリピン共和国)」https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymeasure_013.html
  2. 外務省「安全対策基礎データ(マレーシア)」https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymeasure_017.html
  3. 外務省 海外安全ホームページ「フィリピン 危険情報」https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pchazardspecificinfo_2024T098.html
  4. 外務省 海外安全ホームページ「マレーシア 危険情報」https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pchazardspecificinfo_2026T065.html
  5. Bureau of Immigration(フィリピン入国管理局)「Special Study Permit」https://immigration.gov.ph/services/special-study-permit/
  6. Bureau of Immigration「Immigration Memorandum Circular No. SBM-2015-007」(SSPの対象・有効期間・手数料)https://immigration.gov.ph/wp-content/uploads/2023/11/MCNO.SBM2015-007.pdf
  7. Jabatan Imigresen Malaysia(マレーシア入国管理局)「Student Pass」https://www.imi.gov.my/index.php/en/main-services/pass/student-pass/
  8. Education Malaysia Global Services(EMGS)https://visa.educationmalaysia.gov.my/
  9. マレーシア教育省「Garis Panduan Penubuhan, Pendaftaran dan Pengoperasian Pusat Bahasa」(語学センターの受講年齢)https://www.moe.gov.my/garis-panduan-ips-pusat
  10. 在東京マレーシア大使館「Entry Requirement for Foreigners」https://www.kln.gov.my/web/jpn_tokyo/requirement_foreigner
  11. Royal Malaysian Customs Department「FAQ: Expansion of Service Tax Scope 2025」https://mysst.customs.gov.my/faq-expansion-of-service-tax-scope-2025/
  12. 官報 P.U.(A) 172/2025「Service Tax (Amendment) Regulations 2025」(施行日・Group M 教育)https://mysst.customs.gov.my/wp-content/uploads/2025/07/Peraturan-Peraturan-CP-Pindaan-2025.pdf
  13. Royal Malaysian Customs Department「Service Tax Policy No. 4/2025(Education)」(課税対象外の費目)https://mysst.customs.gov.my/wp-content/uploads/2025/07/STP-4-2025-Education.pdf
  14. EF「EF English Proficiency Index」https://www.ef.com/wwen/epi/
  15. ETS「TOEFL iBT Test and Score Data Summary 2024」https://www.ets.org/pdfs/toefl/toefl-ibt-test-score-data-summary-2024.pdf
  16. マレーシア政府ポータル「Official Language」https://www.malaysia.gov.my/en/government/learn-about-malaysia/official-language
  17. 1987年フィリピン共和国憲法 第14条第6〜7節(フィリピン最高裁 電子図書館)https://elibrary.judiciary.gov.ph/thebookshelf/showdocs/45/25572
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